第85話 護衛者は強者、ジービズ本気出す
その鍛冶屋にはジービズが1人で武器やら農機具やらを造っている。
飾られているのは僕が持ってきた鍬や鎌などだ。
ジービズは自らの技量が現実世界から持ってきた鍬や鎌に負ける事が信じられず。
改良に改良を重ねているのだ。
そのせいかセルフィール国家とエクスバン国家、バラドリ混在王国の技術も知りたがっている。きっと僕が持ち込んだ農具が、彼に鍛冶屋魂を復活させたのだろう。
大きな家があり、その外に鍛冶屋が屋根付きで設置されているという感じだ。
色々と名も知らない道具が置いてあるが、僕は気にせずジービズに声を掛ける事に。
「ジービズ。ちょっといいか」
「おういいぜ」
僕とジービズは鍛冶屋の外にある休憩所に椅子を置いて向かい合っていた。
僕が今後の方針について説明し、だいたい1週間後の目途で3つの国が繋がり、本格的な交易が始まる事、さらにはその時に3つの国から鍛冶屋の専門家たちを合わせて、何かを作ろうという会議を開けるだろう事を告げる。
その為にはいろいろと根回しの必要があるから少し待ってくれと告げると。
ジービズはにこにこしながら頷いてくれた。
「わしもそれを聞けて安心した。保留にしたままずっと放置よりかはずっとましじゃわい、それで、最高な鍬を作ったんじゃが見てくれるか?」
「もちろんです」
僕はジービズが丹精を込めて作った桑をしげしげと見つめていた。
「これは、鉄の所にダイヤモンドを使う事で鋭さを増しているようですね」
「そうじゃ、持つ所の木材の部分はプラントモンスターを使っておるのじゃ」
「なるほど、これはすごいです。というか、ダイヤモンドをそれに使ってしまう豪胆さに驚きです」
「わしらの世界ではダイヤモンドはさほど珍しい鉱石ではないしな、お主の世界の鉱石のほうがもっと珍しいぞい」
それはおもちゃの宝石とは口が裂けても言えない。
「さてこの鍬をネッティーに見せびらかしに行ってこよう、さぁ、お主も仕事があるじゃろう、さっさと仕事してこい」
「はは、手厳しいですね」
「それが村長の旦那の仕事じゃろう」
「ここにも広まっていましたか」
「はは、あのネンネはとてもいい奴だ。久しぶりの幸せを感じているのじゃろうて」
「そうですかね」
「そうじゃ、ほれほれ」
僕は鍛冶屋から追い出されて、次なる場所を求めて移動した。
ディボンド宅に到達すると、扉をノックする。
中から大柄なディボンドが出てくると、彼は一時期両手と両腕が壊死しかけており、
切断を余儀なくされそうだった。それに薬草団子などを食べさせなんとか回復させたのだ。
ディボンドはぼーっとしながらこっちを見ている。
これがいつものディボンドだ。
「おいらに何かようかい? 村長の旦那さん」
「てめーもか」
「ネンネが嬉しそうに語り聞かせてくれたよ」
「それは良かった」
「実は君には大きな仕事がある。あと食材はネンネの宿屋に運ばせておいた、レトルトとかあらかじめ作られている奴はあるけど、色々と使えると思う奴もある。それを君の料理でなんとかしてくれると嬉しい」
「それはもちろんだけど大きな仕事とは?」
「それはウィルソン悪ガキと一緒になってセルフィール国家、エクスバン国家、バラドリ混在王国の交易運送を頼みたいんだ。君には護衛を頼みたい、しかしウィルソンはチート級に強くなっているがな」
「ほう、あの少年だねぇ、一度手合わせしたいけど、まぁいいや、いいよいつから?」
「えっと大体1週間後だ」
「それならこっちの準備も出来てる。ちょっと台所に来てくれよん」
なんだ僕が料理されるのか?
