胸の穴

想い出ならば持っているのに

何故この胸は寂しがる

贅沢者ぜいたくものめ!と叱ってみても

涙のあざをつけたピエロが

泣き笑いしてお辞儀する


見ればポッカリ胸の穴

いつの間にやら広がって

両手で覆いきれぬほど

途方に暮れた顔をして

ピエロがわたしを見つめてる


わたしがピエロでピエロがわたし

顔を見合わせてのひら合わせて

滑稽こっけいすぎる化粧を落とせば

残るはわたし一人きり

わたしがわたしを見つめてた


想い出ならば持っているのに

こんなに沢山持っているのに

塞ぎきれない胸の穴

おどけたピエロももういない

残ったわたし一人きり


小さくともした灯りの下で

残るわたしが一人きり

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