第5話 ボクは彼女の教え子になる
「良いニュースから言いますね。合格おめでとう、ケリー・ハットン。試験の結果、あなたはミスカトニック大学工学部への入学資格を得ました」
機械仕掛けのお嬢様は言う。
「えっ、でも合格発表は明日だ。なぜ、一日早くわかったんです? 本当に合格してるんですか?」
ボクは尋ねた。
「それが悪いニュースの始まりかな。機械仕掛けの私は、かりそめの名前を持っています。亡くなったリディアの娘の名前そのままにリリー・マクファーレンと申します。そして、リリーはミスカトニック大学工学部の教授にして、入試採点用人工知能なのです。だから、私は知っています。あなたは合格。成績優秀につき特待生として入学していただきます。そして…」
「そして?」
歯切れが悪いので何かあるのは確かだ。もっとも彼女はそんなふうに演じているだけなんだろうけど。
「ケリー・ハットン特待生は特別にリリー・マクファーレン教授の研究室、つまりこの屋敷でみっちりと勉学に励んでいただくことになります。工学の基礎から応用的な研究まで。日々の演習もあるわよ。素敵ね」
そう言うとお嬢様、リリー・マクファーレは輝くような笑顔を見せた。
不安になってボクは訊く。
「憧れのキャンパスライフは?」
「なしよ。入学手続きが終わったら、この古めかしい建物のなかで、人工知能ロボットのお
小さな頃から働き詰めのボクは働かなくていいというだけでも大学は天国だと考えていた。だけど、これじゃ、今までと変わらないような…。
「ケリー・ハットン、これはチャンスよ。あなたには私の全てを見せてあげます。服の下に何があるか。そして、そのなかには…。知りたいでしょ?」
リリー・マクファーレンお嬢様の瞳は爛々と輝き、ボクは魂を抜かれていくような気がした。
「はい」
ボクの声がした。無意識に答えていたのだ。ボクと機械仕掛けのお嬢様の日々はもう始まっていた。彼女の一方的なリードで。
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