百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を賭けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.8-16 誕生日会の二次会と、ドリームチームトーナメントと……。 scene.4 戊
Act.8-16 誕生日会の二次会と、ドリームチームトーナメントと……。 scene.4 戊
<三人称全知視点>
モーランジュとパーンがラファールと戦闘を繰り広げていた頃、ジルイグスの居る本陣に程近い森ではイスタルティとペルミタージュがスティーリアと対峙していた。
『
スティーリアの力で馬の足を凍らせられ、機動力を奪われてしまえば、ただの大きな的になりかねないと判断してのことだった。
一方、『
『初戦の相手はイスタルティ様とペルミタージュ様ですか。相手にとって不足なしですわね』
「……前回のアクアさんといい、今回のスティーリアさんといい、なんで毎回こういう強敵ばかりにぶつかるのでしょうか?」
スティーリアがイスタルティとペルミタージュを強敵だと見積もっていたのに対し、イスタルティはこの時点でスティーリアと戦えば敗北が確実だと確信していた。
第一回異界のバトルロイヤルではアクアと遭遇し、真っ先に逃走を選んだが、結局逃げられずアクアに撃破されるという最悪の結果を残したイスタルティ。
今回もアクアと同じ逃げの一手を打って背中を見せれば瞬殺される相手だと分かりきっているのだから、前回のように恥ずかしい逃走劇など繰り広げず、負けることが分かっていても正面切って戦うつもりではいるが、流石に二対一と数的有利を得ていたとしても勝てる相手だとは思っていい。
イスタルティは己の
「ジェルエスネ流槍術 三ノ型 嵐刃閃禍」
『天津神之金剛宝杵』が暴風を纏い、振り下ろされると同時に無数の風の刃が生じてスティーリアへと襲い掛かった。
『随分と見覚えのある攻撃ですわね。……風魔法の攻撃はラファールさんで経験済みですわ!』
「でしょうねッ!
風の刃から無数の雷撃が生じ、やがて風の刃そのものが雷撃の刃へと姿を変えた。
雷撃の刃は無防備を晒していたスティーリアに命中し、傷口から体内に電撃を流していく。
その威力はパーンのそれに劣るものだが、スティーリアを驚かせるには十分だった。
『……確か、イスタルティ様がご出身のジェルエスネ家は風属性をもって生まれることが多く、イスタルティ様も風属性しか使えなかったと記憶していますが』
「俺が使ったのは風属性ですよ。……ネタバラシをすれば、
スティーリアはイスタルティに付けられた傷を氷で修復しながら「
氷属性単体しか使えないスティーリアにとっては全く意味のない魔法だ……だが、様々な属性の魔法を使える
『イスタルティ様、心よりお礼申し上げます。ご主人様に素晴らしいお土産をお持ちすることができそうですわ』
「本当に忠臣ですよね、スティーリアさんは。まあ、ローザ様と当たっていても使わざるを得なかったでしょうし、どのみち披露することになっていたでしょうが。……さて、ここからどう仕掛けましょうか?」
スティーリアがイスタルティに意識を向けていたその隙を突き、ペルミタージュが背後から『天津神之金剛宝杵』で薙ぎ払い攻撃を仕掛けた。
『天津神之金剛宝杵』に込められたのは武装闘気だけではない。神光闘気と共に強力な炎の魔力が込められている。
それも、ただの炎ではない。希少属性である蒼焔と呼ばれる属性だ。
奇しくもそれは帝器「
その希少な焔で不意打ちからスティーリアを撃破しようと企むペルミタージュ。
流石に彼も真正面からスティーリアを倒せるとは思っていなかった。女性相手にだとか、騎士として恥ずべき行動だとか、そういったものは一切ない。折角イスタルティが用意してくれた一瞬の隙――それを逃す手はない、そう考えての行動だったのだが……。
『なかなか理に適った作戦だと思いますわ。卑怯だとかなんだとか言って、肝心な時に出し惜しみするのはあまり褒められたものではないと思いますわ。……しかし、残念ですわね。殺気が丸見えですわ』
スティーリアの手からダイアモンドダストが放たれた。
スティーリアは当然、見気も極めている。
裏の見気である心を凍てつかせることで相手に心を読まれないようにする拒読心、気配を極限まで消すことで自らを希薄にすることで見気を掻い潜る薄隠気、意図的に殺気を発生させることで見気を騙すダミーを作り出す分気体を駆使しなければスティーリアの見気を掻い潜ることは難しいのだ。
……まあ、そもそもスティーリアは見気を使わず自前の殺気感知でペルミタージュの僅かな殺気を感知し、反撃の手を打ったので見気の練度は全く関係ないのだが。
ペルミタージュは自分の奇襲が気づかれたことに驚きながらも、一方で放たれた攻撃が無害に思える攻撃であることに僅かながら安堵を覚えていた。
しかし、その安堵はすぐに違和感に変わる。そして、ペルミタージュの違和感は正しかった。
『
ダイアモンドダストを起点にペルミタージュが大気諸共凍結した。
『
そして、スティーリアの手に二振りの氷の剣が生み出される。
敬愛する主人――
『――
そして、巨大な氷塊と化したペルミタージュに武器を大きく振り回して敵の首を刈るイメージで『
『さて、残りはイスタルティ様だけですわね? 敬愛するリーリエ様をスタイルを真似た今の私は絶対に負けてはならないのですわ! その
熟女然とした微笑を浮かべながら、獰猛な光をその双眸に宿し、スティーリアは右の剣をイスタルティに向けた。
「ジェルエスネ流槍術 三ノ型 嵐刃閃禍!
『天津神之金剛宝杵』が暴風を纏い、振り下ろされると同時に無数の風の刃が生じてスティーリアへと襲い掛かる。
その全てが「
スティーリアは裏武装闘気で壁を作り出して焔を防ぐと、解除してイスタルティに迫る。
一方、イスタルティは攻撃を放つと同時に地上に降りて
「――ジェルエスネ流槍術 二ノ型 暴旋刺突!
槍に纏った風を後ろに向けて放ち、気流を作って加速し、裏武装闘気を解除した瞬間に螺旋状の空気を変化させて生み出した雷を纏った刺突攻撃を放つイスタルティ。
しかし、その攻撃を予測していたスティーリアは小さな氷の茨を掌の上で生み出すと、イスタルティの足元へと放つ。
『――
氷の茨が急速に伸び、イスタルティを束縛した。更に氷の茨は侵食を続け、遂には薔薇の装飾が美しい氷の棺桶を作り上げた。
『――
武器を大きく振り回して敵の首を刈るイメージで『
◆
イスタルティとペルミタージュを撃破したスティーリアは更に森の奥へと進んでいく。
そうして辿り着いた森の西側の奥深く――そこに待ち受けていたのは唯一残った大将のジルイグスだった。
「……まさか、これほど早く到達されるとは。この対戦カードの時点で優勝どころか二回戦進出も夢もまた夢だとは思っていたが、もう少し善戦しているという夢を見ていたかった」
『ハイ・ソニックブリンガー』を鞘から抜き去り、スティーリアに向けて油断なく構える。
「
『私はご主人様のメイドとして負ける訳には参りませんわ。奇跡は起こさせません。私がここで貴方を倒して
『
「
スティーリアの目ですら追えないほどの速度で間合いを詰めたジルイグスが赤熱化させた刃で高速斬撃を放った。
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