第43話 3種族長

 その建物はまさにツリーハウスであった。

 木々と建物を融合し、なんと木々の隙間から川のように水が流れている。

 絨毯が沢山敷き詰められており沢山の護衛がいた。


 だが僕達がそこに入ろうとすると、護衛は道を開けてくれる。


「この国はどのような人でも種族長と会う権限があるわ、本当に忙し時は少し待ってくれとお願いされる。大抵は会いに来たのでとお願いするでしょう? 違うのこの国は会うからもう少し待っていただきたいとそういう思想なのよ」


 メイル姫が教えてくれる。


 ちなみにサイノスターとベピィーとリフィーはお留守番となっている。

 ドルゴンはどうしてもウルフ族とヴァンパイア族と魚人族の長を見たいといって、付いてきている。


 不思議なのは、モンスターと勘違いされても可笑しくないドラゴンであるドルゴンが拒否られない事であった。


「うちが知っている中で、ドラゴンほど希少な生き物はいない、逆に3種族長が会いたいと思うだろう、それくらい護衛達も分かる」


「なるほど、マカ姫も詳しいな」

「そうだな、この国が、沢山の種族の理想の国だからだ」

「確かにそうね、エルフとドワーフが一緒に暮らせば問題が起こる。のに3つもの違う種族、しまいには移住してくる色々な種族、それなのに争いが生まれない、という事はいつか人間もそこに加わってもいいんじゃないかって」


「それは言うな、あの腐ったディン王国共は殺さねば」

「それは僕に任せる約束だろマカ姫」


「そうだが」

「マカ姫もこの阿保を信じなさい」

「メイル姫はひどいなぁ」


「そろそろ着く頃じゃない?」


 ドルゴンが報告してくれると、そこには扉があった。

 ゆっくりと開くとそこには。


 3人の種族が一生懸命トランプ型ボードゲームをしていました。


「くそ、シェイグよそれだけはやめてくれ、たのむ、それで今日の酒がぁ」

「容赦しねーぜ、ドンスコ」

「ふ、そんなシェイグは油断してしまったのでこのレイガスが奪うのでした」


「「ぎゃああああ、酒(肉)があああああ」」


 なんかシェイグと呼ばれた男性がウルフ族の族長らしく、

 銀色の毛がぼさぼさに生え揃っており、

 その牙は鋭く尖がっている。

 どことなく歯磨きされていないのか黄色になっているが。


 ドンスコと呼ばれた男性は幅広い赤いマントを着用しながら、

 口からはちょっこりと牙が2本生えている。背中は曲がっており、

 こちらを見てなぜか親指を上げてきた。


 最後がレイガスという女性の魚人、見たところクジラのような魚人であり、

 体がとてもデカイ、しかしナイスバディ―でありながら、美形で、

 僕の世界で言う所のアイドル顔負けだ。

 

「おお、これはこれは、マカ姫ではござらぬか」

「そっちはメイル姫だな、いや~かわいいねぇ」

「その男性は人間だな、何かしらの要件があるのだろう」


「「「そしてドラゴン、久しぶりに見たぞい」」」


 シェイグがウルフ族長で、ドンスコがヴァンパイア族長で、レイガスが魚人族長だと見て良いだろう、彼らはエメラルドドラゴンの近くにやってくると、すべすべしてくる。


「くすぐったいよ、助けて、ヒロスケ」

「おおおおおお、青年期なのか、なんと言葉を発するとは、大抵は青年期より上の時に言葉を覚えるとされているのだが」


「詳しいのですか? シェイグ族長」

「うむ、色々な動物に詳しくてな、いつかモンスター博士になってやるんだって思っとる。お主もモンスターに興味があるのか?」

「はいすごくあります。ドルゴンと協力してモンスターが欲しいものなどを交易したいと」


「がっはっは、聞いたかドンスコとレイガス、こいつモンスターと交易だって、最高にクレイジーで、そして最高に輝かしい人間だ。俺様は決めたぞこの面白い人間と話がしたい」


 僕は偶然が生み出したチャンスをものにするべく。


「この度、メイル姫とマカ姫がこちらの国へと誘導していただきました。ここに来たのは、この国と交易をする為です。それとよろしければこの国にテレポート設置式を設置したいのです」

「なるほどのう」


 ドンスコが白い髭をなでていた。

 そして僕の右腕を見ていた。


「そなたの右腕は普通ではないなぁあ、人間ではないぞ」


「はいこの右腕の事を僕は科学の右腕と呼び、現実世界でこちらの物質である魔力と右腕を融合させました」


「ふむ、異世界人あったか、このままその右腕を放っておくと死ぬぞ」


 僕はきょとんとなり、マカ姫とメイル姫は真っ青な顔になっている。


「それがしは見ての通りヴァンパイアになって300年くらいが経つ、そのくらい生きると見えないものが見えるようになる。お主の人間としての生気と魔力としての生気がぶつかりあっている。その袖をまくって見なさい」



 僕は訳が分からず、右腕の袖をまくると。

 そこには信じられないものが現れていた。


 ごつごつとした文様が浮かび上がり、

 ぐねぐねと縄のように締め付けられている後がある。


「う、嘘よ」

「こ、これは」


 マカ姫とメイル姫が真っ青になり、ドルゴンはぺろぺろと僕の右腕を舐めてくれた。


「まだ初期段階だな、実は昔ある錬金術師が同じ事をした」

「え」


「その錬金術師はこれを克服すると、トロールのいる世界へと新しい素材を求めて旅に出た。それからどうなったかは知らない」


「「そんなバカなことを」」


「いいかマカ姫とメイル姫よ、男にはやらねばならぬ時がある。それが興味であってものう、それがしはある男に教わった。彼も異世界人だったが、どことなくお主と顔が似ておるわい」


 僕は心臓がバクバクしていく中、


「どうやったらこれを克服できるのですか」

「ようは死ぬ事じゃ、死んで戻ってこればいい、ヴァンパイアの秘伝でな」

「やります」

「じゃが戻ってきたらお主は変身ができるようになるじゃろう」

「おおお」


「何を感動しておる、失敗したらオダブツだぞ」

「それでも嬉しいです」


「かっかっか、人間とは面白いなあ、シェイグにドンスコ、あたしには無理だけどね」

「魚人の姉さんには誰もかなわないっすよ」

「それがしにとっては孫のような年齢でもお主ほど謙虚な女性を知らぬよレイガス」


「っとその前に交易の品を見ていただきたく」


「「「お前肝ったますげーな死ぬんだぞ」」」


 3人の族長に肝っ玉がすごいと言われてしまったのであった。


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