SR 錬金術士のアトリエ

 ファンタジーの世界には、錬金術士という職業が存在する。

 これは作品によってどのような性質を持つかは異なるが、基本的には魔法やらを中心とした科学者だ。

 多くの場合、なんらかの知識を元に、なにか薬品や金属、魔法の道具などを作り出すことを生業としている。


 今回はその錬金術士の工房が出現した話だ。



























 兄が冒険者ギルドの裏口に気がついた。

 これまでは発掘ダンジョンの調査……というか攻略をしていたためにずっと忙しく、目を向けることはなかったのに、手を休めるとすぐこれだ。


 ただこの裏口、やたら頑丈で傷んだ閂が掛けられており、しかも癒着しているのか全く外れないのだ。

 というか、日に日に腐って変な形に変化しているような気すらする。

 多分錯覚だ。

 表面の木目が錯視めいた文様を描いているせいである。


 しかしサメ機人シャークボーグの一撃を受けて破壊されない閂ってなんなんだ。

 一方でこじ開けようとすると少しずつ動くあたり、閂としての機能はまだ生きているようだが。


 どうせ兄のことだから、24時間戦えるサメ機人シャークボーグに24時間負荷を掛けさせ続けることで閂を開けさせる手段に出るだろう。

 出来る以上はやる。

 間違いない。


 見つかってしまったものはしょうがないので、考えないことにしよう。

 問題になりそうなものはきちんとその都度詰めればいいのだ。

 面倒くさいが。

 本当に面倒くさいが。


 さて、ガチャを回そう。

 こっちはこっちで毎回頭を抱えさせられるんだよな……。


 SR・錬金術士のアトリエ


 出現したのは、小屋だった。

 冒険者ギルドと比べると、小屋というしかないサイズの建物が出現したのだ。

 小さな平屋といった印象のある建物であり、木造で瓦張りは板のようなものを貼り付けているようにも見える。

 

 どういう文化圏の建物か類推するのは難しいが、一般的な家屋なのだろうと私は考える。

 とくに際立った作りや看板が存在するわけではないからだ。


 扉は薄い板を蝶番で止めたもののようで、手で軽く押すだけで簡単に開いた。

 それと同時になにかこもった匂い。

 煮だった薬品が煙になり、それが換気されずにそのまま残った、といった印象。


 錬金術士、か……。

 たしかに薬品を扱いそうな職業である。

 それを示すかのように、壁を埋め尽くすように本棚と本が存在していた。


 ただ……薬品の類はテーブルに置かれているだけで、後は様々な物が雑多に置かれた棚とあとは私室として使っていたのであろうベッドが一つ、そして……。


 部屋の中央に鎮座する謎の巨大な釜。

 恐ろしいことに、中に緑色の液体が入ったままになっており、しかも煮だっているのである。


 火もない釜なのになぜ……。




















 後日。兄がサメ機人シャークボーグに釜をかき混ぜさせてなにやら道具を作っていた。

 暇を持て余した兄は、アトリエにあった本を適当に手に取り、そこに書かれていた挿絵を元に釜に材料を投入しだしたのだ。

 何が出来上がるのかもわからない上、手順があっているのかどうかもわからないのにそれに手を出してしまう兄に頭を抱える。


 しかも自分でかき混ぜるとムラが出来るからってサメ機人シャークボーグにやらせている。

 というかこういう作業はサメ妖精のシャチくんにやらせるべきなのでは……?


 そうして出来上がった軟膏は、塗ると爆発する性質を持っていた。

 いや軟膏が出来上がった時点でだいぶ得体が知れないんだが……。

 なんか釜の液体の底から器に入った完成品が引き上げられたし……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る