百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.8-24 誕生日会の二次会と、ドリームチームトーナメントと……。 scene.6 丙
Act.8-24 誕生日会の二次会と、ドリームチームトーナメントと……。 scene.6 丙
<三人称全知視点>
ヴェモンハルトとスザンナを残し、それぞれ行動を開始したヴェモンハルトパーティのメンバーだが、その内のリサーナとヴィクトスは森の中腹ほどで居合せ、そのまま二人で敵軍の拠点を目指すことになった。
「……三人ですね。ヘルムートさん、ラミリアさん、フォッサスさんのようです」
「ありがとうございます。……ここを越えれば、敵本陣に攻め込めそうですね。厄介な紅羽さんもいらっしゃらないようですし」
最初はクマの縫い包みのリゼリゼを使って腹話術で会話する無表情の少女をどう扱えばいいかと思案していたヴィクトスだが、慣れというものは恐ろしいもので二人で合流して行動して暫くした現在ではその違和感もほとんど感じなくなり、自然な会話ができるようになっている。
「
黒い光条が放たれ、ヴィクトスとリゼリゼを抱えるリサーナに殺到した。
「
ヴィクトスは杖先を岩に向け、鋼鉄の壁を作り上げ、放たれた光条を防ぐ。
この黒い光条はラミリアが放った魔法で、命中した場所を石化させる毒属性と土属性の複合魔法だった。もし仮に命中していれば、最悪の場合は石化して即敗北、当たりどころが良くてもその後の戦闘に支障をきたしていただろう。
「
武装闘気を纏ったリゼリゼが空中を滑るように森に隠れたフォッサスに襲い掛かる。
「
『Eternal Fairytale On-line』の吟遊詩人の特技から抽出したという音属性の魔法で音をククリナイフに纏わせ、武装闘気を纏わせてリゼリゼの爪を受け止めた。
音魔法によって付与されていた音――つまり衝撃が一気に解放され、リゼリゼを吹き飛ばす。
「……ッ!
「……っ、分身。いや、分身に錯覚するほどの速度かッ! ならば、その分身を上回る速度で攻撃すればいいだけだ!」
神速闘気を纏い、ククリナイフの二刀流でリゼリゼの分身全てに斬撃を浴びせ掛けんとするフォッサスと高速回転を続け、同時に攻撃を仕掛けようとするリゼリゼ――その戦いはフォッサスが本体のリゼリゼに「
ボロボロになり、ポリゴンと化して消滅していくリゼリゼ。リサーナはそんなリゼリゼの元にポーカーフェイスが崩れるほどの悲しみに満ちた表情で駆け寄った。
そして、フォッサスがいるにも拘らずリゼリゼを抱き抱える。そのあまりにも悲愴感に満ちた光景に敵である筈のフォッサスも攻撃の手を止めてしまった。
「…………許さない。よくも、リゼリゼを」
リサーナの周りを無数の幽霊が渦巻く。リゼリゼの足元に青白い魔法陣が展開され、リゼリゼが消えゆく中、リサーナはポリゴンが僅かに生じるほど拳を強く握るとフォッサスを睨め付けた。
腹話術ではなく自らの口で呪詛を呟くように、呪文を紡ぐ。その瞬間――フォッサスは自らが重大なミスを犯したことを理解した。
リサーナの目の前でリザリザを壊すなどせず、リザリザを無視して先にリサーナを撃破すれば良かったのだ。そうすれば、このような状況にはならなかった筈だ。
「
リサーナの魂魄魔法とは幽霊を憑依させる降霊術とは根本的に異なる。魔力を擬似魂魄――つまり、幽霊を作り出すという魔法なのだ。
光魔法以上に希少で使い方によっては闇魔法以上に禁忌に触れるこの魔法を、これまでリサーナはリゼリゼに作り出した低級霊を憑依させる程度の使い方でしか行使してこなかった。
しかし、もし本気で魂魄を生み出す魔法を行使すれば、一体どうなるか。
『ゴゥォォォォォォ』
実体がなく、物質でもない魂魄エネルギーの奔流――その一撃を浴びたフォッサスは思いっきり吹き飛ばされた。
武装闘気で木に当たったダメージは無効化されたが、その瞬間には無数の青白い腕がフォッサスを掴んでいた。
「
そして、無数の幽霊が燃え上がり、フォッサスを焼き尽くしていく。
青白い灼熱に包まれてフォッサスは消滅した。
「
ヴィクトスは杖先を上空に向け、金色に輝く輪を生み出すと、そこから無数の雷撃の槍を降らせる。
その攻撃範囲にはヘルムートとラミリアがどちらも含まれていた。
「
咄嗟に焔の幕のような壁を幾重にも上空に無数に展開し、降り注ぐ雷槍から守るヘルムート。
「
火魔法のベールで雷槍から守られたラミリアは猛毒を蛇状に変化させてヴィクトスへと放つ。
「
月光のような輝きを放つ防御壁を展開するオリジナル月属性魔法を発動し、ヴィクトスは蛇型の猛毒から身を守った。
ヴィクトスの持つ独創級の『九宝珠の戦杖』に組み込まれた『
この月魔法も『
「
その月属性に変換された魔力を今度は攻撃に転じさせ、月光のような輝きを放つ槍を無数に展開してヘルムートとラミリアへと放つ。
「
更にリサーナが魂魄魔法を発動し、無数の青白い腕を地面から伸ばした。
既に猛烈な腕力で足を拘束され、ヘルムートとラミリアは回避行動を取れなくなる。更に青白い手は二人を拘束しようと上へ上へと伸びてくるが……。
「咬み殺せッ! 【喰蛇環】」
完全に拘束される前に、ラミリアは独創級の蛇腹剣『
「
「
焔の幕が展開され、月光のような輝きを放つ槍から二人が身を守る中、リサーナとヴィクトスへと放たれた回転刃は吹き荒れる幽霊の壁に阻まれて撃墜される。
両者の攻撃がそれぞれの防壁で阻まれる結果となったが、唯一防壁に阻まれなかった幽霊の手はその後もヘルムートとラミリアを束縛していき、遂には二人が一ミリたりとも武器を動かせないほどキツく束縛した。
「
そして、吹き上がった無数の幽霊が一瞬にして燃え上がり、ヘルムートとラミリアを焼き尽くしていく。
勝敗は決した……そうリサーナとヴィクトスが確信して戦場を去ろうとした、その時――。
「――ッ!