とかあらぬ想像をしつつも。
僕は台所にやってくると、その光景に絶句していた。
そこには無数の小瓶に入っているポーションだらけだったのだから。
後薬草団子やら薬草やら色々な野草が置いてある。
彼は錬金術師ではなかったはずだが?
1人の肉屋の料理人だったはずだが?
「色々と試行錯誤して、薬草または薬草団子という治療薬がレベル1なら、これはレベル2の回復ポーションという事です」
「元は何を使ったのだ?」
「薬草と村長が持ってきてくれている野菜を色々と賭け合わせたものです。この緑色の液体です」
「これはあれか、青汁という奴なのか?」
「その青汁というやつがどういうものかは知りませんが、これはグリーンポーションと名付けたいです」
「そのまんまじゃねーか」
「青汁とはグリーンの意味なのですか?」
「そういう意味ではないとは思うが」
「この回復ポーション:レベル2は何に使えるんだ?」
「これのすごいところは飲むものではないという事です」
「なに!」
「これは空気中に振りかけると、その半径10メートルの生き物たちが超絶回復します」
「おおおお」
「なので多人数で冒険する冒険者には匹敵の回復ポーションとなります。まぁグリーンポーションと言ってくれると嬉しいですが」
「なるほどなぁ、グリーンポーションか、いい名前だ。それで全部で何個できてるんだ?」
「ざっと300個です」
「ディボンドさんはすごいです」
「まぁ時間はありましたし色々と試行錯誤出来ましたしね、ヒロスケ殿が持ってきてくれた野菜たちの生命力がこれを可能にしたのです。ちょうど色々と冒険して野草を集めたいと思っていたので、あとキノコ類など、レベル3の治療薬を目指してみます」
「色々と助かる」
「おいらはヒロスケ殿に命を救われたのです。そして障がいと呼ばれるものまで治療してくれました。その恩義は忘れる事は絶対に無いです」
ディボンドは綺麗になった両手で僕の両手を握りしめて、その巨体に似合わずにっこりとしていた。
「ディボンド、君の料理を食べてみたいのだが」
「なら宿に行きましょう、素材があるし、この300個のポーションを村長に託したのです」
「ちょっとまってくれ、ミニチュアボックスに格納するから」
「そのボックス便利ですよね」
「だな、バラドリ混在王国には感謝しないとな」
「そうですね、自分の心に真っすぐな所がヒロスケ殿の良き所です」
「そう言ってくれると嬉しいよ」
2人はディボンドの肉屋から出ると、
談笑しながら歩き続ける。
すると宿屋に到達する。
宿屋の外では色々な人々が買い物をしたりしている。
宿屋の近くにはいくつかお店が立ち並んでいるのだ。
その中にはジービズが造った武器やら防具やら道具やら農機具が飾られており、高値で販売されている。
販売しているのは、さきほどのジービズで、こちらを見るなりにかりと笑って見せる。
その隣にはネッティーとラングンがおり、ネッティーという姉御に絞られているラングンの姿には面白い声を上げざる得ない。
デニという10歳の女の子は御菓子を祖母のビニに買ってもらい嬉しそうにしている。
なんとなく平和っていいものだと思った。
宿に入るとネンネが台所のテーブルにこれでもかと真っ白なシチューを作ってくれていた。
僕はきょとんとしつつも、
「おかえりなさい、今日はシチューですよーってなんでディボンドも?」
「ふふ、そういう訳なら、おいらは果物とヒロスケ殿が持ってきたものでデザートを作るよ」
「ありゃりゃ、ディボンドさんが造る予定でしたか」
「いや、いいんだ。どうせなら君の料理を久しぶりに食べたい」
「それならたんと食べてください、あの鍋にはあなたの為に大量につくったのだから」
「全部食べ切れるかな」
するとディボンドさんもネンネも爆笑していた。
そうして平和なひと時を僕らを味わっていたんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます