百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.8-22 誕生日会の二次会と、ドリームチームトーナメントと……。 scene.6 甲
Act.8-22 誕生日会の二次会と、ドリームチームトーナメントと……。 scene.6 甲
<三人称全知視点>
獣王イフィス率いるパーティは獣人族の族長でほとんどのメンバーが構成されている。
獣人族一の知将で『ブチギレウサギ』という不名誉な渾名が定着しつつある獣王メアレイズですら匙を折って投げ捨てるほどの纏まりのないパーティだ。
そのため、ゴリオーラ、ウルフェス、ヴォドール、ギュトー、バトーウはイフィスの指示を聞くこともなくそのまま我先にと敵パーティの本拠地を目指して単独行動を始めてしまった。
その場に残ったのはイフィスを除くと残ったメンバーは獅子人族の長フォッサス、虎人族の長ヘルムート、蛇人族の長ラミリア、紅羽の四人。
この四人の族長達はいずれも獣王決定戦の決勝で協力してネメシアと戦った者達だ。
当時はヘルムートが鎖国急進派、フォッサス、イフィスが中立派、ラミリアが鎖国穏健派に属していたが、獅子人族、獅子人族、猫人族の三族は豹人族なども含まれる猫科種族に分類され、種族間では密接な交流がなされており、これまで交流こそ少なかったものの、穏健派のラミリアと中立派のイフィスの考えには近いものがあった。
そのため、あの獣王決定戦の決勝以降、四人を中心とする四種族はより深い交流を行うようになり、フォッサスを覗いた三人の族長による女子会も頻繁に開かれている。
『それで、私達はこれからどうしますか? 一部のパーティは独断で動き始めてしまいましたが、本来はパーティのリーダーの指示に従って行動するべきだとは思いますわ。私は、今大会ではイフィス様の指揮下に入り、イフィス様の指示に従って戦うつもりです。どうぞ、何なりとお申し付けくださいませ』
ゴリオーラ達血の気の多い面々を言葉の裏に毒を塗ってさりげなくディスった紅羽に「礼儀正しくて淑女然とした優しい精霊さんだと思ったけど、強かな精霊さんだな」と思う一同。
「そうですわね。……今回の相手は魔法使いが多いと聞いているわ」
『より正確に言えば、【
この五年の間に、メリダはブライトネス王国を去った。
ヴェモンハルトとスザンナ、ホネスト、ミーフィリア、そしてレジーナが立ち会ったその場で正式に宮廷魔法師団長解任の勅令がラインヴェルドによって下されたのだ。
『ふっ、この私がここまで尽くしてやったというのに、必要が無くなればお払い箱か。……私を解任したこと、いずれ後悔することになるぞッ!!』
そうメリダは捨て台詞を吐き、謁見の間から出ていった。その後、荷物を纏めたメリダがブライトネス王国を出国したことが確認されている。
メリダは確かに個人としては優秀な魔法師だった。
しかし、魔法省を軽んじ、魔法省発の技術を頑なに拒否する方針を取り続けたことで本来手を取り合うべき魔法省と宮廷魔法師団の関係は悪化の一途を辿った。
確かに、中にはメリダを慕う宮廷魔法師もいる……が、ほとんどの宮廷魔法師がなど過酷な場所への遠征や過酷極まる訓練メニューを強制的にやらせようとする苛烈極まりない方針に耐えきれず、宮廷魔法師を辞める者が急増した。
メリダはそんな彼らを軟弱者と判断し、見向きもしなかったが、彼女の行いが多くの未来ある宮廷魔法師の芽を摘み取ったことは紛うことなき事実だ。
メリダの物差しでは確かに軟弱者だったかもしれない。しかし、それはメリダの物差しでの話だ。
メリダの師匠レジーナも「魔法使いも最後は体力勝負だからね。柔じゃやってられないよ」と奇しくもメリダと似たような見解だが、メリダのそれはレジーナの理論を更に苛烈にしたようなものである。
もし、仮に類い稀な魔法の才能を持つ一方で生まれつき身体が弱く体力のない魔法師の卵を育てるということになった時、レジーナは(それ以前に弟子入りを断りそうではあるが)長所である魔法の才能を活かせる指導方法を模索するだろうが、メリダは決してそれをしない。
メリダは確かに類い稀な魔法の才能を持った天才だった。個人の魔法師としてここまでの才能を持つ者はなかなかいないものだ。
しかし、指導者としては最悪だった。天才であるが故に、他人が何故できないのか分からない。自分と同じ修行方法であれば強くなれる筈なのに、何故強くなれないのかと憤り、軟弱者のレッテルを貼って居場所を無くす。
メリダはメリダの物差しでしか物事を判断しない。