月光のような輝きを放つ防御壁を展開し、ヴィクトスは間一髪のところで自分の命を狙った斬撃から身を守ることに成功した。
「……どうして、
リゼリゼの仇を討ち、荒ぶっていた感情を落ち着けていたリサーナも思わず声を荒げてしまうほど、それはあり得ない状況だった。
五体満足で爆発に巻き込まれたにも拘らず一切の傷を負っている様子のない、青龍偃月刀にも匹敵する巨大な太刀を構えたヘルムートがそこに居た。
◆
「いや、間一髪だった。俺も危うくラミリアと一緒に焼かれて負けるかと思ったぜ。……ネタバラシをすると、これは俺の『竜王の偃月刀』に込められた聖属性魔法を自分の身体に纏わせた結果だ。……しかし、聖魔法に幽霊を浄化する力があったとはな。驚きだぜ」
これまでリサーナは光属性系統の使い手と戦った経験がない。聖属性、神聖属性はつい最近その存在が発見されたもので、光属性は希少属性だからなかなか手合わせする機会に恵まれなかったのだ。
リサーナは光魔法には魔物や怨霊を浄化する力があるという話を聞いたことがある。しかし、それは闇系統に対して相性がいいからという理由だと思っていた。
魂魄魔法の幽霊を浄化できるとすれば、ローザが保有する鬼斬の技の霊力――それくらいしかないと思っていたが、その考えが誤りだったとヘルムートは証明してみせた。
「聖魔法を纏った今の俺にリサーナ殿の攻撃は効かないぜ。さて、甚振るのは趣味じゃねぇんだ! 一発ずつで仕留めさせてもらうぜ!」
『竜王の偃月刀』に聖なる光を纏わせ、地を蹴って加速するヘルムート――その狙いは無防備なリサーナだ。
「――
「――
咄嗟にヴィクトスは月光のような輝きを放つ防御壁を展開し、リサーナの身を守ろうとするが『竜王の偃月刀』から猛烈な音の衝撃波が放たれ、一瞬にして防御壁が吹き飛ばされた。
フォッサスのものと同じ、現在獣人族の魔法受容者達の中で最も使用されている音属性の魔法の効果だ。
音の衝撃波で広範囲を攻撃する「
その攻撃に至近距離で巻き込まれたリサーナは防御壁のおかげで威力に見合うほどの大きな外傷を負わなかったものの、崩落に巻き込まれてクレーターの中に落下した。
「――ッ!
うまく受け身を取って落下の衝撃を最小限に留めたリサーナは幽霊を固めて剣を作り上げると武装闘気を纏わせる。
ただの霊ならば浄化されてしまうだろうが、武装闘気を纏えば武装闘気が打ち砕かれさえしなければ浄化されない。魂魄魔法のみが攻撃手段のリサーナは遠距離攻撃が封じられた今、近距離の武器戦に賭けるしか無かった。
「
『竜王の偃月刀』に音を纏わせたフォッサスがリサーナに迫る。
膂力ではリサーナはフォッサスに大きく劣る上に、音の衝撃まで加算されればリサーナに勝ち目はない。
一撃一撃が致命傷になりかねない攻撃を紙一重で躱しながら、リサーナはフォッサスが隙を見せる瞬間を待つ。
「
その間、ヴィクトスは何もしていなかった訳ではない。クレーターの外から結晶魔法で無数の
この闇の霧には特殊効果は何一つない。ただ、視界を奪う黒い霧を発生させるだけの魔法だ。
完璧な狙いで放たれた
しかし、それで十分――この時、フォッサスの注意はヴィクトスの
その結果、リサーナはフォッサスの注意を外れる。
ノーマークとなったリサーナはフォッサスにうまく近くと、真横から斬りかかった。
武装闘気を纏った剣は聖なる魔法の防御を容易に引き裂き、後は武装闘気の耐久性の勝負となる。
「それが狙いかッ!」
『竜王の偃月刀』で攻撃しようにも近距離の間合いのためフォッサスには『竜王の偃月刀』を使って攻撃ができない。
ならばと、武装闘気を纏った腕で直接攻撃を仕掛けようとするが、それより先に黒い霧が晴れ、リサーナの剣に聖なる光が宿った。
「聖装纏武」
聖属性魔法の一つ――聖なる魔力を纏わせる付与魔法が発動したのだ。
聖なる魔法の加護を得た剣はフォッサスの武装闘気の防御を容易く打ち砕き、頸椎を切り裂く。
フォッサスの頭がポトンと落ち、断面から無数のポリゴンが溢れ、やがてフォッサスの身体は戦場から消え去った。
フォッサス達を撃破したリサーナとヴィクトスはそのままイフィスの待つ敵軍の拠点を目指して森を突き進む。
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