第12話 AIに囲まれた世界〜更生施設での生活
看護師のCA243から渡されたメモを頼りに透明なエスカレーターで地下に行くとそこは真っ暗な空間だけが広がっていた。
しかし、エスカレーターを降りて、床に一歩、足を置くと少しずつ、ゆっくりと電気がつき光で照らされた食堂が出てきた。
『なるほど、使用しない電力は節電するシステムなんだなぁ。』と関心していると。
食堂に入ろうとするまさに同時に、床からアンドロイドが出て来たのだった。
突然の出来事で床を叩いたり、触ってみたが、特に目立った床ではなく、マットレスを敷いた床であった。
その姿に驚くわけでもなく、無機質に感情もなく『いらっしゃいませ。こちらにどうぞ?』とアンドロイドが案内してくれた。
少し寂しくなった姿をみせたら…『ごめんねぇ?びっくりしたでしょ?』と明るく微笑んでくれた。
『えぇ?はぁ…突然の事で驚きましたよぉ。』と伝えると『アンドロイドって、無機質で思ったでしょ?驚かせたねぇ?新田さん。』と返事が帰って来た。
『えぇ!何で、何ですか?心が読めるんですか?』
『ごめんねぇ?違うわよぉ。心は読めないわぁ?感情がないからねぇ?でもねぇ?情報が全て入るのに10秒程、かかるので、最初の言葉は無機質で素っ気ない挨拶になってしまうのぉ。』と笑顔でボディタッチをしてきた。
『えぇ、もしかして、他のクライアントにもするんですか?』と尋ねると、『そんなわけないよぉ。クライアントの情報が季節や湿度や温度などを分析して接客の仕方は異なるわぁ。』と言われた。
案内された場所は、個室となっており、壁は透明で、机も椅子も透明であった。
『あのぉ、すいませんがここでの食事落ち着かないのですが?』とアンドロイドの接客担当にお伝えすると…
『すいませんでした。どのようなお部屋がよろしいでしょうか?まだ、情報がほとんどないから…』と伝えてきた。
『えぇ?どのような部屋?になるのですか?』と尋ねると…
『木目調や和室や洋風にも変更出来ます。』と返答を受けた。
『よく解らなかったので、適当に木目調で落ち着く感じにと…』と伝えてみた。
すると、一瞬で透明な壁や机や椅子が木目調のシックな素材に変わり、ヒノキの素敵な香りと森林が目の前に現れたのであった。
突然の事で、驚いていると…
『これで大丈夫ですか?』と質問され、『はい』と返答すると、メニューを持ってこちらにやって来た。
『あのぉ、トイレに行きたいのですが?』とお伝えすると『この部屋を出て右です。』と返答を受けた。
部屋を出て振り向くと最初に案内された、透明な壁と机と椅子がある部屋に変わっていた。
あまりにも、不思議な感覚があり、再度、部屋に入ると先程の森林に囲まれた木目調の部屋と椅子のある部屋になっていた。
『あぁ、そうだぁ。トイレに行こう』と思ったが、アンドロイド脳移植ドラッグが抜けていないので排泄がない事に気付き部屋に戻り席に着いた。
席に着くと同時にメニューを持ってきた。
『何が食べたいですか?ここはプラチナシティーですので、銀河系にあるあらゆる食材など豊富に揃えております。』
『えぇ、そう何ですか?オススメは何ですか?』
『そうねぇ。オススメは冥王星のキングスフイッシュの刺身定食かしら?』
『えぇ?冥王星のキングスフイッシュって?』
『そう言えば、センターシティーで長くいたから、見ていないわねぇ?かれこれ、50年の歳月を過ごしていましたからねぇ?』
『えぇ?そんなに居たんですか?という事?私の年齢はいくつになるんですか?』
『アンドロイド脳移植ドラッグを使用したから、人間の身体に元に戻ったら48歳だけど。その間に50年の歳月は経過しているわぁ。本来なら、98年の年月は経過していますけど。あまりに、地球に住み過ぎたからしょうがないわねぇ?』
『なるほど。でぇ、冥王星のキングスフイッシュはどんな形をしているのですか?』
『これよぉ。頭が人間で身体が引き締まった牛で人魚のような姿をしているわぁ?これがその写真よぉ。』
『えぇ、こんなに綺麗な顔をしているのに食べるんですか?』
『まぁ、見た目は人間の顔ですから、流石に同じ顔を持つ姿を見たら食べれなくなるけど…観光客には人気があるわぁ。特に土星人やM296星からは人気があるわぁ。』
『えぇ、観光客が土星人?って。』
『あぁ、そうか知らなかったのかぁ。今は、土星人とM296星と水星人にはプラチナ星ネオ東京プラチナシティーは人気があるのよぉ。地球はネオ東京センターシティがあるでしょ?まだ、プラチナ星の管理下にあるし、まだ地球人は他の星からの移住者を受け入れるのは先の話になるなぁ。』
『あぁ、そういえば、地球はどうなりました?ネオ東京センターシティは?』
『あぁ、そうだったわねぇ?ネオ東京センターシティーで一攫千金を狙ったけど…モアナウイルスで右手を壊死してから、プラチナシティーの売人からアンドロイド脳腫瘍移植ドラッグにはまってアンドロイド脳移植依存症になったんだったねぇ?』
『そうでしたねぇ。すっかり、忘れていました。』
『その後は、地球はネオ東京シティーはモアナウイルスで壊滅的な打撃を受けて、その後は宇宙を彷徨っているわぁ。地球は復興の為に頑張っているみたいですけど…』
『えぇ、モアナウイルスが宇宙を彷徨って被害がでないのですか?大丈夫なのですか?』
『まぁ、モアナウイルスも宇宙では燃やすものがないから消滅するから大丈夫じゃないかなぁ?』
『知らなかったなぁ。』
『えぇ、そうなんですか?あぁ、なるほど…今日きたばかりですか?』
『あのぅ、実はアンドロイド脳移植依存症が身体の上半身まで抜けていなくて、明日以降に排泄機能が戻るという事でして、カプセルタイプの食事になりますが?よろしいですか?』
『まぁ、よく解らないけど…久しぶりに口で食事が食べられるなら何でも良いよぉ?』
『そうですか?なら、これを付けた方がより、食事に感じますのでどうぞ?』
『えぇ、これは?』
『バーチャルリアリティメガネです。試しにこれを飲んでみて下さい。』
『小さなカプセルを渡され口に運ぶと同時にコップに入ったワインが出てきた。味も匂いも懐かしいワインであった。』
『どうですか?ワインを飲んでいる気分になりましたか?』
『すごいよぉ。ワインの味だよぉ。それにアルコールも感じたよぉ。』
『あぁ、良かった。もちろん、アルコールは一切、入ってないけど脳が勝手にアルコールの味を思い出すんです。外したら酔っぱらっても素面に戻りますよぉ。』
『へぇ、そうなんだ?もしかして、ここには酒は置いていないのぉ?』
『そうねぇ?禁酒法が施行されてからは、料理にお酒を使うぐらいかなぁ。それにかなり厳しい制限があるから難しいかなぁ。』
『へぇ、そうなんだ?』
『ところでメニューはあるかなぁ?』
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