百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.5-80 使節団再開直前〜悪役令嬢の忙しい一日〜 scene.1 中
Act.5-80 使節団再開直前〜悪役令嬢の忙しい一日〜 scene.1 中
<一人称視点・リーリエ>
ヴァケラー、ジャンロー、ティルフィ、ハルト、ターニャを連れてボクは路地裏からシャンタブルズム山脈にあるミーフィリアの庵にやって来た。
「やぁ、ローザ嬢、数日ぶりだな。ヴァケラー、ジャンロー、ティルフィ、ハルト、ターニャの五人は久しぶりか。それで、【メジュール大迷宮】の挑戦はどうだったのだ?」
「……頑張って六十一層到達しましたが、ローザさんに抜かされてしまいました。ローザさん、ユミル自由同盟に出現した【アラディール大迷宮】をたった一日で攻略してしまったそうですよ」
「…………ローザ嬢ならあり得る話だが、どうしてそもそも獣人族と同盟を結びに行って
当初の予定通りだけど、全員分の紅茶を淹れてお茶菓子を出しつつミーフィリアにユミル自由同盟での出来事を話した。あっ、獣王決定戦の試合の録画映像も流しつつ、ねぇ。
「すまんな、私の家なのだから私がもてなすべきなのだが。まあ、私もローザ嬢より美味しいお茶を淹れる自信はないから、ローザ嬢のお好みで淹れてもらうのが最良か」
「別にボクは人間ヤカンとかじゃないけどねぇ……。ミーフィリアさんのお茶も美味しいと思うし、訪ねた相手のもてなしを受けるのがマナーだということは分かっているんだけど、まあ性分みたいなものでねぇ。それに、ほとんどがアポイントもろくに取らずに押し掛けちゃっている訳だし、その埋め合わせはきちんとした方がいいでしょう? これがボクなりの埋め合わせなんだけどねぇ、お気に触るようならミーフィリアさんのご相伴に預かりましょうか?」
「私もだが、ローザ嬢の美味しいお茶を飲むのは楽しみの一つなんだ。本当に茶葉の特性を理解して最高の味のものを用意してくれるからな。……ただ、申し訳ないと思っただけだ。今後も良かったら美味しい紅茶を淹れてもらいたい」
まあ、ボクよりも紅茶を美味しく淹れられる人なんて星の数ほどいると思うけどねぇ。
「しかし、ローザさんってなんでもできる印象があるよなぁ。何かできないこととか苦手なことってないんですか?」
「ジャンローさん、ボクって万能超人じゃないからそこんとこ勘違いしないでねぇ。まず、できないことだけど沢山あると思うけどねぇ、例えば妖術は大倭秋津洲のものもこっちのものも使えないねぇ。苦手なものは……話の通じない人とか、
脳筋でも戦闘狂でもなんでもいいけど、とりあえず意思疎通ができないと話にならないからねぇ。後、
「妖術……といえば、このアルティナという狐人族の女性も獣王決定戦の試合の中で使っているな。……しかし、妖術か。魔法との違いはどこにあるんだ?」
「ボクの元いた世界にも似たような力があるし、それを基にしたから妖術って言っても二種類あるんだけどねぇ。まず、こっちの世界の妖術は妖力という妖怪種族が持つ特殊な力を使った戦闘技術で、大倭秋津洲の妖怪が使う妖術は妖気という妖怪種族が持つ特殊な力を使った戦闘技術――どちらも、魔力を使わないで超常現象を引き起こすことができる一種のアドバンテージだと言えるねぇ」
「なるほど……では、妖術で作り出した炎と魔法で作り出した炎を融合することで消費魔力を抑えつつ高威力の火攻撃を行うこともできるのか?」
ミーフィリアもだけど、よくそれ思いつくよねぇ。まあ、テンプレなんだけどさ。
「……魔法と妖術の融合か。面白い分野ではあるが、獣人族は魔力を持たない。既存の魔法でやろうとなると魔法使いと妖術使いをセットにするのがベターか」
「魔力を持たない人でも魔法を使える装置と魔力を使わないマジックスキルをアルティナさんに教えたんだけど、そこから兎人族の族長のメアレイズさんが妖術と魔法の融合を提案して実際に成功させていたからねぇ。魔法と妖術の融合は実際に可能だよ……個人的には先行テクスト無しにそれ思いつくの凄い発想力だって思うんだけどねぇ。ただ、妖術の種類的に大規模魔法との相性はあまり良くないかな? 時空操作クラスになるとやっぱり時空属性の魔法が必須になるし、ミーフィリアさんの研究にはあまりプラスにはならないだろうねぇ」
ミーフィリアはどちらかといえば戦術級や戦略級に分類される魔法の研究をしている。この庵に戻ってきたのだって、王都ではできない大規模魔法の研究のためだからねぇ。
アルティナの妖術を見てよく分かったけど、妖術で戦略級の魔法に匹敵する現象を引き起こすことはほぼ不可能……そりゃ、九尾の妖狐とか大妖怪クラスともなれば戦術級や戦略級規模の大魔法に匹敵する妖術を使えるかもしれないけど、あれほど優れた妖術使いであるアルティナですら、使える妖術の全てが対人級に収まっているのだからあまり現実的な話じゃない。
なら、魔法に加えることで威力を高める方向で……という話になるだろうけど、魔法と組み合わせられる妖術の属性は現時点でも限られていて、特に目立った成果を上げられるのは狐火に代表される火以外にない。戦略級魔法の日魔法に狐火を融合したとして、それでヨグ=ソトホートを狩れるかって問われたら、まあ難しいかはねぇ。
「まあ、そもそも私は妖術が使えないからな。そういう研究は妖怪種族が行うべきだろう。……ところで、ローザ嬢はどんな用事があってきたのだ?」
「ヴァケラーさん達のことを『聖精のロンド』に引き合わせつつ、ミーフィリアさんのものも含めて武器を改良させてもらおうと思ってねぇ。ついでにミーフィリアさんにも完全版の『
External magic activation system……つまり、外部魔法発動装置、通称『
ちなみに、ヴェモンハルトとスザンナには昨日のうちに「簡単な『
『なるほど……これは画期的な発明だな。早速私の研究室の方で色々と実験させてもらおう』
『これは、我が国の魔法の根本を変える発明ですね。これまで才能を持つ者しかなれなかった宮廷魔法師もより広く門戸を開くことができるようになるでしょう……いや、既存の宮廷魔法師とは違う枠を用意するのもいいかもしれませんね。『
本当に宮廷魔法師団と魔法省の仲って最悪なんだねぇ……というか、ヴェモンハルトも
まあ、そもそもメリダが敵を作りやすい性格だしねぇ……あの傍若無人な性格、宮廷魔法師団の中でもメリダを嫌っている人は多いんじゃないかな? まあ、実力は確かだからねぇ……なんたってカリエンテと喧嘩して生き残っているくらいだし。
ようやく実力を認められるようになったミーフィリアは宮廷魔法師団の団長に上り詰めた……けど、後から入ってきた新人のメリダが「ミーフィリアのやり方は生温い!」と苛烈で傍若無人なやり方を突き通し、嫌気が差した、馬鹿な子供とはお関わりたくないと思うようになった大人なミーフィリアはあっさりと団長の座を譲り渡して宮廷魔法師団を去った。そういった経緯からミーフィリアの学友だったスザンナは殊更彼女が率いる宮廷魔法師を忌み嫌っているのかもしれないねぇ。
まあ、ボクもあの女は正直嫌いだけど。
部下を慮るところが全くなく、結局自分のペースに合わさせているだけ。新しいものも取り入れることなく、根性論を持ち出しては天才の自分と同じやり方をすれば強くなると本気で信じている。思慮もあるにはあるが、ほとんど野生の勘で、その思慮もくだらない偏見によってあっさり曇る。
実際彼女は戦いの天賦の才を持っていて、宮廷魔法師団は強化されていると聞く……けど、その過程で何人の魔法師が精神を病んだか、夢を絶たれたか、分かったもんじゃない。宮廷魔法師団が強くなったのは、そういった苦しいものを乗り越えて猛者に至ったものがいるから、たったそれだけでしかない。
いずれ、その狭窄な視野に気づくといいけどねぇ……まあ、その前に無茶が祟って死ぬかも。今まではカリエンテと強さが拮抗していたから勝てていたけど、カリエンテがフルレイドランクのレイドボスクラスの力を得たら勝ち目はまずないからねぇ。
あのバトルロイヤルで少しは性根を叩き直せたかと思ったけど、結局何も変わってないし。莫迦は死ななきゃ治らない……いや、あのレベルの莫迦は転生したぐらいじゃ治らないだろうねぇ。
「なるほど……『
気に入ってもらえたようだねぇ。
「そういえば、レミュアが戻ってくると言っていたな。わざわざ降りて行かなくてもここまで待っていれば会えると思うぞ。最近は『聖精のロンド』の仲間も連れてくるようになったしな」
「それは良かった。それじゃあ、しばらくここで待たせてもらおうかな? ミーフィリアさんの武器の調整もその時に一緒で良さそうだねぇ」
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