#08-07: それがあなたの幸せだとしても

 セイレーンEM-AZが燃えていた。艦首から艦尾までを貫かれて、爆発を繰り返していた。


 気付けば、私の意識は白い空間にあった。


 ログを見ると「論理戦闘ロジカルコンバットモード」と表示されていた。


「なんだ、これ……」


 いつの間にか隣に立っていたアルマが、呆然と自分の身体を見下ろしている。


「ヴェーラの、内側……?」

「そうさ」


 ヴェーラがふわりと姿を見せた。イザベラではない、白金の髪プラチナブロンドの、ヴェーラ・グリエールだった。私の憧れた、ヴェーラその人だった。ヴェーラは私たちからふと視線を外し、少し遠くに手を振って、微笑んだ。――決して忘れたくないほど眩しい、優しい微笑みだった。


「さぁ、わたしを撃つんだ」

「そんなこと……!」


 できるわけがない。私は首を振る。しかし、そんな私を何かの力が動かしていた。


「セイレネス発動アトラクト・モード・白銀の女神レウコテア


 え? え? 何?


 私の目の前に黒い球体が姿を見せる。それは膨れ上がり、収束し、そして、ヴェーラを貫いた。


「ヴェ、ヴェーラ!?」

「よくやったね」


 駆け寄った私たちを抱くようにして、ヴェーラは膝をついた。


「幕切れというのは、こんなにもあっさりとしたものなんだね……」

「ヴェーラ! 逝かないで!」

「わたしはね、ベッキーに会いに行くだけだよ」


 私とアルマに抱かれたヴェーラは、ゆっくりと目を閉じて、呟いた。


「ひとつだけ、頼みがある」

「何、でしょうか……?」

「カティをよろしく」


 そう言って、ヴェーラの姿が消えた。


 世界の照明が、落ちた。

 

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