百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.8-126 悪役令嬢な王女宮筆頭侍女の暗躍 scene.2
Act.8-126 悪役令嬢な王女宮筆頭侍女の暗躍 scene.2
<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>
王女宮筆頭侍女の執務室に転移すると、まずはオルゲルト執事長に留守を任せて統括侍女の執務室に向かった。
「お時間よろしいでしょうか? 統括侍女様」
「どうぞお入りください、王女宮筆頭侍女殿」
執務室の扉が閉まると、統括侍女のノクトは客人用の席に案内して紅茶を用意してくれた。
「本日はどのようなご用件でございますか? ローザ様」
「有給の申請をさせて頂きたいと思いまして。ボクではなく、ファンデッド子爵令嬢の、ですが」
「ファンデッド子爵令嬢というと、王子宮の侍女ですね。彼女がどうかしたのですか?」
ボクはファンデッド子爵の不祥事と、その対策としてボクが考えていることをノクトに伝えた。
「つまり、ファンデッド子爵の悪評を払拭するために子爵の失脚と円滑な次期当主への継承を美談として仕立てたいと。そのために王太后様のお力をお借りしたいということですか。……既に天上の薔薇聖女神教団とガネット商会には話を通しているのですね。畏まりました、私から離宮筆頭侍女殿にお伝えしておきます」
「よろしくお願いします」
「……それと、有給の件ですが、ファンデッド子爵令嬢のものを使うのは申し訳ないという話でしたね。ローザ様の有給はありませんが、アネモネとして働いてくださった分の有給がありますので、そちらを使わせて頂きたいと思います。それでもよろしいでしょうか?」
「……それ、アリなのですか?」
「統括侍女である私が認めるのです。何か問題がありますか?」
……まあ、無いけどねぇ。あまりにも不公平な話だとは思うけどなぁ。
「しかし、いくら他人の恋愛に首を突っ込むのが趣味とはいえ、見ず知らずの侍女のためにここまでお力を貸すとは思いもよりませんでした」
「……勿論、ボクも打算があるからこそ協力を申し出たのですよ。今回はレイン先輩が大切な後輩を助けたいとボクに頭を下げたのが始まりでした。なので、その分の対価はレイン先輩に要求しておいたので大丈夫です。……この後アーネスト宰相閣下のところで協力を依頼してから、シモン王国宮廷近衛騎士団騎士団長のところにお伺いして合コンのメンバーを募ってもらおうと思っています」
「なるほど、王子級筆頭侍女に何を要求したのかと不安でしたが、そういうことでしたか。……そのお見合いの話、第一王子殿下はご存知なのですか?」
「勿論、お伝えしていません。彼には取り返しのつかないところに至る直前に事情を説明して差し上げようと思っています。……これまでレイン先輩を遠回しに束縛してきたのですからね。任務のためとはいえ、彼女の本意を踏み躙ってきたのは事実ですから。こういう、責任を取らない中途半端な関係を続けているのは、ボクも宜しくないと思っているのですよ」
「……ローザ様のお考えはよく分かります。こういう時、普通はどうしても権威のある方に歩み寄って一侍女に目を向けることは無いものですが、貴女は本当によく周りを見て、その人達の幸せを願っているのだと分かります。やり方は強引ですが」
「しかし、ラインヴェルド陛下といい、ヴェモンハルト殿下といい、女心が分かっていない方が王族には多いですよねぇ。……ヘンリー殿下とヴァン殿下には是非ともあの二人の性質を継承しないで頂きたいものです」
「……その点はローザ様の影響を受けたのでしょう。貴女はしっかりと割り切って接しようとしていますが、貴女を愛する大勢の方々が『月紫様だけを一途に愛する』貴女を許容するとはとても思えない。一番になれないと分かっても二番三番を狙ってくる筈です。きっと貴女もいつか現実を突きつけられることになるでしょう。……誰かを幸せにするということが、救うということがどれほど人を変えてしまうか、ローザ様は自分の行いを軽んじておられるようですね。誠実とは確かに素晴らしいお考えかもしれませんが、それでは救われない人もいるのです。……貴女はもう少し自分の価値を理解した方がいいですし、自分に甘くなった方がいいと思います。自分に厳格ということは美徳かもしれませんが、それで悲しむ人がいるのなら何のための厳格さか分からないものですよ」
……ボクはハーレムみたいなものを誠実だとは思わないから、少なくともボクは絶対に月紫さん一筋だって公言しているし、家族には家族愛を、友人には友人への愛を、従魔へは従魔への愛を、仲間には仲間への愛を……って区別しているつもりなんだけどなぁ。
……ノクトの言いたいことは分かるけど、ボクは絶対にこのスタイルを変えるつもりはないし、これからも誠実に、節度を守ってこの関係を維持していくつもりだ。だから、そんなことは起きないと思うけどねぇ……ボクが中心となるハーレムを黙認するなんてさ。
全員に平等に愛するなんてできない。一番はやっぱり一番だから……月紫さんと同じだけど愛して欲しいなんて願いを叶えることはボクにはできないんだから、そんなもの願わない方がお互い傷つかなくていい。
友達から恋人になろうと一歩踏み出せばもう二度と前の関係にはなれないように。みんなには絶対に後悔してほしくないから。
◆
統括侍女様の執務室を後にした後、アーネストに事情を説明して協力を依頼し、その後シモンのところに向かった。
「……なるほど、事情は分かりました。王子宮筆頭侍女様の婚約者を探すためのお見合いですね。騎士団で希望者を募ってみたいと思います」
アーネストには文官の方で希望者を募ってもらえるようにお願いしたから、これで王城で出会える者達の中の候補は全て揃えることができたと思う。
とりあえずはやることも終わったので王女宮筆頭侍女の執務室に戻った。
午後の神学の授業が終わったプリムラを出迎え、プリムラの中庭の散策に付き合ってシェルロッタと二人でほっこりした。
しかし、プリムラとシェルロッタの取り合わせは最強だねぇ。まるで姉妹みたいだ。
やっぱり、王女宮筆頭侍女はシェルロッタに譲らないといけないなぁ、と心に誓った。
……さて、そんなホッコリとした王女宮で職務を終えた後は……『
……やさぐれモードです。プリムラの癒しがもっと欲しい。
『瑠璃色の
とはいえ、カトレヤとカルミアには【ブライトネス王家の裏の剣】であることは伏せているので、血生臭い話は全部カットして、海を隔てた隣の大陸を探索している時に偶然出会ったということにしたけど。うん、別に間違いではないよねぇ。
「海の向こう側……ローザは本当に凄いわねぇ。そんな遠くの人達とも繋がりを持っているなんて」
「お姉様、凄いわ!」
その後、ペドレリーア大陸の土産話をいくつかした。
遠い海の向こう側の国の話、二人とも目を輝かせていたねぇ。まあ、海を隔てているってだけで実の所はこっちの大陸と似たり寄ったりなんだけど。
「そういえば、ローザが王女宮の侍女になってから一週間とちょっと経ったわよね? 王女宮での仕事はどうかしら? 友達はできた?」
「はい、お母様。姫殿下からも少しずつ信頼されるようになり、友人も沢山できました」
「それは良かったわ。もし良かったら、今度屋敷に連れてきてくれないかしら?」
「そうですね。今度休みが重なった時か……難しければ、皆様の王女宮での行儀見習いが終わったところでお呼びしたいと思いますわ。お母様にも友人をご紹介したいですし」
「わ、私も、カルミアもお姉様のお友達と会ってみたいわ!」
「勿論、カルミアにも紹介するよ。みんな優しいお姉さん達だからきっと仲良くなれるよ」
嬉しそうなカルミアに思わず頬を綻ばせるボク。……だけど、すぐに鼻血をだらりと垂らして色々な意味でやばい表情をしているアクアを見て正気に戻った。
……絶対に、アクアにカルミアの着替え担当はさせないよ!
カトレヤとカルミアが食事を終えて部屋に戻ったところから話は本場……さて、色々としておかない話があるねぇ。
まずは……。
「ジーノ執事長。アメジスタさん、ドミティアさん、リヒャルダさん、ベラトリックスさん、サトゥルニナさん、アスカリッドさんの強化の進捗はどんな感じですか?」
「皆様、合格ラインに到達致しました。こちらでお教えすることはもうございません」
『……本当に辛い日々だったわ。それで、これから私はどうすればいいのかしら?』
「そうだねぇ……ドミティアさん、リヒャルダさん、ベラトリックスさん、サトゥルニナさんはエヴァンジェリンさんと共に部隊を組んでもらいたい。基本的にはメイドとして働いてもらう必要はないけど、ラピスラズリ公爵家の使用人として働いてもらってもいいし、冒険者登録して活動をしてもいいからねぇ。その辺りは自由にしてくれていいよ。アメジスタさんとアスカリッドさんはメイド研修が終わった今は食客扱いということになるから好きにしていいよ? それこそ、冒険者でも、ビオラの警備部門に就職しても。アスカリッドさんはブライトネス王国の見学希望だったねぇ? ボクが案内しよっか?」
「ローザ、お主は忙しいのじゃろ? 大丈夫じゃ、カリエンテさんに案内してもらえることになったのじゃ!」
「……カリエンテさんに?」
『な、なんじゃ! 我が案内して悪いことでもあるのか!?』
「いや、そんなキャラじゃないと思っていてねぇ。……というか、いつ仲良くなったの?」
『先輩としてアスカリッドに色々と教えてやったのじゃ! それに、我だってこの国に随分と住んでいる。案内くらい簡単にできるのじゃ!!』
なるほどねぇ……あれほど嫌がっていたメイドの仕事なのに、なんだかんだで気に入ったってことかな? しかし、豪快で孤高で、ちょっと他種族を弱者と見下している性格だと思っていたけど、案内面倒見のいいところがあったんだねぇ、カリエンテ。
……まさか、我のことを信用していないのか!? と衝撃的な事実を知ったような表情で固まるカリエンテ……ごめんねぇ、どうも昔のイメージが抜けきらなくて。
「それから、アスカリッドさんの装備を作っておいた方がいいから後でボクの部屋に来てもらえないかな? それと、レナードさんもねぇ」
「装備って『終焉銃』だけじゃいけないのか?」
「その『終焉銃』の解析もしてみたいし、色々と思いついていることがあるからねぇ。それと、レナードさんにもラピスラズリ公爵家の使用人修行をしてもらいたいと思っている。ジーノさん、頼めるかな?」
「――おい、俺の意思確認は!?」
「承知致しました」
「拒否権ないのかよ!?」
実際、レナードもラピスラズリ公爵家の使用人の技を身につければ格段に強くなるから。弱点もカバーされてバランスが良くなるだろうし、キツイと思うけど是非頑張ってもらいたいものだねぇ。
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