百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.3-1 国王陛下御前の模擬戦-ローザvs戦闘使用人- scene.1
Chapter 3. 香辛料は大航海時代以前の地球でも異世界ユーニファイドでも貴重なのです!
Act.3-1 国王陛下御前の模擬戦-ローザvs戦闘使用人- scene.1
<一人称視点・ローザ=ラピスラズリ>
ローザ=ラピスラズリ、三歳の夏。
ボクはドラゴネスト・マウンテンの山頂の花畑で父カノープス=ラピスラズリとブライトネス王国国王ラインヴェルド=ブライトネスが観戦する中、【ブライトネス王家の裏の剣】の戦闘使用人達と模擬戦を繰り広げることになった……イミガワカラナインダガ。
まず、なんで王様がいるの! って話だよねぇ。
去年の夏頃に(ちなみに前世の記憶を思い出したのは春頃だった)ラインヴェルドが正式な形でラピスラズリ公爵家にやって来たのが初対面。まあ、ここまでは「第三王子ヘンリーの婚約者候補にボクをってことかな? どうやって断ろうかな?」ってレベルの話だったんだけど……何故か、そこから非公式の来訪が増えたんだよねぇ。というか、今ってお城で公務をしている筈なんだけど……どこかの王宮の隠し通路を使って街に繰り出す破天荒な王様を彷彿とさせるヤヴァイ奴だよねぇ。
しかも、カノープス止めないし! ずっとニコニコ笑顔だし!! 探しに来た
ちなみに、【ブライトネス王家の裏の剣】の戦闘使用人達との模擬戦は去年の夏頃には始まっていた。個人的には是非ヨグ=ソトホートとか、いずれ現れる他ゲームから強大な刺客に対抗してもらいたいし(ボクは悪役令嬢の立ち位置にいるからいつ補正で国外追放をされるか、将又殺されるか分からないからねぇ)、「ボクの手札(実は全ての技を教えている訳ではない)を戦闘中に開示するかもしれないよ?」と餌を撒いたら普通に乗って来たんだよねぇ。まあ、カノープスも「戦闘使用人の訓練になるからちょうどいいし、娘の手の内を知れれば万々歳」と思ってのことだろうけど。……まあ、カノープスもボクと敵対したくはないみたいだし、ボクの手の内を知っておきたいのはもしもの保険、というよりもその結果【ブライトネス王家の裏の剣】が強化できると踏んだからだと思うけどねぇ。
「たく、なんでこんなクソほど面白いことをやっているのに俺を呼んでくれねぇんだよ! 次からは呼んでくれるよな? そして、俺も混ぜやがれ!」
えっ、参加するの? やっぱりバトルマニアなところがある王様なの? それとも単なる面白いこと好きなの。
「陛下、御身に傷がついてしまうようなことはあってはなりません。どうか、おやめ下さい」
そうそう、頑張れカノープス。
「はぁ……つまらない奴だな、お前は。俺は別に守られるだけの弱者じゃないぞ? それを知らないお前ではないだろう?」
……あっ、ダメだ。カノープスが「私の陛下に傷がついてしまう事態は避けなくては」と「でも、陛下に楽しんでもらうことが臣下として成すべきことでは」という葛藤に陥っている。……どう考えてもそこじゃないよねぇ。とっとと公務に戻ってもらうことが臣下として成すべきことじゃないのかねぇ?
「失礼ながら、陛下。俯瞰で見た方がより楽しむことができると思いますが」
「……まあ、確かに中に入ってしまえば全体像は見えんからな。ローザ嬢と一戦交えるのは別の機会としよう」
……って、交えるんかい!
