第80話 子供問題

 虹色の世界を通り僕は異世界に到着していた。

 この草むらの地面が僕は大好きだ。

 冷たい空気も暖かい空気もいろいろと混ざる空気もとても大好きだ。


 空は眩しい日光が僕を温めてくれる。


 ミニチュアボックスから武装車両を出現させると、僕は武装車両に乗り込み、運転を始めた。


 この山の麓にある隙間には現実に戻る扉がある。


 なぜかこの世界の住民の人には見る事が出来ない。


 異世界の血がなければ異世界へ行く扉を見る事は出来ず、

 現実世界の血がなければ現実に行く扉を見る事が出来ない、これがどのような原理なのか、僕には理解する事は出来ない、この場所はタイム王国と呼ばれていた時期があり、ダイブン国王の力のほとんどを僕は受け継いでいる。


 

 だからこの世界ではチートかもしれない、そして現実世界でもチートかもしれない。


 それでも僕はこの世界を変えたい。


 そのような雑念と言っていいかもしれない事を、運転しながら考えていた。


 村が見えてきた。


 その村は現在ではプラントモンスターの死骸などスライムの素などを利用して鉄壁の城壁で囲われている。

 その中には沢山の村人達がいる。

 村人は増え続け、近隣の村や街から逃げてきているのだ。


 それだけディン王国は軍事力を底上げしたいのだろう。


 彼等は恐らくセルフィール国家とかエクスバン国家を滅ぼす気でいるのだろう。


 バラドリ混在王国はどうかは分からない。


 でもその3つには交易の道が出来ている。


 それを壊すつもりなら、相手になる気は僕にはあるのだ。


 また雑念をしながら、武装車両は宿屋に停車した。

 宿屋の裏口に停車した武装車両。


 どうやら音だけで分かったのか、ネンネが扉から出ると。


 僕は武装車両の扉を開ける。

 ほぼ同時に2人は抱きしめあった。


 お互いの生命を感じながら。


「子供問題を解決できる方法がある、後いろいろとだな」


 僕はここに持ってきたものをリストアップしておいた、ネンネにも理解が出来るようにと、使う用途について描いておく、フィギュアだけは使う用途は未定にしてある。


「このフィギュアなんですが、確か特産品のですよね」

「そうだよ」

「これ、テクスチャさんが見たら喜ぶのでは?」

「たぶんね、みんなは?」

「ちょうどトンボ団長とテクスチャさんが酒を飲んでいます。少年ドワーフ達も寛いでいます。セルフィール国家の地下通路が5分の2できたそうです。エクスバン国家は5分の2で、バラドリ混在王国は5分の1です。バラドリ混在王国は山の下を掘るので、非常に大変な事なのだと、お聞きしました。マグマの通路があり、それを避けて掘っているとの事で」


「なるほどなぁ」


「まぁ、トンボ団長とテクスチャさんに話をするのが早いかと」


「了解したよ、まずは荷物を保管庫に入れたいと思っているのだが」


 現在の食料庫の場所は4つある巨大な櫓の1つに設置してある。

 1つがその櫓の地下に設置してある。櫓の下に階段があるのだ。

 残りの2つはどこかの建物と同化して設置してある。


 これは兵糧攻めもあるが、災害などで使えなくなった時の予備と考えている。


 そこにレトルト食品などを入れるか迷った。

 しかしまだ数500食なので。


 避難食というよりかは、みんなに振る舞った方がいいだろう。


 僕は武装車両のトランクを開くと、そこには無数の物が整理整頓されて入れられている。


「これレトルト500食だから、これを厨房に置くのはどうだい? 君の味覚も鍛えられるよ」


「そうね、ありがたく受け取っておくわ」


 僕とネンネは扉を開くと、そこは厨房だった。

 厨房の片隅に段ボール箱を片端から積み上げていく。


「それと子育てで困っている人達にこれらを分けてあげてくれ、使い方はメモ帳に書いてある通りだから」

「うん、ちょっと待って」


 僕は確認するように【哺乳瓶】【ベビーカー】【粉ミルク】【布オムツ】を1つ1つ説明していく、いくらメモ帳に書いたからと言って、それですべてを理解する事は出来ない人もいるのだ。


 まぁネンネの場合は念の為に確認するという事なのだろうけど。


「了解したわ」


「それとこっちが【加工品】【缶詰品】【調味料品】で、加工品と缶詰品は数百種類あって、調味料品は数十種類ある」

 

 ネンネは一生懸命にメモを取っている。

 そのメモは僕の世界から持ってきたもののようだ。


「加工品はチーズとかバターとかベーコンとかハムとか、ね、うん、大丈夫、そして缶詰品は、これはなにかしら、変な素材のようだけど」

「それはこの道具、名前はあやふやだけど缶切りで開いていくんだよ、使い方を教えるね」


 僕はこの名前のあやふやな缶切りを覚えていなかった。

 なぜなのかと思い出そうとすると、このような道具で手を切った記憶がある。


 記憶から消したのだろうけど、どこかで缶切りだと思っている。缶蹴りと勘違いしているのだろうか?


 僕は片頭痛を感じながらも。


「ふわああ、なんだろう、この果物、すごくおいしい」

「それは梨と呼ばれる果物だよ、加工品にするとおいしいんだよ、もちろん生でも美味しいんだけどね」


「これ全部食べて言い?」

「もちろんだよ」


「はぐはむ、で、調味料品は?」

「これは塩とか胡椒とか、山椒とかラー油というやつとか、色々と試してくれ、このタバスコというやつはすごく辛いから気をつけて」

「うん、わかった」



「髭剃りと炊飯器とドライヤーの使い方はこのメモに書いてあるから」

「うん」

「僕はここに学校を作ろうと思っている」

「学校とは何ですか?」


 僕は大きな瞳を開いて目の前のネンネを見ていた。


「学園みたいなものだと言ったら分かるか?」

「うん、分かります貴族たちが行く場所ですよね」

「その通りだ。僕はその学校を造るので先生を集める必要があって、そういう仕事を募集する時はどうしたらいいのだ?」

「普通に探すしかないわね」


 僕は撃沈した。

 このとてつもない広い世界で先生を探す必要があるのだと。


 悲しすぎる現実に、僕は膝を落としていた。


「そういえば2人の学者様が宿屋に来てたわね」

「それだ。僕はその2人に会いに行くぞ」


「その前にあなたのお仕事をしないとね、まだまだ荷物がありますよ」

「忘れていたああああ」


 僕はそのほかの荷物をとりあえずミニチュアボックスに移動させ、学者2名に会いに宿屋の2階へと続く階段を駆け上ったのであった。


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