第48話 力の使い方
「ドンスコ殿、僕は道を作る手伝いに行きたいのだが」
「それはまだ早いなぁ?」
「何をさせるつもりですか?」
「せっかくそのような体を手に入れたのだ。なら、やる事は決まっているだろう? 3日間の修行だよそれくらいあれば道も完成するだろう」
「そんなに早くは完成しないかと」
だがヴァンパイア族長のドンスコさんは、
首を横にふる。
「君は異種族というのを舐めている。彼らは沢山の力をその体に秘めている。そして人間のこの世界の魔力と結合してしまったヒロスケ殿も異種族に近いものだ」
「そうなのですね」
「だから修行だ、せっかく助けた命が殺されるのは嫌だし、お主には生きて貰う必要がある。なぜなら異世界と繋がる君がカギなのだから」
「はい、では何をすれば」
「だから修行じゃ、ヴァンパイア流ではない、そなたが訓練するのは魔人流じゃ」
「魔人ですか?」
「そうじゃお主は伝説の魔人とそっくりの力を持っているのだから」
「はい、そういうことなら」
「ではこちらにこい」
それから僕はドンスコさんに誘導されるように、
複雑な道を沢山通った気がする。
バラドリ混在国家には全然人がいなかった。
いるとしても子供や老人ばかりだった。
何事だろうと思ったら。その発生源が僕である事を思い出していた。
そう言えば皆で道を作っているという事を。
「ここじゃ、ここが魔人の森じゃ、まぁ街の中にいるから結界から出る必要はないがのう」
「魔人の森には何が?」
「それがしと鬼ごっこをしてもらおう、修行は3段階1日ずつ進める。最初はその体のコントロールだ。さぁそれがしを捕まえてみせよ」
ヴァンパイア族のドンスコさんは体を蝙蝠のように変身させると、ぱたぱたと宙を飛翔した。
「スタートじゃ」
僕はイメージする。
あの変身の姿に。
そして地面を跳躍した時、信じられないジャンプ力に度肝を抜かれる。
木々を貫通してしまい、まるで弾丸のようだ。
まるでロケットのように何度も何度も発射する。
その度に木々を貫通してしまう。
今必要なのはコントロール力。
「まずは木々を貫通しないようにしないと」
体のコントロールは思ったより厳しかった。
イメージをし続けると、
全身がエメラルドのつるつるした皮膚から、背中の部分にマントのような部分が出現する。
そのマントが抑制力となり、貫通する前にふんわりと木々に斜めに着地する事が出来る。
「ふむ、その調子じゃ」
「どこから見ているかな?」
僕は辺りを見渡す。
すると聴覚に集中する事で、すごい範囲音が聞こえる。
川の流れる音、山の呼吸、虫たちのさえずり、動物たちの鳴き声、モンスターたちの掛け声。微生物の発生、そして見つけた!
僕はそこに向かってロケットみたいなものを発射させるように、その場所に到達。
蝙蝠のような姿になっているドンスコさんを捕まえる事に成功したのだ。
そしてその日は崩れ落ちるようにぶっ倒れた。
(修行2日目)
夢を見る暇などなかった。
ゆっくりと朝日が昇ってくるのが分かる。
そしてこの森の中には朝日があまり入ってこない。
だからドンスコさんは動く事が出来るのだろう。
僕の想像では太陽の光に当たると、ヴァンパイア族は燃え上がるものだと思っていた。
しかしそいう言う事ではなかった。
少し健康的に悪くなったり、ちょっと火傷する程度であった。
しかし直射日光をずっと浴びていると死ぬらしい。
ヴァンパイアにも魚人族にも色々とした問題を抱えているのだと思い知らされた。
一本の木カブがある。
その木カブはとても大きな物で、
そこには遥か昔巨大な木々があったのだと思わされる。
そこには一本の剣が刺さっている。
ダイヤモンドの剣ではなかった。
気づけば僕の衣服はぼろぼろのシャツとズボンになっている。
ズボンですらぼろぼろで、布のようにゆったりとしている。
恐らくダイヤモンドの剣と草花のローブは取り上げられている、
修行に使ってはいけないという意味なのだろうけど。
ゆっくりと木カブに到着すると、
2本の剣が突き刺さっている。
1本は鉄の剣。1本は鉄の剣だった。
気づけば目の前にドンスコさんがいた。
彼はよっこらせと言って立ち上がる。
鉄の剣を握りしめ、右肩に豪快に叩きつける。
「ヒロスケ殿も握れ、今から魔人流の剣術を教える」
「あなたはヴァンパイア族でしょう?」
「それがしの師匠は沢山の剣術を教えてくれた。その中に魔人流があった」
「それはどのような」
「いいかよく聞け、魔人と力だ。魔人とはスピードだ、魔人とは頑丈さだ」
突如大きな声で叫び出したヴァンパイア族長はにかりと笑い、その瞬間からちゃんばらごっこが始まった。
「どうしたそんなようなものではそれがしを倒す事など夢のまた夢じゃ」
「でもあまり本気を出すと」
「そのための鉄の剣、どれだけ力を込めて鉄の剣でもヴァンパイア族に怪我をさせる事など不可能中の不可能じゃてそしてそれがしからの攻撃も魔人にはきかないんじゃて」
「なら、本気をださせてもらいます」
次の瞬間、まるで火ぶたが切って降ろされたかのように、
右左と交互に鉄の剣を振り落とす。
風が斬れるように、びゅんと反応するドンスコさん、ドンスコさんの剣術も遥か先を見すえるように、びゅんびゅんと振られる。
鉄の剣と鉄の剣ばぶつかりあいながら、火花を散らす。
「よくやるのう、その剣術流派は見た事がない」
「僕の世界ではちゃんばら流といいう」
「じゃがお主はそれがしをまねる必要がある。魔人みたいなやつには魔人流がふさわしい」
「いや学んでいるさ」
何度も何度も切り倒される。
血が噴出する事はないけど、
それでも脇腹の骨が折れてしまったのではないかという、恐怖が頭に飛来する。
それでも地べたに泥まみれになろうが、ゆっくりと立ち上がり、ドンスコさんに打ち掛かる。
「うあああああああ」
その威力は超人のレベルに達そうとしていた。
1回1回の攻撃は僕の1回1回の攻撃とぶつかり合う事により衝撃波となってぶつかり合う。
また打倒されて地面に這いつくばろうと。
「いつまで寝ている、立ち上がれ」
それでもそれでも負ける事など許されないように、
ゆっくりと呼吸を合わせて立ち会がある。
「うあああああああああ」
怒りではない、それは悔しさそのものだ。
僕はそんなに肉体的には強くないし、高校生の頃は格闘技などもやった事がない。
少しのスポーツにかじった程度だった。
剣を構える。
「魔人流、断罪剣」
それは突如頭に閃いた。
それは突如頭の中に飛来した。
まっすぐに両断する斬撃、まるでレーザー光線のように地面をえぐり、木カブまで真っ二つにして。
ドンスコさんを吹き飛ばす。
「よくやったぜ」
そう言ってドンスコさんは立ち上がり、僕がぶっ倒れるのを支えてくれた。
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