「しかし……気持ち悪いな、それ。正体を知っているんだから今更淑女感を出されてもな。それに今回は公式の場じゃないんだから自然な話し方にしてくれ。それと、陛下とか堅苦しいからラインヴェルドでいい」
「…………一応、今は淑女だし、前世も割と公式の場だと淑女っぽく振る舞っていたんだけどねぇ、女装して。下手な淑女よりは淑女だって自画自賛していたんだけど。……お父様、このバトルジャンキーで堪え性のない王様を止めてください。個人的には物凄い好感を持っていますが……まさか、本当にボクと一戦交えようなんて考えていないよねぇ」
カノープスからはボクの口調に文句はないらしい。ラインヴェルドが認めたらそれに従うっていう意向みたいだねぇ。
「……お父様、ここ、全力で止めるところだよねぇ」
「えっ、なんで? ローザなら見極めて陛下の満足できる範囲で立ち回ることができるだろう? 陛下のストレス発散に丁度いいのなら、是非陛下と模擬戦をしてもらいたいんだけど」
「…………なにそれ聞いてない」
「私の陛下」って過保護なストーカー雰囲気を醸し出しながら、あらゆる害意から守って傷つけない! っていう、束縛して守るっていうよりもラインヴェルドが満足できるようにしつつ、決して危害は加えさせないっていう一歩先を行ったストーカーっぷりを発揮しているみたいだねぇ、カノープス。……結局、それってストー(ry
「……それじゃあ、始めようか」
気持ちを切り替えつつ、アネモネのアカウントに切り替える。
半ばボクの私兵と化した極夜の黒狼の強化も続けているけど、やっぱり【ブライトネス王家の裏の剣】との模擬戦の方が数段難易度が上がるからねぇ。特にこの人達は力を抜くと、抜いた傍からクリティカルな一撃を放ってくるし。
確かに向こうも歴戦の傭兵って感じだけど、【ブライトネス王家の裏の剣】は別格――正直ボク自身よく教える側に回れていると思うよ。
練度的には常夜流忍者が母体になっている百合薗家の
「とりあえず、陛……ラインヴェルド様もご覧になられていますし、ボクの持っている五アカウント全部使うパターンで行こうかねぇ。とりあえず、アネモネ、マリーゴールド、ネメシア、ラナンキュラス、リーリエで行くからそのつもりで」
「ちょっと待ってくださいよ、お嬢様! リーリエさんとか出て来たら死ぬって!! アネモネさんだけでやめときましょうよ!」
「ヒース、何を言っているのですか? 折角お嬢様に多少本気を出してもらえるチャンスに恵まれたのです。死ぬ気で戦いなさい」
癖の入った長い髪を自由に遊ばせた、焦げ茶色の髪と目を持ったチャラ男風のひょろりとした体躯をした執事の男に、見た目の年齢は六十代後半から七十代前半だと思われる、痩身で柔らかい白髪を後ろへと撫でつけるような髪型、丁寧に手入れされている白髭という出で立ちの深い皺の入った顔には柔和な笑顔が特徴的な統括執事が死刑宣告……ではなく、真面目に戦うように促した。
まあ、戦闘使用人でも所詮はヒースだから、例え本気でも逃げる気満々でも鼻歌歌いながらサクッと片付けられるけど。だってヒースだから。
「チクショウ! こうなったらお嬢様制圧するつもりで行ってやるぜェ! これでいいんだなァ!!」
うん、みんな目で訴えて来なくても分かっているよ。今のヒースにボクを撃破するなんて絶対無理だから。
ヒースが大剣を鞘から抜き放って攻撃してくる……その前に二人の戦闘使用人が飛び出した。
腰のラインという女性的な線を見せつけるような、ほぼ下着姿ではないかという際どいメイド服の上から通常のメイド服を纏った華奢で細腕の女性という瓜二つの見た目をした一卵性双生児のメイド――姉のナディア=ファレンシエントと妹ニーナ=ファレンシエント。
どちらも鎖付きの武器を戦闘に使うタイプだけど、姉は巨大な大鎌を、妹は巨大な刺付き鉄球をそれぞれ得物にしている。
「千羽鬼殺流・巨門。千羽鬼殺流・破軍-圓式-」
特殊なステップで瞬時に残像を発生させ、残像を囮にして攻撃を仕掛ける奇襲の技を発動して、二人の初撃を躱すと、一度目に刀の刃を抜かずに鞘に納めたまま斬撃を放って態勢を崩し、二度目に踏み込み、三度目に円を描くように抜刀して敵を斬るという三段技を霊力を込めて放った。
音のない斬撃が鎌の柄の部分に命中し、強度の勝った『銀星ツインシルヴァー』が鎌の刃部分を切り落とす。
「
剣士系四次元職の剣帝が会得することができる無数の剣を召喚して敵に向かって縦横無尽に攻撃させる「
「ホリゾンタル・アンド・バーチカル」
水平方向と垂直方向にそれぞれ正方形を描くように斬撃を放つ片手剣ウェポンスキルの八連撃攻撃――まさか、それを大剣で、ヒースがやるとはねぇ。
無数の剣の内のいくつかを「ホリゾンタル・アンド・バーチカル」で撃ち落とし、ジェイコブが放った爆破魔法を煙幕代わりに撤退したか。やるねぇ。
「別に援護なんて要らなかったわよ? でも、助けてくれたことには感謝するわ」
「恐れ入ったよ。……しかし、良かったねぇ、ヒース。可愛い女の子にお礼を言われて」
「…………怖気が。助けなかった方が良かったかも」
まあ、確かにこの姉妹は嗜虐的な性格で、男の子を揶揄うこと趣味にしているし、いつも弄ばれているのにこんなことしたら余計に弄ばれるだろうねぇ。
…………自業自得だけど、一応黙祷。チーン。
「……おっと」
特注の仕込みブーツを使った足技を既の所で躱し、意趣返しに金剛闘気、剛力闘気、迅速闘気を束ね、武装闘気で漆黒に変色した黒脚で回し蹴りを放ったけど、エリシェアに素早く後方に飛ばれて上手く躱された。そして、スカートの中を見てしまったらしいヒースがアクアに「この阿保が!!」と言われながら拳骨を食らって沈められた。……一人撃破したっぽい??
残るはジーノ、エリシェア、ヘイズ、ヘレナ、カレン、サリア、ジェイコブ、ナディア、ニーナ、アクアの十人……もう一人減ったら次のマリーゴールドにアカウントチェンジしようかねぇ。
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