第52話 提案と願い
場所は隠し通路から入った地下整備場ではなく、玉座になっている。
「僕は3つの国を繋げました。それを生かすも壊すもあなたたち次第です。セルフィール国家、バラドリ混在国家、この2つの国と交易してもらいたいのです」
「安心せよ、その件はメイル姫から言われたし、マカ姫からも言われた」
「あの2人がですか?」
後ろにはメイル姫がにこにこしている。
「わたくしは伊達にあなたを近くで見ていた訳ではありませんわ、あなたの交易に関する熱情は凄く伝わってきてました。それがきっとわたくしの生きる理由なのです」
「そこまで言ってくれると嬉しいよ」
「そんな、あなたのお陰で、沢山の外を見る事が出来たのです」
「僕からの提案は大丈夫なようですね」
「そうじゃ、今バラドリ混在国家とセルフィール国家の人々と相談している。そなたにはそなたのやるべき事があるだろう?」
「はい?」
「ドラロボを使って最強な道を作るのだろう?」
「そうです、最強な道です」
「わしは思っていた。なぜバラドリとセルフィールを繋いだ道のようみ、エクスバンとバラドリを繋いだ道のように、魔法の木材で道を作るらぬのかとそしてわしは世の中について改めて考えてみた。そうじゃディン王国があった事を、つまりそう言う事だろう、村はディン王国の端っこだが、それでも戦地になる可能性がある。君は道を要塞化しようとしていたのだろう」
僕の心臓がどきりと脈打った。
その事についてはなるべく考えないようにしていた。
誰にも気づかれないならそれでいいと思った。
でも目の前の国王はそう簡単にごまかせる相手ではなかったのだ。
「はい、おっしゃる通りです。色々な情報を照らしあわせても、ディン王国とは話会いで済む問題ではないのだと、力には力を、そして力には話をと変換させる必要があるのです」
「その考え方は素晴らしい、あの国は何かがおかしくなっている。普通が通用しない相手なのだ。手加減はするな、その為に機械騎士団をそなたに預けるのだ」
「そう言う事だったのですね」
「あの戦力は1機で数千になるだろうからな」
「それは確かにそうです」
「ではゆけ、こうやって食っちゃべっている時間などないわい」
「は、はい」
メイル姫はこちらを見ている。
じっと見ている。
それが別れを意味するのだと僕は気付いている。
「メイル姫、えっと」
「ちゅ」
その瞬間、
凍りついたような瞬間が訪れた。
メイル姫は僕の頬っぺたにキスをしてくれた。
それもドワーフ族なので背丈が小さいので背伸びをして。
「この口づけはあなたの無事を祈っての事」
「ああ」
「あなたにはとても大切な人がいるのでしょう? その子のためにがんばりなさい」
「メイル姫」
「わたくしは道を作ります。沢山の人と沢山の人が手を合わせて強くなって繋がっていく仕事です。わたくしは、最高な旅でした」
顔を濡らしながら、
きっと一緒に冒険してきた日々を思い出して、
メイル姫は玉座の間からいなくなる。
それを追いかけるようにベピィーとリフィーが走る。
国王はすまぬという顔をして。
「そなたの事が好きだったのであろう、だがそれが叶わぬ恋だと分かったのかもしれぬなぁ」
「そうですか、そうですよね、僕は自分の事ばかり」
次の瞬間僕は走り出していた。
それも訳が分からず。
そんな事をしても意味が無いなんて分かっているのに。
心臓が苦しくなっても、呼吸が苦しくても、ひたすら走り続けた。
タートルゴーレムの中心部には巨大な湖がある。
僕はメイル姫の頭をぽんぽんと叩くと。
「いつかまた旅に出よう、もっと広い世界を」
「は、はいですわ」
メイル姫はにこりと満開の笑顔になっている。
それを照らし出すのが鉱石の光であり、湖の反射の映像で、彼女が笑っていた事を。
僕は知る事となった。
それから僕達は故郷に戻る準備をする事となる。
「まったく、あの嬢ちゃんは挨拶にもこねーのか」
「いいんです、先程挨拶をすませたので」
「そうかい」
「トンボ団長は故郷から離れる事は寂しくないのですか?」
「そうだな、わしの故郷はディン王国の近くにあって奴隷狩りにあった。家族が無事かはわからぬがな」
「そうですか」
するとベピィーとリフィーがやってくる。
2人はにこにこしながら。
「これ選別」
ベピィーがくれたのは一枚のクッキーだった。
とても大きい。
「これが願い」
リフィーからはどうやらメイル姫の手紙が託されていた。
それを開いてみてみることとする。
長ったらしく挨拶などが書かれてあり、最後に願いが書かれてある。
【本当ならわたくしがやらねばならぬけど、わたくしよりふさわしい人がいます。それがあなたです。あなたがディン王国からドワーフたちを解放するのです】
その事を触れている内容。
僕は片時も忘れた事が無い。
ディン王国が非道にも沢山の奴隷を扱い、そしてセルフィール国王と王妃をも奴隷にしてしまっている可能性。
それはマカ姫とも約束したこと。
この交易は、
奴隷そのものをディン王国から無くすという目標なのだから。
「みんな出発するぞ、これはすごいしょっぱいなぁ」
僕は袋に入っていたクッキーを取り出して頬張る。
涙が流れながら。
嗚咽を漏らす事はしないようにと、後ろからは11体のドラロボが歩いてくる。
よーく見るとキャタピラのようになっており、
キャタピラを動かす事で燃料の削減になっているらしい。
涙を垂れ流し、
そんな新事実を知りながら。
いつの間にかトンボ団長はドラロボに乗っているし、隣には気を使って話かけてこないドルゴンがいる。
フェイブマックスXに僕はいつの間にか乗っているし、
後ろには沢山の荷物が積み重なっている。
さぁ故郷に戻るか、そのあとに道の要塞化と、これは村人には言い難いが、村の要塞化であった。
村を国にしてしまおう。
それが僕の夢なのだから。
久しぶりにリサイクルショップに戻る事も考えたりした。
弟はどのような研究結果をもってくるだろうか?
母親は元気か?
僕の目の前には沢山の問題が山済みであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます