#08-08: アタシの代わりに泣いてくれ

 涙が止まらない。私はコア連結室から艦橋ブリッジへと向かっていた。ヴェーラ麾下きかの艦隊は全滅した。戦闘は終わり、私のできることはもうなくなっていた。


 艦橋ブリッジではダウェル艦長が敬礼と共に出迎えてくれた。私はそれに応じる余裕すらなく、自分の席に座り込み、嗚咽した。しばらくそうしていると、艦橋ブリッジの前を赤い戦闘機が横切った。ここにいるはずのない、機体だった。


『ソリストはいるかい?』

「は、はい、メラルティン大佐」

『見てたよ』


 ヴェーラとの一部始終を。、ヴェーラが微笑みとともに振った手は、もしかしてメラルティン大佐に向けられたものだったのかもしれない。


『ご苦労だったな。あいつは、アタシの妹分みたいなヤツでね。……すごく優しい子だったんだ。でも……』


 メラルティン大佐の姿がメインスクリーンに映った。ヘルメットを外した大佐の、その紺色の瞳は間違いなく潤んでいた。


『アタシとの約束を反故ほごにしやがって!』


 クソッと、大佐は吐き捨てた。やり場のない怒りと喪失感と。私はそれを受け止めた。押し潰されまいと、耐えた。


『辛い仕事をさせてしまった。すまないが、追加で一つ頼みがある』

「は、はい……」

『アタシの代わりに、あいつのために泣いてやってくれ。女帝が泣いてもサマにならない、だろ?』

「いえ」


 私は首を振る。


「ヴェーラは、最後にカティを頼むって言いのこしました――」

『ははは……。あいつめ……』


 大佐は鼻をすすり、そして一方的に通信を切った。だけど私には大佐の叫びが聞こえていた。空の向こうで、大佐は慟哭していた。


「でも、私も泣きます。アルマと二人で」


 私のこの声は、大佐にはきっと届く。


 だから。


 今度会ったら、三人で泣きましょう。


 私は涙を拭いた。でも、何も言えなかった。

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セルフィッシュ・スタンド~剣となりて、盾となりて~ 一式鍵 @estzet

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