百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.4-10 エルフの女剣士のフードの少女〜もし、強気の女騎士にフリフリの純白のドレスを着せたら〜
Act.4-10 エルフの女剣士のフードの少女〜もし、強気の女騎士にフリフリの純白のドレスを着せたら〜
<一人称視点・マリーゴールド>
「アカウントチェンジ・マリーゴールド」
稲穂のような豪奢な髪を持つ神祖のエルフのアカウントに切り替え、統合アイテムストレージから知られる限り最も長く生きた非クローン性の生物とされるブリスルコーンパインを利用して作り出した幻想級の仕込み杖『ブリスルコーンパインの仕込み杖』を取り出した。
「な、何故エルフが!? 私達が相対していたのは人間だった筈!!」
私達ねぇ……マグノーリエって人はあまりボクと戦いたそうじゃないけど。
「まあ、その話はおいおいするとして……今回、ボクは
「随分舐めてくれるな! それでいいだろう、一撃くらい簡単に浴びせられる!!」
「やめてください、プリムヴェールさん! この方は強過ぎます! この方は先程の戦闘で私達では敵わなかった魔物を次々と討伐していました! それに、貴女もいいのですか!? 一撃でも浴びて負ければ、もうエルフとの合流の道は無くなるのですよ!」
「まあ、それならそれでいいんじゃないかな? 緑霊の森の香辛料が手に入らなくなるのは勿体無いけど、次の獣人族との交渉を成功させてユミル自由同盟の香辛料を得られるようになれば多少は香辛料問題を解決できるだろうしねぇ。何より、神祖であるボクに傷をつけられるというのならエルフはある程度は安泰だということになる。
「――ッ! やめて、お願い! プリムヴェールさん!」
「――望むところだッ!
そういえば、『スターチス・レコード』のエルフって複数の魔法を同時に使うことに長けた種族だったっけ? もし、三つの魔法が限界なら差し詰め
「土精-
土の精霊に
「武装闘気-纏斬撃-。渡辺流奥義・颶風刃域!」
鋭い風の刃をイメージした霊力を武器に宿し、勢いよく横薙ぎすると同時に爆発させつつその場に留めることで斬撃の結界を作り出す「渡辺流奥義・颶風鬼砕」の派生に武装闘気を掛け合わせて超硬度の結界を瞬時に生成――アイシクルランスによって生み出された氷の槍とエアロブラストの収束された風を打ち砕き、崩壊させる。
「何ッ! 私の全力をッ! 三つの魔法を無効化するだと!!」
「どうやら『ブリスルコーンパインの仕込み杖』を使うまでもなかったようだねぇ。……【錬成・金剛魔弾】、瀬島新代魔法――重力操作」
無骨な金剛石の剣を【練金成術】で無数の小さな弾丸へと変え、「瀬島新代魔法――重力操作」で浮かせて猛スピードでプリムヴェールに放った。
「――何ッ!」
……というか、毎回驚き過ぎじゃない? まあ、いいんだけどさぁ。どれだけ君ってぬるま湯で暮らしてきたの?? だから、エルフ領の魔物にも負けそうになるの? そんな力で誰かを守れると本気で思っているの? ……舐めているの?
「【錬成・地縛鎖】」
そして、金剛石の弾丸が命中する直前に無数の鎖へと変わり、プリムヴェールの両腕と両足を手枷・足枷で拘束して地面に繋ぎ止めた。まさに、地縛だねぇ。
「さて、どうする? 剣は使えないだろうけど、まだ魔法があるからねぇ。ご自慢の
「――ッ! 卑怯者! 魔法は使わないと言ったではないか!!」
「確かに言ったよ?
「――ま、まだだ! まだ負けた訳では!!」
「もうやめて! ……プリムヴェールさん、この人は悪い人じゃないわ。私達を捕らえようと思えばいつでも捕らえられたのに、この方は私達を捕らえずに自由意志を尊重してくれた。……一度話を聞いてみて、それから考えてみればいいわ。彼女もそう言ってくれているんだから……いい人間か、悪い人間か……それは、お話を聞いてから考えるべきだと思うわ」
「……まあ、人間かどうかすら微妙な範囲だけどねぇ。……それで、マグノーリエさんは賛成してくれているみたいなんだけど、プリムヴェールさんはどうする?」
「…………仕方ない、話だけは聞いてやる。だが、お前を信じた訳じゃないかな、人間!」
「……エルフの姿になっても扱いは人間のままなんだねぇ。……まあ、了承は得られたことだし…………あっ」
「どうしました?」
「すっかり忘れていたけど、使節団のメンバーが乗った馬車に直進命令を出したままだったんだよねぇ。流石にまだエルフの集落に到着してはいないと思うけど、ここから追いつくならファンシーなカボチャの馬車か、機械の馬が引く謎金属の金属馬車かどっちがいい? まあ、エルフって卑金属が苦手だった記憶があるんだけど、これは宇宙船にも使われている謎の金属だからねぇ。アレルギーが発生することはないと思うんだけど」
「ふん、金属など卑しいドワーフか人間くらいしか使わん! 神聖なる我らエルフに金属の乗り物に乗せるなど、我らに対する侮辱行為と受け取ればいいのかッ!」
「……その手に持っている剣はミスリルだと思うけどねぇ。ミスリルって金属じゃないの?」
「ふん、ミスリルは神聖な金属だから神聖な我らの身体に拒否反応が出ないのだ! そんなことも知らんのか、人間」
「……いや、知らないも何も普通に考えて鎖国しているエルフのことは人間の中でもごく少数しか知らないよねぇ。それに、ボクもどれが採用されているのか分からないから確認しているんだし……あまり苛つかせると陸軍から
「落ち着いてください、二人とも!! ……すみません、やっぱり金属製だと拒否反応が出てしまうかもしれないので、馬車の方でお願いします」
……まあ、他にも選択肢があるんだけどねぇ、探せば。……『End of century on the moon』の
「分かったよ。それじゃあ、『魔法のカボチャの馬車』を出すからちょっと待っててねぇ」
まあ、本当は偏に馬車と言っても精霊の加護が宿った『
統合アイテムストレージの中で『魔法のカボチャの馬車』の項目を押すと、銀色の髪持つ白馬に引かれたカボチャの馬車が出現した。
出現した時の「Bibbidi-Bobbidi-Boo!」って効果音はどこから鳴っているんだろうねぇ。
馬車の扉が開き、タラップが降りた……タラップもカボチャ風なんだねぇ。
「どうぞお乗りください」
「……乗るしかないか」
プリムヴェールとマグノーリエがタラップを登っていき――。
「「――きゃぁ♡」」
馬車に乗った二人を光が包み込んだ。
「……やっぱり、ゲーム通りだったねぇ」
馬車の中には純白のドレスを身に纏い、ガラスの靴を履いた姿の、赤面した二人のエルフの少女の姿があった……作戦成功だねぇ。……しかし、随分可愛らしい声を出したねぇ、プリムヴェール。
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