その傍若無人な性格を見逃して有り余るほどの価値がかつてのメリダにあったからこそ、見逃されていたのだ。
しかし、今はたった一人の魔法の天才ではなく、新時代の魔法技術を柔軟に受け入れ、使いこなすことができる安定した戦力が重宝される時代――協調性のない、ブライトネス王国の魔法技術の発展を邪魔する癌のようなメリダは、魔法省だけでなく、王国の実戦魔法師の最高峰の座を宮廷魔導騎士団に奪われ、斜陽になった宮廷魔法師団の内部からも疎まれる存在となった。
孤立無援となったメリダが宮廷魔法師団長から解任されることは当然の流れだった。
この追放をレジーナは勝手に押しかけて弟子になったメリダが勝手にレジーナを幻滅して見切りをつけて宮廷魔法師就職の推薦状を片手にブライトネス王国を目指した時点で予言していた。
レジーナは「あんな唯我独尊の横暴がよくこれだけ許されてきたね」と驚いていたが、メリダが宮廷魔法師団の団長で居続けられたのはレジーナの推薦というのも大きく影響していたのだろう。彼女の顔を潰す訳にはいかない――その最後の防波堤が崩され、メリダは全ての後ろ盾を失った。
勝手に幻滅されて恩を仇で返されたレジーナ、実戦を尊び、魔法技術の開発を軽んじて関係を劣悪なものにした魔法省、上司でありながらも敬われることすらなく方針を全否定され、放逐されたミーフィリア、自分の物差しを押し付け、暴走するメリダと宮廷魔法師団の仲を取り持つという胃が痛くなるような業務を全うしながらも、メリダから労いの言葉一つ掛けられることもなく、寧ろ叱責の言葉を浴びせられることの方が多かったホネスト。
メリダは、まるで自分の行いがそのまま返されたように、自分がかつて蔑ろにした者達によって宮廷魔法師団から放逐されたのだ。
◆
「とにかく、今回は魔法の使い手――それも国のトップレベルが集まっているわ。接近戦を基本とする武闘派の多い獣人族にとっては圧倒的に不利な闘いね。幸い、私達には『
この五年の間に獣人族の中でも『
未だに肉弾戦に執着し、魔法の受容を「軟弱な行為」と一蹴する猩々人族、狼人族、熊人族、牛人族、馬人族などにはごく一部を除き受容されてはいないが、魔法を使える/使えないの差は大きく、獣王決定戦では魔法を受容した種族との対戦で負けが込んでいる。
同じ獣人族の族長だからということで強引にメンバーに引っ張られ、好き勝手暴れたいからとリーダーに祭り上げられたイフィスだが、リーダーを引き受けた以上は仕事を真っ当しようと心に決めていた。
既にゴリオーラ達をいないものとして考えているイフィスは、残る五人でいかにして最高峰の魔法師達相手に立ち回っていくか思考を巡らせていく。
「……まず、この中で一番強いのは間違い紅羽さんだから、紅羽さんには好きに暴れてもらいたいわね」
『分かったわ。どこまで戦えるか分からないけど、頑張ってみるわ』
「ありがとう。それから、相手は強力な魔法師ばかりだから一対一での戦闘は出来れば避けたいわね。……私はヘルムートさん、フォッサスさん、ラミリアさんの三人で動いて各個撃破を目指すのが一番得策だと思うのだけど」
「我もイフィス殿の意見に賛成だ」
「俺もそれが一番勝ち目があると思う。フォッサス殿、ラミリア殿、よろしく頼む」
「よろしくお願いします、ヘルムート殿、フォッサス殿」
その後、紅羽は一羽で本陣を出発し、ヘルムート、フォッサス、ラミリアの三人が敵本陣を目指して出発した。
◆
一方、ヴェモンハルト率いるパーティは大将のヴェモンハルトがスザンナと共に本陣に残り、アゴーギク、ケプラー、ヒョッドル、シュピーゲル、カトリーヌ、ミーフィリア、ホネスト、ヴィクトスがそれぞれ単独行動で敵本陣を目指すという方針を取っていた。
ヴェモンハルトとスザンナは多くの裏の任務経験を経ており、コンビを組んでの戦闘では互いの力を何倍にも増幅し合って無類の強さを発揮する。
戦力としては単体でも上位に位置するスザンナをあえて本陣に配置したのは、万一本陣に攻め込まれた場合に最強の砦として二人が立ちはだかるためだった。
ヴェモンハルトが見気で発見した敵本陣を目指すアゴーギク、ケプラー、ヒョッドル、シュピーゲル、カトリーヌの五人はその途中でそれぞれゴリオーラ、ウルフェス、ヴォドール、ギュトー、バトーウを発見し、遭遇戦を開始した。
まずは、特務騎士達と五人の族長達の戦いを順に見ていくとしよう。
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