永遠のなくしもの

その想い出というのは

二度と戻れない時間と情景

それは切なく懐かしく

優しいゆえに残酷で


忘れてしまえばいいのにと

他人ひとは言うだろう

そんな過去になど囚われるのは

愚かなことだと


それでも


あのひとはもう此処この世にはいないから

逢えるのはあの想い出の中だけ

だからわたしは

時々、想い出に逢いにいく


忘れられた時に人は

二度目の死を迎えるという

ならば、せめてわたしが生きている間は

わたしと共に、と思う


永遠のなくしもの


戻らないことは

わたしが一番知っている


あの夏の情景は

そっと胸の奥に閉じ込めてある

わたしたちだけの大切なものだから

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