百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.2-11 黒百合の吸血姫は、語る。 scene.3
Act.2-11 黒百合の吸血姫は、語る。 scene.3
<一人称視点・リーリエ>
「大倭秋津洲帝国連邦――ボクの転生前の姿、百合薗圓の出身地なんだけど、この国のある世界は地球と呼ばれ、形成の書[セーフェル・イェツィラー/סֵפֶר יְצִירָה]によって日本という国を持つ地球という世界を基に作られた作為的なパラレルワールドだった。大倭秋津洲帝国連邦と日本という国を相対化して見た時、大倭秋津洲帝国連邦の歴史はその瞬間瞬間で日本という国の歴史と分岐し、その結果全く別物といってもいいものになっている。……まあ、通常のパラレルワールドのような分岐ではないってことだねぇ。その結果、様々な科学では語れない力が誕生することになる。……ただ、その多くが秘匿され、表側の世界の技術自体は大倭秋津洲帝国連邦と日本で大差がないようなんだけどねぇ。だから、普通に見た限りでは『この店の名前が違う』程度のほんの些細な違いしか見つけられないんだけど、一度裏世界へと足を踏み入れれば、全く別種の超常現象的な力に満ち溢れた世界が現れる。まず、ボクが結構な頻度で使用して見せた何もない空間から物を取り出す力は瀬島新代魔法と呼ばれ、元々は西洋と呼ばれる地域で生まれた精霊と契約を交わし
「……それは、この国と戦争をするということかな?」
「それはそちらさん次第だよ、【ブライトネス王家の裏の剣】。ボクは見た目と性別がオニャノコでも中身はオトコノコだからねぇ、ローザみたいに第三王子との婚約とか絶対に却下だし、二度目の人生は平穏にって思っているからねぇ。……何故かどんどん平凡平穏から遠ざかっている気がするんだけど。とにかく、今のところはここにいるみんながボクにとっての大切な人達だ。勿論、ラピスラズリ公爵家のみんなも大切な人だよ。正直な話、ボクは誰も傷つけたくない。だから、ボクに剣を向けさせないで……」
「つまり、ローザが敵に回ることは今のところないということか。国を守るために命を賭ける我ら【ブライトネス王家の裏の剣】がみすみす国を危険に晒すことなどあってはならないし、最愛の娘を敵に回したくはない。……ローザ、いや、圓さんがこうして仲間を集めた理由は分からないが、決して手を出さないと誓おう」
「あっ、そういえば説明していなかったねぇ。ボクは悪役令嬢って立ち位置でその補正で万が一破滅が迫った時に備えて色々と保険を用意しておこうと思って練り上げた計画を実行する中で出会った人達だよ。元々自分の商品を置ける店はほしかったし、多少なり戦力は持っておきたかった。経済基盤と戦力基盤――『ビオラ』はその中の経済基盤で、極夜の黒狼は戦力基盤ということになるねぇ。……ごめんね、何も言わずに巻き込んで」
「アネモネさん……いえ、圓さんがいなければ私達の店は今頃ゼルベード商会に潰されていました。圓さんに下心があったとしても、助けてもらったことには変わりありません。……そもそも、下心かどうかも微妙ですし、ただ隠していたことがあったということだけで、基本的には経済基盤を得るためという私達と同じような目的のため――それを非難するのは私達商売人そのものの行いを否定するも同然です」
「……姐さんがとんでもない人だってのは分かっていましたが、予想を超えたとんでもない人だったんですね。ところで、私は? 私は当初の目的に入ってなかったのですか?」
「う、うん。入って……いなかったねぇ。ごめんね」
……あっ、一人撃沈した。息を吹きかけたら消えてしまいそうだ。
「アタシからも特に文句はないさ。命を狙ったアタシ達に、アネモネさんは慈悲をかけてくれた。ならば、その恩に報いるのは当然のことよ」
「……私達も当初の目的には入っていなかったということだな」
「ゼルベード商会には寧ろ全力で関わりたくないと思っていました。暗殺者を仕向けられなければ、ただ商売が安定してきた際にご挨拶に一度お伺いしようとは思っていましたが、その程度です。でも、当初の予定に無かったからといって差別するつもりはありませんよ。――ボクはペチカさんに力を貸すって約束したからねぇ。ペチカさんには協力するし、ペチカさんが悲しむことは致しません! こんな可愛い女の子を悲しませるなんて絶対にダメです!!」
「…………もしかして、ローザお嬢様って女の子が好き?」
「えっ? あっ、すっかり言うのを忘れていたけど、ボクって
「まあ、この件は包み隠さず王に報告させてもらうよ。そのつもりで今回のことを私達に話したんだよね?」
「そういうことになるねぇ。……さて、これで少なくとも屋敷の中で隠す必要はなくなったし、ボクも自重なしにやらせてもらうよ。そういえば肝心なことを忘れていたねぇ。お父様、王様にこのことを伝えるなら手土産を持っていった方がいいよねぇ。丁度ここに『スターチス・レコード』と『Eternal Fairytale On-line』があるから渡しておくよ」
「気を遣わせてしまったね。……カトレヤはローザが転生者だってことを知らないから、彼女にはバレないようにね」
「……怪しまれると困るし、ボクが転生者だってことと転生前のことについてはお母様にも伝えておくよ。お母様を仲間外れにするのは気が引けるしねぇ。勿論、全てを話すつもりはないから安心して。あくまで、屋敷の中で不審がられないために話せる範囲を話すってことだから」
「……まあ、確かにカトレヤにだけローザが転生者だと教えないというのは後々のことを考えるとあまり良くないね。ローザ、カトレヤに怪しまれないように、特に【ブライトネス王家の裏の剣】に関することは絶対に話さないでね。それ以外は別に何を話しても咎めるつもりはないから」
……他のことはいいのか。いや、分かっているよ? 素質のない者には代々【ブライトネス王家の裏の剣】の存在を教えないようにしているって。まあ、線引きはしているし、ボクに不利益が生じない程度にカトレヤに事情を説明しておくよ。……大人しい人だからねぇ、お母様は。心労が祟ったら大変だからねぇ。
さて、これで隠す必要も無くなったし、やれることの幅が増えたねぇ。まずは……とりあえず、この二歳児の身体を圓の時のレベルで使えるように調整することから始めるとしようかねぇ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます