R 誰でも簡単変装マスク
顔を知られたくない時に行うことといえば変装だ。
例えば顔が隠れるように深くフードをかぶってみるとか、メガネを掛けてみるとか。
とにかく印象を変えれば人の認識は簡単にごまかせる。
有名なところでいうとほくろだろうか。
顔の目立つ位置に大きめのほくろをつけておくだけでそこに意識を誘導し、顔全体の印象をごまかす事ができる、そうだ。
極端な話、顔全体を変えてしまえば顔を知られることはないと言える。
特に元の顔の印象に結びつかないように慎重に変えられるならなおさらだ。
今回はそれを可能にする景品が出た話だ。
ただし、ガチャ産である。
サメ妖精のシャチくんが、気がついたら増えていた。
具体的には3体になっていた。
しかもどうもその3体は全て思考を共有しているらしく、3体で一人分の意識を持っているようだ。
どうしてそうなっているのかさっぱりわからない。
まあ元からサメの妖精だからわからないのは当然なのだが。
しかし、増えた原因はわかっている。
兄だ。
兄がインチネジを一箱与えた次の日にこうなっていたのだ。
一日一本でいいところを、100個入りの箱で与えていたのだ。
そんなにたくさん与えたら栄養が大変なことになりそうだが、兄は報酬のつもりで与えているから手に負えない。
その結果、見ての通り3体になっていたわけだ。
3体になったことで助手としての効率が大幅に上がっていることを考えると、どう扱えばいいか悩ましいところだ。
さて、それは置いておいて今日のガチャだ。
今回、コイン排出ボタンを3回押してからハンドルを半分まで回し、おもむろに蹴りを入れてからゲーセンのコインを上の筐体に入れてから下の筐体のハンドルを回した結果、黒いカプセルを排出させることに成功した。
なんでそうなるのかさっぱりわからないのだが排出されたのだ。
特に記号も書かれていないカプセルだが、異様に固かった。
R・誰でも簡単変装マスク
出現した景品は、黒い全頭マスクだ。
触った感じ、フリースに似た質感をしているのだが、目で見た時は光沢感のある高級そうな布なのがよくわからない。
いや、よくわからないのはいつものことなのだが。
目や口の穴が開いていないので、変装マスクとしてかぶっても使い勝手が悪そうだ。
いや見た目は黒い被り物でしかないから不審すぎるな。
……変装マスクか。とにかく被ってみないことにはおかしな効果も判明しないだろう。
被ってみる。
内側の肌触りがとても良い。
首まですっぽり覆ったところ、急に視界が開けた。
本来布で覆われているはずの視界が、だ。
まばたきも問題なく出来ている。
それに呼吸も苦しくない。
口を開閉するとマスクがそれに連動して動いているのを感じる。
マスクをつけたまま食事すら出来てしまいそうだ。
穴の空いていない全頭マスクだったはずなのに。
これは……、被ったことによって効果が発揮されて、形が変わった?
変装マスクっていうくらいだ。誰か知らない人間になっていることだろう。
えーと鏡、鏡……。
鏡に写った自分の顔を見て、私は呆れた。
輝石のようなツルリとした頭部。光が“内部”に反射して白く輝いている。
両眼と額に嵌った青い目。白目がまったくなく、不可思議な文様が浮かんでいる。
そして、左右に開閉する口。映画で見たエイリアンのようだ。
ケイ素生命体じゃねーか!
え? なにこれ?
つまりこれは、ケイ素生命体文化圏での変装マスクなわけ!?
異星文明!?
存在するのかそんなもの!? 確率的にありえないって証明されてたはずだぞ!?
……いや、ガチャが存在しないモノを出力しているのは今までもあったから驚くことではないか。
しかし、モノボケ以外に使いみちがなさそうな物品になってしまった感のあるマスクだ。
兄に与えればしばらく遊び倒すだろう。
後日。兄は宝石でできたドラゴンのような姿になっていた。
……なんで?
鬼の角と組み合わせた結果、ケイ素生命体文化圏に置ける鬼の姿に変じた、と兄は推測していたが。
そうはならんやろ。
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