想いびと

まだ少し夜は冷え込んで

一枚上に羽織った上着

ページを繰る手を止めて

頬杖ついて溜息ひとつ

湯呑みのお茶をコクリとひと口


あのひとも今頃

こんな風に何かをする手を止めて

わたしを想いだしていたらいいのに

そんなことを考えながら

チラリと横目で見るケイタイ


着信音がする度にガッカリする

あなたの着信音だけ

別のにしなければ良かった

いつの間にか当たり前になってる電話は

わたしを寂しがり屋にするね


想いびとの口癖を

ひとり真似してみる

余計に寂しくなるのに

いつか一緒に暮らしたいよ、と

そんな言葉を思い出したりして


放り出したケイタイ

あなたからの着信音

しばらく出ないつもりでいたのに

意地っ張りなんてすぐに消えちゃって

コール1つで出た、わたしを笑わないでね

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