百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.7-36 帝国崩壊〜闇夜の下で絡み合う因縁と激戦に次ぐ激戦〜 scene.1 上
Act.7-36 帝国崩壊〜闇夜の下で絡み合う因縁と激戦に次ぐ激戦〜 scene.1 上
<一人称視点・ラナンキュラス/ビクトリア・
強化合宿の翌日の晩、装備を整えたボク達は遂に帝国崩しを開始した。
ボク、アクア、ディラン、プリムヴェール、マグノーリエ、スティーリア、シェルロッタの七人とシャドウウォーカーは、シャドウウォーカーのアジトから行動を開始し、
異世界ファンタジー感消えまくっている気がするけど、便利なものは利用すべきだと思わないかい?
ボクの目的は皇帝の撃破と『管理者権限』の奪取――しかし、それだけがボク達の目的という訳ではない。
革命を完結されるために討伐しておかなければならない相手、説得しておかなければならない相手というのも多数存在している。
この線引きはボク達とシャドウウォーカーとの間で食い違っている部分もあるからなるべく交渉が必要な相手には交渉が可能なボク側の人間をぶつけたい。
ということで、今回は事前に誰を誰にぶつけるかを大凡の部分で決めておいた。
まず、【熔将】アルバ=パテラに対してはスティーリアをぶつける。対炎のエキスパートなら負けることはまずないだろうねぇ。
この国に対する忠誠心の塊は国が腐っていたとしてもそれを正そうとはしない。彼にとって皇帝こそが仕えるべき主君であり、その討伐を為そうとするボク達の説得は無意味に終わるだろう。帝政崩壊後は新たに皇帝を立てるつもりはないし、帝政崩壊後の新時代では邪魔な存在となる。スティーリアには慈悲なく殺しておくようにと伝えておいた。
大将軍の家系で生まれ、代々武官は政治に口出すべからずと言う教えを守り、国家の安泰のみを願う武人、【雷将】トネール=フードゥルには椛、槭、楪、櫻の四人をぶつけることにした。彼はアルバと同じ国に仕える人間だけど、その心には正義の炎が宿り、国に巣食う悪の殲滅を心に決めている。どうにか説得して、革命後の帝国で力を揮って欲しい。
大将軍相手ということで五人配置したけど、ちょっと人数割きすぎたかな? とも思っている。まあ、終わったらフォローに回るということで。
続いて治安維持組織「ヴァナルガンド」――ここの担当チームは上二つと違って現地に移動してからそれぞれの討伐対象を狩ってもらうことになる。
厳選の結果、【凍将】グランディネ=サディストにはリーダーのピトフューイと補助でシェルロッタ、ネーラ=スペッサルティンとヴァルナー=ファーフナにはプルウィア、プリムヴェール、櫁の三人、カルマ=スパルダとアルゴン=レイリーにはホーリィ、フレデリカ、ジャスティーナ、セリュー=アンテンにはリスティナ、フィーロ=トラモントには欅、ブルーベル=ヒュミラティには梛、ローウィ=デュマガリエフにはアンタレスとシュトルメルトをそれぞれ配置することにした。
特にネーラとヴァルナー、フィーロとブルーベルは説得してこちら側に引き込みたいから、是非頑張って欲しいねぇ。ネーラとヴァルナーの方はプリムヴェールだと説得は難しそうだから櫁を配置しておいたし、残る二人の方は最初から安心して任せられる。
これら三グループには、討伐対象を発見し
目的は帝都内部で戦闘を起こし、騒ぎを大きくしないため。万が一の場合でも転移先から帰還に時間が掛かるようにして増援に迎えないようにするためという目論見もあるけど、これだけのメンバーを揃えてやられるなんてことはないんじゃないかな?
理想は誰にも気づかれずに皇帝を撃破することだし、そのために人目につきにくい夜を選び、引き離し作戦を計画したんだけど、だからといって出し惜しみをするつもりはない。全ての手札を使う覚悟は決めているし、必要ならばリーリエの使用も躊躇うつもりはない。そもそも、『管理者権限』を持つ神は舐めプで制圧できるほど甘くはないからねぇ。
他にも討伐対象はいるから、マナーリン、マイル、クイネラの戦闘メイド三人衆に回ってもらうことにしている。
問題はここからだねぇ。暗黒騎士ガーナットにイリーナをぶつけることは既に考えてあるんだけど、帝国側が持っている手札の全貌が見えない以上、ここから先の手を打つことはできない。
ボクの他にイリーナ、アクア、ディラン、カルメナ、メネラオス、スピネル、チャールズ、リヴァス、クラリス、マグノーリエ――これだけのメンバーをフリーにして帝城に突っ込むけど、これで本当に足りるかどうか? まあ、最悪の場合は増援を呼ぶことになりそうだねぇ。
と、まあ、こんな感じの割と行き当たりばったりな作戦とも言えない作戦だけど、もう一つ気がかりなことがある。
ナトゥーフから送られてきたメール。
……このタイミングで風の国ウェントゥスで神として崇められる暴風竜がボクを見定めに来るって一体何? もっとタイミング考えてもらいたいものだよねぇ。
◆
<三人称全知視点>
マナーリン、マイル、クイネラが帝都の各所で暗殺の嵐を巻き起こし始めた頃、ローザ一行、シャドウウォーカー、
アルバの屋敷は帝都の中心部にあった。大将軍の地位に相応しい大きな屋敷だが、配置されている衛兵の数は数十人と貴族の屋敷の警備に比べたらかなり手薄だと言えるだろう。
これは護衛される対象である大将軍が衛兵を必要としないほどの無類の強さを誇る故だった。
いつでも帝国の危機に馳せ参じることができるように帝城近くに作られたその屋敷の異変に最初に気付いたのは他ならぬ大将軍アルバ自身だった。
「…………部屋が、少し寒いな」
部屋の隙間から冷気が寝室へと入ってきているようだった。
「……【凍将】グランディネか?」
脳裏に浮かんだ同格の大将軍の顔にアルバは不快感を抱いた。
国政を私物化し、皇帝の意思など関係なしに政治を行う宰相ハーメルンはアルバにとって正に天敵とも呼べる存在だった。
アルバにとってハーメルンが邪魔者であるように、ハーメルンにとってもアルバが邪魔者なのは想像に難くない。
ハーメルンが自分の子飼いの大将軍――グランディネを使って自らの暗殺を企んだのでは……と勘繰ったアルバだったが。
『残念ですわね。私は【凍将】グランディネではありませんわ』
冷気が集まり生まれた氷像が氷像そっくりの女へと姿を変えた。
真っ白な肌と
だが、その女がアルバに好意的な存在でないことは容易に想像がついた。
「……革命軍の凶手か?」
『まあ、そんなところですわね。より正確に言えば暗殺組織シャドウウォーカーと同盟を組んだ隣国フォルトナ王国と同盟関係にあるブライトネス王国から使者ということになりますが』
「ブライトネス王国? 何故、そのような国が革命軍に与するのだ。狙いは帝国の支配か? 帝国を支配下に置き、領土の拡大を狙っていると? そういうことか?」
『いえ、
「愚問だな。我は、いや、我ら一族はルヴェリオス帝国に仕えてきた。皇帝一族に仕えたのではなく、帝国に仕えてきたのだ。貴殿らはこの帝国を終わらせようとしているのだろう? ならば、我は帝国のために貴様らを狩る。国が腐敗しようと構わん。そんなことは端からどうでもいい。国が腐ろうとも、皇帝が変わろうと、初代皇帝が作り上げたこのルヴェリオス帝国がいつまでも存続することだけが我が望みだ! 賊どもにこの国は変えさせんッ! それに、三代皇帝も二代皇帝を倒してその椅子を奪った、形はどうであれ皇帝の座につく権利を得た正統な皇帝だ。その権利を得る方法が不法だとしてもな」
『形ばかりに拘って、民のことを考えることもしない。国を良くしようとはせず、国の停滞を、現状維持を望む究極の保守派。お嬢様が狩るべき癌の一人に挙げるのも納得がいきますわ。確かに、革命後の世界に貴方の存在は不必要――いえ、害悪にしかなり得ません。交渉するだけ無意味ということですわね』
「最初から分かっていた筈だ。我は賊を狩る――ルヴェリオス帝国のためにその身を捧げる、それだけは変わらん。……どの道戦いは避けられん。…………一ついいか? ここに来る途中、この屋敷を守っていた衛兵は殺したのか?」
『いいえ? 彼らは暗殺の対象外でしたので』
「……そうか」
アルバは一度目を閉じると、刮目して覚悟の篭った視線を向けた。
「ルヴェリオス帝国の大将軍が一人、アルバ=パテラッ! 帝国の敵の討伐に全霊を捧げるッ! ルヴェリオス帝国は終わらせんッ!」
『ブライトネス王国の公爵家が一つ、ラピスラズリ公爵家が長女ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト様の従魔の一体にしてメイド、〝白氷竜〟スティーリア=グラセ・フリーレン=グラキエース! 推して参ります!』
白い羽の意匠が施されたナイフが地面に落とされ、激しい閃光が部屋全体を包み込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます