Act.5-15 第一回異界のバトルロイヤル 一日目 scene.2 中

<三人称全知視点>


 刹那、ヌル・鋼鉄の銃巨人の一つ目が怪しく輝いた。危険を感じたアクアは咄嗟に迅速闘気を纏って加速――ヌル・鋼鉄の銃巨人の視界から外れた。

 その瞬間、ヌル・鋼鉄の銃巨人の眼の前に歯車の意匠の魔法陣が展開され、そこから紫色の細いビームが放たれる。単体に高威力のビームを放つ「シンプレックス・コマンド」という技だ。


「――ッ! 無茶苦茶だな! おい!!」


 可愛い見た目からは想像もつかない男言葉で毒を吐きながら、なんとかヌル・鋼鉄の銃巨人の正面に出ないように接近するアクア。

 流石は戦闘使用人最速――ヌル・鋼鉄の銃巨人を上回る速度(ヌル・鋼鉄の銃巨人の「ランオーバー」よりは遅い)で、ヌル・鋼鉄の銃巨人と着実に距離を縮めている。

 ヌル・鋼鉄の銃巨人の強力無比な必殺技(単体の「シンプレックス・コマンド」と、前方一帯を薙ぎ払う「エンハンスド・コマンド」、「エンハンスド・コマンド」と同じモーションで放たれる「ジャッジメント・コマンド」、ヌル・鋼鉄の銃巨人の胸元に内蔵されている主砲から放たれる「波動砲」、ヌル・鋼鉄の銃巨人の両手のチャージ技である「アトミック・フォースレイ」の五つ)はどれも前方に放たれるものなので、アクアの戦略は正しいと言えるだろう。


 だが、素早さで翻弄される程度では『End of century on the moon』のみんなのトラウマにはなり得ない。


 ヌル・鋼鉄の銃巨人の足元に光の魔法陣が展開され、次の瞬間――アクアの目の前にはヌル・鋼鉄の銃巨人がいた。

 ヌル・鋼鉄の銃巨人の右腕が回転しながらアクアに放たれる。


 咄嗟にアクアは武装闘気と覇道の霸気を纏わせた……が、それでも勢いとダメージを完全に殺し切ることは敵わず、アクアは壁まで吹き飛ばされた。

 ヌル・鋼鉄の銃巨人の最弱・・の攻撃方法――「ブロウ」だ。


 更にヌル・鋼鉄の銃巨人の両手に埋め込まれた装置が起動し、七色の気体が噴射される。火・水・風・毒・雷・光・闇の七属性を含む「虹の激風」と呼ばれる強力な技だ。


「……最初から本気・・を出しておくべきだったな。――魂魄の霸気!」


 アクアの魂魄の霸気の形は《昇華》。全ての能力を最低でも一段引き上げるというもので、その効果は自身だけではなく周囲にも及ぶという、まさに一軍を率いる将に相応しい魂の形である。

 アクアはその力で自身の身体能力と武装闘気と覇道の霸気の効果を二段階引き上げ、これまでの最高速度を上回る速度で「虹の激風」が放射される前にヌル・鋼鉄の銃巨人の背後に回り込んだ。


 そこからアクアは逆手で構えた・・・・・・『カレトヴルッフ』で高速連撃を叩き込む。その小柄な身体からは想像もつかない重い斬撃が次々に空気を裂く音を上げながら振るわれる。

 アクアの剣術は、辺境の地で剣を握ってから独力で極められた変則的で型破りな、正統の騎士から見れば邪道もいいところの技だ。しかし、実戦の中で鍛え抜かれた斬撃は戦闘に最適化されていき、今では形こそ邪道ではあるものの正統の騎士剣に勝るとも劣らないものにまで昇華している。


 しかし、並の騎士なら一撃で倒せるほどの重い斬撃で全力を出してもなお、ヌル・鋼鉄の銃巨人のHPバーがようやく一割削れたというところ……あまりの硬さに流石のアクアも辟易する。


「どう考えても一撃一撃の重さがおかしいことになっているだろッ! これ、本当にボスなのか!? あっちの攻撃一発食らったらHPバーの十分の一が持っていかれるってどういうことだよッ!!」


 完全武装状態でなお、「ブロウ」を食らって壁に打ち付けられた瞬間にHPバーの十分の一が消失した。実は、まだまだ序の口で純粋に威力が強化された「パワー・ブロウ」、スタン効果のある「スタン・ブロウ」、あらゆる強化を無効化する「ジャミング・ブロウ」など「ブロウ」にも様々な上位互換が存在する。

 しかも、これは素の状態での話だ。自己の能力を上昇させる「パワー・チャージ」、「アーマー・アップ」、「ウルトラライト・フォーム」、「ハイ・コンプレッション」などで強化されれば、例えば「ランオーバー」も更にスピードや威力が増し、その他の技も大幅に強化されてしまう。


 更に、ヌル・鋼鉄の銃巨人になっているためわかりにくいが、ヌル・鋼鉄の銃巨人はいくつもの部分からなるボスエネミーとしてデザインされている。

 巨人の頭部以外の巨人の胴体、巨人の右腕、巨人の左腕、巨人の右足、巨人の左足は「エンシェント・リアクター」と呼ばれる技を保有し、毎ターンHPを回復することができた。


 当時の攻略サイトには以下の情報が書かれている。


-----------------------------------------------

名称:巨人の頭部 属性:鋼

HP:3,020,450 チャージまで五ターン


スキル名

ノーマル攻撃

・パワー・チャージ 自身のATKを大アップ

・アーマー・アップ 自身のDEFを大アップ

・ワープ・サークル フィールドのいずれかの地点にワープする。


チャージ攻撃

・シンプレックス・コマンド 単体にビームによるエネルギー攻撃(威力特大)

・エンハンスド・コマンド 全体にビームによるエネルギー攻撃(威力超特大+全体の自身のDEF特大ダウン)


巨人の頭部のみになった場合の通常攻撃

・ヘッド・オンリーワン 自身のATK+DEFを超々特大アップ+チャージ五アップ+移動不能+チャージ攻撃後に自身に一定ターン機能停止を付与

・ワープ・サークル フィールドのいずれかの地点にワープする。


巨人の頭部のみになった場合のチャージ攻撃

・シンプレックス・コマンド 単体にビームによるエネルギー攻撃(威力特大)

・ジャッジメント・コマンド 全体にビームによるエネルギー攻撃(対象の最大HPの二乗の固定ダメージ)



名称:巨人の胴体 属性:鋼

HP:3,000,000 チャージまで五ターン

ノーマル攻撃

・パワー・チャージ 自身のATKを大アップ

・アーマー・アップ 自身のDEFを大アップ

・ウルトラライト・フォーム 自身のATK+SPDを大アップ+自身のDEFを特大ダウン

・ハイ・コンプレッション 自身のATKを一度だけ大アップ+チャージ最大値まで上昇

・エンシェント・リアクター 自身にリカバリー付与

・メルトダウン エンシェント・リアクターを発動している場合にHPが五割削られた時に発動。自身のDEFを特大ダウン+自身にメルトダウン付与

・胴体への攻撃が足りない……よって、護りはより強固となる 巨人の頭部のDEFを特大アップ

・胴体への蓄積ダメージLevel.1……出力強化 巨人の頭部に攻撃を三回カットするバリアを張る

・胴体への蓄積ダメージレベル上昇……出力強化 味方全体のSPD小アップ

・胴体への蓄積ダメージLevel.2……出力強化 味方全体のSPD中アップ

・胴体への蓄積ダメージレベル上昇……出力強化 味方全体のSPD小アップ

・胴体への蓄積ダメージLevel.3……胴体にヒビが入っている! 自身のDEFを特大ダウン

・胴体への蓄積ダメージLevel.MAX……ブレイクダウン 自身のDEFを超特大ダウン+自身のチャージカウントを減らす+自身に一定ターン機能停止を付与

・胴体への蓄積ダメージリセット~リスタート 自身のチャージを五減らす+SPD小アップ

・ギギ……ギギギ…… 頭部死亡時、自身をHP0にする


チャージ攻撃

・波動砲 全体に波動砲によるエネルギー攻撃(威力超特大)



名称:巨人の左腕 属性:鋼

HP:3,000,000 チャージまで五ターン

ノーマル攻撃

・ブロウ 単体にパンチによる物理攻撃(威力大)

・パワー・ブロウ 単体にパンチによる物理攻撃(威力特大)

・スタン・ブロウ 単体にパンチによる物理攻撃(威力大+スタン付与)

・ジャミング・ブロウ 単体にパンチによる物理攻撃(威力大+防御貫通+強化抹消)

・虹の激風 全体に火・水・風・毒・雷・光・闇の七属性の属性攻撃(威力特大+低確率で毒付与)

・エンシェント・リアクター 自身にリカバリー付与

・メルトダウン エンシェント・リアクターを発動している場合にHPが五割削られた時に発動。自身のDEFを特大ダウン+自身にメルトダウン付与

・左腕への攻撃が足りない……よって、攻撃はより激しくなる 巨人の左腕のATKを特大アップ

・左腕への蓄積ダメージLevel.1……反撃 単体に物理攻撃(威力大)

・左腕への蓄積ダメージレベル上昇……出力強化 味方全体のSPD小アップ

・左腕への蓄積ダメージLevel.2……反撃 単体に物理攻撃(威力大)

・左腕への蓄積ダメージレベル上昇……出力強化 味方全体のSPD小アップ

・左腕への蓄積ダメージLevel.3……左腕にヒビが入っている! 単体物理攻撃(威力大+自身のDEFを特大ダウン)

・左腕への蓄積ダメージLevel.MAX……ブレイクダウン 自身のDEFを超特大ダウン+自身のチャージカウントを減らす+自身に一定ターン機能停止を付与

・左腕への蓄積ダメージリセット~リスタート 自身のチャージを五減らす+ATK小アップ

・ギギ……ギギギ…… 胴体死亡時、自身をHP0にする


チャージ攻撃

・アトミック・フォースレイ 全体に原子力砲によるエネルギー攻撃(威力超特大+被曝付与)



名称:巨人の右腕 属性:鋼

HP:3,000,000 チャージまで五ターン

ノーマル攻撃

・ブロウ 単体にパンチによる物理攻撃(威力大)

・パワー・ブロウ 単体にパンチによる物理攻撃(威力特大)

・スタン・ブロウ 単体にパンチによる物理攻撃(威力大+スタン付与)

・ジャミング・ブロウ 単体にパンチによる物理攻撃(威力大+防御貫通+強化抹消)

・虹の激風 全体に火・水・風・毒・雷・光・闇の七属性の属性攻撃(威力特大+低確率で毒付与)

・エンシェント・リアクター 自身にリカバリー付与

・メルトダウン エンシェント・リアクターを発動している場合にHPが五割削られた時に発動。自身のDEFを特大ダウン+自身にメルトダウン付与

・右腕への攻撃が足りない……よって、攻撃はより激しくなる 巨人の右腕のATKを特大アップ

・右腕への蓄積ダメージLevel.1……反撃 単体に物理攻撃(威力大)

・右腕への蓄積ダメージレベル上昇……出力強化 味方全体のSPD小アップ

・右腕への蓄積ダメージLevel.2……反撃 単体に物理攻撃(威力大)

・右腕への蓄積ダメージレベル上昇……出力強化 味方全体のSPD小アップ

・右腕への蓄積ダメージLevel.3……右腕にヒビが入っている! 単体物理攻撃(威力大+自身のDEFを特大ダウン)

・右腕への蓄積ダメージLevel.MAX……ブレイクダウン 自身のDEFを超特大ダウン+自身のチャージカウントを減らす+自身に一定ターン機能停止を付与

・右腕への蓄積ダメージリセット~リスタート 自身のチャージを五減らす+ATK小アップ

・ギギ……ギギギ…… 胴体死亡時、自身をHP0にする


チャージ攻撃

・アトミック・フォースレイ 全体に原子力砲によるエネルギー攻撃(威力超特大+被曝付与)



名称:巨人の左足 属性:鋼

HP:3,000,000 チャージまで五ターン

・ランオーバー 全体に物理攻撃(威力特大)

・エンシェント・リアクター 自身にリカバリー付与

・メルトダウン エンシェント・リアクターを発動している場合にHPが五割削られた時に発動。自身のDEFを特大ダウン+自身にメルトダウン付与

・左足への攻撃が足りない……よって、攻撃はより激しくなる 巨人の左足のATK+SPDを大アップ

・左足への蓄積ダメージLevel.1……反撃 単体に物理攻撃(威力大)

・左足への蓄積ダメージレベル上昇……出力強化 味方全体のSPD中アップ

・左足への蓄積ダメージLevel.2……反撃 単体に物理攻撃(威力大)

・左足への蓄積ダメージレベル上昇……出力強化 味方全体のSPD小アップ

・左足への蓄積ダメージLevel.3……左足にヒビが入っている! 単体物理攻撃(威力大+自身のDEF+SPDを特大ダウン)

・左足への蓄積ダメージLevel.MAX……ブレイクダウン 自身のDEFを超特大ダウン+自身のチャージカウントを減らす+自身に一定ターン機能停止を付与

・左足への蓄積ダメージリセット~リスタート 自身のチャージを五減らす+SPD中アップ

・ギギ……ギギギ…… 胴体又は右足の死亡時、自身をHP0にする


チャージ攻撃

・トランプル 全体に物理攻撃(威力超特大)



名称:巨人の右足 属性:鋼

HP:3,000,000 チャージまで五ターン

・ランオーバー 全体に物理攻撃(威力特大)

・エンシェント・リアクター 自身にリカバリー付与

・メルトダウン エンシェント・リアクターを発動している場合にHPが五割削られた時に発動。自身のDEFを特大ダウン+自身にメルトダウン付与

・右足への攻撃が足りない……よって、攻撃はより激しくなる 巨人の右足のATK+SPDを大アップ

・右足への蓄積ダメージLevel.1……反撃 単体に物理攻撃(威力大)

・右足への蓄積ダメージレベル上昇……出力強化 味方全体のSPD中アップ

・右足への蓄積ダメージLevel.2……反撃 単体に物理攻撃(威力大)

・右足への蓄積ダメージレベル上昇……出力強化 味方全体のSPD小アップ

・右足への蓄積ダメージLevel.3……右足にヒビが入っている! 単体物理攻撃(威力大+自身のDEF+SPDを特大ダウン)

・右足への蓄積ダメージLevel.MAX……ブレイクダウン 自身のDEFを超特大ダウン+自身のチャージカウントを減らす+自身に一定ターン機能停止を付与

・右足への蓄積ダメージリセット~リスタート 自身のチャージを五減らす+SPD中アップ

・ギギ……ギギギ…… 胴体又は左足の死亡時、自身をHP0にする


チャージ攻撃

・トランプル 全体に物理攻撃(威力超特大)


※全体攻撃は部屋全体ではないため、敵の前方から逃れていればダメージを受けないことを確認。

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 バリアが貼られた巨人の頭部には最初から攻撃することはできず、常に「エンシェント・リアクター」が起動しているそれ以外の部位(最も被害が与えられる巨人の胴体)に根気強く攻撃を積み重ね、「メルトダウン」の併発を狙いつつ「胴体への蓄積ダメージLevel.MAX」まで持ち込み、そこから弱り切った巨人の胴体に強攻撃を叩き込み(物理ではなく光子力武器の方が効果的)破壊して巨人の頭部以外を連鎖破壊し、最後に頭部の前方に入り「ジャッジメント・コマンド」を喰らわないように立ち回りながら、巨人の頭部を破壊するというのが定石である。

 攻撃を三回カットするバリアを上回る攻撃手数で巨人の頭部を先に討伐するという手もあるが、巨人の手数が多い状況で、更にバフ盛り盛りの巨人の頭部を倒すというのはなかなか厳しいものがある。


「これじゃあ回避も難しいな……見気の未来予知を常時使うしかないか。心を読もうにも、相手が金属の塊だから読めないし」


 見気を発動して、未来予知を常時発動したアクアは、再び突撃を開始した。

 勿論、アクアは巨人のギミックを知らない。初見殺しで多くの上位プレイヤーを死に追いやった古の破壊巨人を前にアクアがどう立ち回るのか。いずれにしても、相性的にアクア側が圧倒的に不利なことは間違いない。

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