第11話 モンスター素材
「ぜはーぜはー」
1時間だ。ウィルソンはスライム1体に苦戦に苦戦した。
「ふう、手こずらせやがって」
ウィルソンは額にバンダナを付けて髪の毛の乱れをなくしていた。
バンダナを付ける事により完全なる不良少年にしか見えない。
それもものすごく弱い不良少年。
「そういう事だ。あまりスライムをなめるなよ」
「分かりました。僕もスライムを倒してみたいです」
「ふん、素人が簡単に倒せると思うな、ヒロスケ殿なら3時間かかるんじゃないか? ヒロスケ殿が殺した山賊達よりも強いんだぞ」
「それは楽しみです」
「さ、さすが、山賊を殺しただけある」
「くくくくくく」
なぜか村長ネンネが僕の後ろで爆笑していた。
この少年はスライムが最強だと疑っていないのだろう、だから僕がスライムに殺されないようにしないとと、色々と配慮してくれているのだ。
僕とウィルソンとネンネの3名が歩いていると。
スライムが2体出てきた。
「ま、まずいぞ、2体も出たら、逃げるが基本だ。ヒロスケ殿逃げるぞ」
「いや、やってみたい」
「バカ言うな死ぬ気か」
「死ぬつもりはない」
「いくら山賊を殺したからといってスライムをなめるな、スライムで泣いている人を俺様は知っている」
「ぷ、くくいく、それってウィルソン君じゃ」
「だ、黙れ村長、いいですか、俺様はスライムハンターを目指しております」
「すごいじゃないですか」
「さすがヒロスケ殿わかってらっしゃる、ぎゃああああああ」
スライムが2体こちらに入ってくる。
ボールのようにバウンドして。
「ウィルソン、少し落ち着け」
「おおおおお、落ち着けられますか、スライムが2体いたら死ぬのですよ」
「ウィルソン、これが強さだ」
「そ、そうなんですね、ヒロスケ殿の強さを見せてください、何時間でも見ています」
「そうだな、強さであり、恥ずかしさだ」
僕はダイヤモンドの剣を右から左になぞる様に切り下げた。
2体のスライムが一瞬で死亡。
そこにスライムの素が出現、先程もスライムの素が出ているので、合計で3個となった。
それを見ていたウィルソンは両膝を地面につけて、両手を地面に何度も叩きつける。
「なぜだあああああ、なぜ、僕はスライムを倒せないんだあああ。倒せたとしても数時間かかるのに、ヒロスケ殿は1秒もかからなかったぞおおおお、どういうことだあああああ」
ウィルソンが泣き叫ぶものだから、スライムの大群がやってくる。
「ぎいいいいやあああああああああああああああああああ」
ウィルソンの悪ガキ少年は悲鳴をあげて、逃げようとするが、村長ネンネによって冷静にキャッチさせられ、動けなくされた。
「あまり暴れない、あとはヒロスケ殿に任せましょう」
「ううううう」
ウィルソン少年は涙を流しながら顔をくしゃくしゃにしている。
彼に足りないものを僕は知っている。
それは。
「武器と防具だウィルソン君、君の木刀ではスライムですら倒せない。そういうことだ、頑張って武器と防具を手に入れることだね」
「は、はい」
立場が逆転しつつも、僕は大群のスライム達と正面から相対していた。
カラフルな色をしているスライムたちは、容赦なくこちらに突っ込んでくる。
まるで暴走列車のミニバージョンだ。
僕は林介とちゃんばらごっこの修行を思い出していた。
だからと言って最強な剣術使いになれるわけではないけど、元々は鉄の剣だったそれは魔法の力と作用してダイヤモンドの剣となっている。
そのダイヤモンドの剣で斬れないものはないと、この時の僕は思っていたのだが、いくらあらゆるものを斬れるとしても、このスライムたちの大群を一度に相手することは難しい。
そこで僕は草花のローブを発動することとした。
発動させるにはイメージが必要だ。
それを発動させる心の状態、戦う! という気持ちが必要。
草色のローブから沢山の花が咲き始める。
次の瞬間、種が吹き飛ぶ。
数100を超えるスライムたちがまるでマシンガンに連射で撃ち抜かれたように、消滅していく。
そして深呼吸を繰り返す。
そこにはスライムたちが落としたと思われるスライムの素が沢山ある。
「す、すげぇえええええ」
まるで新しく頼れる存在を見つけたかのようにこちらを見ているウィルソン。
山賊討伐の時にこの技を見ているものとばかり思っていたが、恐らく種が小さすぎて、見えなかったのだろう。
今回は至近距離だし。
僕はひたすらスライムの素を回収してく、ビール樽1個分くらいはあるであろうとされる。
スライムの素は粘土のようになるので、ビール樽くらいの大きさに融合させごろごろと転がす。
向かう先は村だ。
「やっぱりヒロスケ殿はお強いです。ウィルソンは見習うべきですよ、あまり無意味な行動はとらないようにしましょう」
「は、はぁい、そ、それで、ヒロスケ殿の弟子にしてください」
「え……」
僕は口をパクパクとさせながら、弟子みたいな存在は今までだっていた。
サラリーマン時代の時に後輩が入ってくると、大抵は指導係として僕が抜擢されてきた。
なぜなら同僚たちは僕に押し付けていたのだ。
大抵の後輩達はとても従順なのだが、色々な理由をつけては勝手に辞めていったり、無断欠勤していつの間にかいなくなったりした。
中には真面目に働く人もいるけど、彼等は僕の事を見下していたりしていた。
しかし今目の前にいる少年はまっすぐな、純粋な目でこちらを見ている。
「強くなる事だけが全てではない、それが分かるなら弟子にしよう」
「もちろんです」
ウィルソン少年は希望の光を見つけたかのように、にこにことしている。
これは林介から剣術を学び、それを教えていく必要がありそうだ。
とほほと断れない自分自身の情けさなに悲しくなっていた。
村に戻ったら。そこには農業のまとめ役のネッティーと農夫のリーダーのラングンと10名の村人達が村長の家の入口で待っていた。
そこには一般的な山菜を入れる籠が3個あり、そこには薬草が綺麗に畳まれて収納されている。
さすがは、農家のまとめ役だと思った。
薬草についての知識もあるのだろう、ラングン達が持ってきているのは籠が1個分くらいだ。
そこには見た事もない宝石が積まれている。
この近くに鉱山は確かにある。
僕がこの世界にやってくる扉がその近くにある。
僕とネンネとウィルソンは彼らと合流することになり、1時間の雑談を交わす。
仕事の事は何も語らず。
それぞれのやりたい事などを熱く語りあう時間にした。
それが10名の村人とネッティーとラングンとウィルソンとネンネが仲良くなるきっかけになればいいなと思って。
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