第6話
圧迫面接はーじまーるよー! ナンチャッテ。
結論として、宰相さんはとても良い人だった。
白熱したおかあさん談義をして、話が今までの恋愛経験のことになるとしどろもどろになって、赤い顔で黙り込んでしまい、宰相さんを心配してこっそり聞き耳をたてていた部下の人たちに乱入され、『宰相様のここがすごい!』とプレゼンされてしまうくらいには良い人だった。
プレゼンされた本人は恥ずか死していた。
わたしとしてはこんんあ良い人がおかあさんを好きになってくれるのに文句などない。
おかあさんさえよければぜひとも結婚してほしいと思った。そのための協力はおしまないつもりだ。
と、宰相さんに伝えた。
感動して泣いちゃった宰相さんに、部下の人たちは宰相さんを囲んで胴上げでも始めそうな盛り上がりだった。まだ告白すらしていないのに。これで結婚したらどうなるんだろう。
しかしこんなに涙もろくて国政とかよくできたなあ。ああいうのってポーカーフェイスが大事なんじゃなかったっけ?
それはともかく。
「宰相さんに相談されて、協力するのはいいんですけど、具体的にはなにをすればいいんですか?」
「そうですね……」
いつもの冒険者ギルドの休憩スペースではなく、今日はてきとうに入ったふつーのカフェで丸メガネとお茶をしている。
宰相さんの恋愛相談をおかあさんの目と鼻の先でするのはさすがにマズイだろう。こういうのはこっそりしたほうがいいのだ、たぶん。
わたしに恋愛経験などないので、なんとなくありそうな丸メガネに相談した。年上だろうし、顔は整ってるほうに入るだろうから経験あるだろ。知らんけど。
「基本はプレゼントや声かけ、でしょうか」
「ふんふん」
丸メガネの言葉を日本語でメモしていく。日本語ならおかあさんに見られても安心だ。
「誕生日に花束ですとか。ミコトさんの誕生日はいつですか?」
「知らないです。花より食料のほうが嬉しくないですか」
こっちの世界の暦をいまだに理解していないわたしなのであった。おかあさんに初めて出会った日なら毎年祝ってもらっている。
「ではお菓子でしょうか。評判の店がありますよ。行ってみませんか?」
その店は宰相さんに教えてやれと思う。
メモには日本で読んだ少女漫画によくあることが羅列している。これはもう宰相さんのがんばりしだいなのでは?
恋愛経験ゼロのドしろーとが応援するより、わたしよりおとなの宰相さんがひとりで頑張ったほうがいいんじゃないかな。「仕事一筋で女性にてんで縁がなくて!!」って部下の人たちに力説されて泣いてたけど。
「プレゼントも声かけも宰相さんががんばるしかなくないですか?」
「それはそうなんですが、やはりミコトさんの協力もあったほうが良いと思いますよ。たとえば宰相様の良いところをさりげなくカミラさんに伝えたりとか」
「ああそういう」
宰相さんのいいところ……いいところ……。
「たゆんたゆんなお腹がやわらかそうでいいクッションになりそうですね?」
「ああ、それは冬は温かそうですね」
なるほど、そういうのでいいのか。
狸によく似た宰相さんの姿を思い出す。毛艶とか、しっぽのもふもふ感のすばらしさを伝えておこう。
「あとは人柄の良さや人望などをアピールするのといいのではないでしょうか」
「ほうほう」
たしかに大勢の部下に慕われていた。王さまからの信頼もあついみたいだし。こ、これはもしやゆーりょーぶっけんというやつでは?
おかあさんが好きになるかどうかは別だけれど、もし宰相さんとおかあさんが結婚すればおかあさんの将来は安泰だ。
万が一わたしの身になにかあってもおかあさんが路頭に迷うことはなくなる。
これはおかあさんの好みも徹底的にリサーチして宰相さんに教えておいたほうがいいのでは? 宰相さんより経済力のある人間はニュシェムじゃ王さましかいなくなっちゃうもんな。
いやいや別に、お金だけがすべてではないけどもネ?
お金はないよりあったほうが良い。生活は豊かであったほうが良いに決まっている。あばら骨のういたおかあさんはもう見たくない。
そうと決まればさっそくおかあさんの好みをこっそりリサーチしようっと。別にわたしはおかあさんのことをよく知ってるけどね! わたしがなにをプレゼントしても「ありがとう~。うれしいわ~」って受け取ってくれるけどね!
「次の作戦会議はいつにしましょうか?」
え、まだ
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