第49話 最強への3日目
僕は全身の激痛によって目覚める事となった。
薬草団子でも食べようかとしたら、なんと荷物もヴァンパイア族長が管理しているようなのだ。
「いかんぞ、その痛みから脱するすべは沢山ある。しかし痛みと立ち向かわねば、お主は本当の意味で強くなれない」
イメージするとエメラルド色のヘルメットとスーツみたいなものを着用している自分自身がいる。次に自分自身の顔や姿かたちを思い出すと人間になれる。
それを見ていたヴァンパイア族のドンスコさんはにやりと微笑んでいる。
「そろそろコントロールになれる頃合いだと思っていた。最後はそれがしと組手をしてもらおう、殺し合いだとか倒し合いという意味ではなく、自らの心とそれがしの心をぶつかり合わせてみたいのじゃ」
「その事なら」
「では参る」
次の瞬間ヴァンパイア族長の気配が突如変わった。
熱い物から冷たい物へと切り替わったドンスコ族長は、
前に一歩歩き出したというだけで、僕はフリーズしていた。
僕の瞳にはドンスコ族長が止まって見える。
本能が避けろっているし、この場所は魔人の森の中だ。
ちなみに気絶して睡眠をとったのも魔人の森の中だ。
だからこうしてすぐに組手を取る事が出来たのだ。
本能だけで避け続けている。
ドンスコ族長は3メートル離れた場所にいる。
それでも拳は届かない距離だ。
しかし頬をお腹を何かがなぶる。
その寸前で僕は避け続けている。
「心を開くのだヒロスケ殿」
「ですが、どうやって」
「お前の心じゃ、一番知っているのはそのエメラルドの顔だろう?」
その時気づいた。
自分の素顔とは魔人そのもであり、魔人ではないんだが、魔人に近いそれは自分の心を表していたものそのものであるという事を、今更気づいた。
イメージをする。
全身に見えない拳が飛来が、そこに出現したエメラルドのスーツのようなつるつるボディーは拳を跳ね飛ばす。
仮面もつるつるお面のようになり、全身がエメラルドそのもの、ただし右腕だけは発達している。
それがなぜなのかはなんとなくわかっている。
注射を打った方だからだろう。
しかし左腕も次から次へと成長していくのだから、
僕としてはパニックになりつつ、
どちらの腕に魔力を注射したのか分からなくなってしまいそうだった。
現実にそうなりかけている。
「次は僕の番だ」
「かかってきんしゃい」
ヴァンパイア族長は笑っている。まるでそんなガキの攻撃など食らってたまるかという感じなのだ。
僕としてはそのガキみたいな拳を食らってダウンしていろてめーと言いたい。
拳が飛来した。
それは僕自身の拳だった。
エメラルドパンチは相手拳とぶつかり合う。
拳と拳が、足と足が、頭と頭が。
ぶつかり合ってぶつかり合う、もはや男と男の真剣勝負。
武器を使えれば、断罪剣など使って一気に距離を縮める事が出来る。
ここでの距離とは力量差の問題だ。
しかしここは殺し合いの場ではない、1人の武人が1人の武人を成長させる。
それが本当の目的なのだから。
僕は呼吸を合わせる。
これはコンビを組むように、ヴァンパイアの拳が早すぎるなら、こちらも早すぎるようにし、まるで演奏楽器で演武しあっている2人。
殴り合いの中でお互いの事を理解しあう。
ヴァンパイア族長の気持には、優しさが一杯ある。
色々な悲し事もあったのだろう。
そういう拳なのだ。
そして僕の拳がどのような拳なのかは相手にしかわからない。
2人の拳が止まった時。
修行が終わった事の合図であった。
空を見れば御昼どき、ぜひとも道が完成するのを僕は見てたかった。
「見てみたいのであろう? それがしの蝙蝠たちに乗っていくか?」
「いえ僕は歩いていきます。彼らが造った道を1つ1つ味わってみたいのです。それに先に行く場所はドワーフ王国です」
「そうか、ならそれがしは空から行こうとするかのう」
「そうしたほうがいいです。僕に干渉しないほうがお互いの為です」
「そなたの拳はそうは言っておらなかったがな」
「そうなんですか?」
「いつの日か分かる時がくる。では修行終了じゃ」
僕はドンスコ族長から預けていた武器や道具またはアイテムを回収する事に成功している。
魔人の森の近くには街がある。それを思い出しており、沢山の人々に不思議な視線で見られたが、入り口にはエメラルドドラゴンのドルゴンと、相棒でありバイクのフェイブマックスXが待機してあり、後ろの板状の10個の荷台には無数のアイテムが置いてある。
とはいえそんなに凄い代物ではなくてエクスバン国家とセルフィール国家とバラドリ混在王国からもらった交易の参考になるものと、献上品みたいな物ばかり、これからどのような品々を交易に出していくかを相談がてらもう一度セルフィール国家とエクスバン国家に向かおうとしている。
「ベピィーとリフィーとサイノスターは?」
「ああ、彼らならメイル姫に付き従っていなくなったよ」
「そうかそれなら良かった。ドラゴンのお前にとってこの3日間は暇じゃなかったのか?」
「そうでもないさ、君が早く戻ってくる事をわくわくしていたよ」
「それは嬉しいことを」
そして僕たちはエクスバン国家に交易の品をやりとりをするため再び向かう事になり、
あとはどの程度道が完成したかの実証見分であった。
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