第111話 最終話、世はなべて事も無し
海水浴も好評のうちに終わった。美登里は日焼け止めを塗っていたのだが、背中を赤くはらして、風呂にはいるのにも大騒ぎをするので「ないしょだぞ」と言って、ヒールポーションを飲ませてやった。
「お兄ちゃん、こんないいものがあるんだったらもっと早くちょうだいよ」
「悪かったな。それなら、今度何かで体調が悪くなったら早めに言えよ」
「分かった。お兄ちゃん頼りにしてるからね」
にこっと笑った美登里に胸を軽くたたかれた。
夏休み中の家での日常はこんなものだ。
昼間は、ドライの勉強部屋に集まっているみんなの勉強を見てやったり、トレーニングに付き合ったり、武山薬品に出向いてアインや服部に会社の話を聞いたりして過ごした。
勉強部屋の隣の休憩室にある本棚の上に飾ってあったフィギュアがだんだん増えてきている。最初はてっきり全部村田のコレクションの一部かと思ったが、中に1体デフォルメされているがドライそっくりなビキニ姿のフィギュアがあった。
何だろうと手に取ってみたら、そのフィギュアは体をくねくねさせながら「いやーん。そこはラメ! ラメラメですー」とドライの声が中から聞こえて来た。ドライが村田のために作ってやったのか? 真相はわからないが非常に精巧な作りだ。あまりにくねくねした動きと声がリアルなので、手に取っているところを人に見られる前に、そっと元に戻しておいた。
あとは、たまに現れる俺の身内にちょっかいをかけようとするバカ者に対して、対応している。
今日も今日とて、バカ者の対応だ。
ここはとある高級住宅街の一角、広域暴力団の本部がある。そこの連中がポーションがらみの利権を狙って、俺の妹にちょっかいを出してきた。ホムンクルスのサヤカとモエが簡単に撃退し事なきをえたのだが、そのとき逃走した連中には蜘蛛を取り付けたようだ。
「俺の身内に手を出しておいて、覚悟はいいな? おまえら根絶やしだ」
「待て、おまえの妹にまだわれわれは何もしていないじゃないか?」
「たまたま無事だっただけだろ」
「復讐は何も生み出さない。ただ、復讐の連鎖が生まれるだけだ!」
こいつ、アニメの見過ぎなんじゃないか?
「はあん? 連鎖だと? だったら、根絶やしにすればいいだけだろ? 違うか?
「や、やめてくれー」
「お前ら、いままでそう言って命乞いをして来た相手を逃がしたことがあるのか? まあ、お前らにそういうのがあろうがなかろうが俺には相手を逃がす気などさらさらないがな。簡単に死ねると思うなよ。
滅びの歌の中で狂い死ね『ソング・オブ・ペリッシュ』」
多数を対象とした最上位精神魔法。
これまで仲間だと思っていた者に自分が殺されると脅迫概念を
この屋敷の中には50人ほどいたはずだ。そのうち30名は下部団体の組長クラス。『ソング・オブ・ペリッシュ』が発動した瞬間、屋敷の中にいた連中の目つきが変わった。そこらへんで、怒号や悲鳴が聞こえる。俺の前にいた男たちも、俺が目の前にいるにもかかわらず、まるで目に入っていないがごとくお互いに殺し合いを始めた。
「じゃあな」
飛び散る血潮を
これで、この辺一帯の勢力図が大きく変わるだろう。森本のおっちゃんのところも今ではずいぶん羽振りがいいようだし、そのうちおっちゃんもビッグになりそうで結構なことだ。
なあ、こんな感じで何事もなく今年の夏休みを平和に過ごした。
「世はなべて事も無し」しみじみ感じるよ。
[あとがき]
拙作を最後までお読みくださりありがとうございます。癖の強い作品だと思いますが、レビュー、ブックマーク、☆評価、♡マーク、感想を多数いただきありがとうございます。
カクヨムがどういったサイトなのかとお試しで、昨年末辺りに少し書いていた物を手直ししつつ投稿したものですが多くの方に読んでいただくことができありがたい限りです。
それまで、なろう中心に活動していたのですが、正直こちらのサイトの方が使いやすいサイトでした。特にエピソードごとの♡マークが非常に参考になることと、リアルタイムでPVを知ることができやる気がでました。これも、読者の皆様と、当サイトの運営の方々のおかげだと思います。
今後とも、私の作品を目にすることがありましたら、よろしくお願いします。
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異世界ファンタジー『闇の眷属、俺。-進化の階梯を駆けあがれ-』いまのところ進化物です
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2021年8月6日より投稿開始、少し真面目風異世界ファンタジー
『キーン・アービス -帝国の藩屏-』
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魔術の天才キーン少年が成長していく物語です。
SF『宇宙船をもらった男、もらったのは星だった!?』
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なろう連載中のものの転載です。タイトル通りの宇宙ものです。
ミリタリーSF『銀河をこの手に! 改 -試製事象蓋然性演算装置X-PC17-』
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宇宙ものかつ戦争物です。特に意味はないんですが、作中登場する人物は本作の末裔っぽい名まえになっています。
その他、短編・短編集、よろしくお願いします。
[ボツとなった場面、せっかく書いたので]
やりすぎかな? と思って差し替えました。これを書いているとき「この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称・国名等は架空であり、実在のものとは関係ありません」をあらすじの最後にくっ付けました。
なお、
ハゲ男とアフロ男にはモデルはいません。
◇◇◇◇◇◇◇
<帰還者同盟のアジトにて>
紙包みを破って中を確認すると、ポスターの
『一見民主党、
あなたと一緒に闘う、
参議院議員、連倣』
なんだ? ここはいったいどこなんだ? とんでもないところに出ちまったのか?
あれ? さっき最初に頭を吹き飛ばした派手な格好の女はこいつに似てなかったか?
まてよ、そういえば、さっきまで今現在逃走中のあの男だが、どこかで見たことが有る顔だとおもったが、一見民主党の幹事長かなんかしてたおっさんじゃなかったか?
こいつら、政党の皮を被った犯罪者集団だったのか?
結局ここはどこなんだ? そこらへんに一見民主党のポスターが貼ってある。ここは一見民主党の党会館だったのか。
◇◇◇◇◇◇
おあとがよろしいようで。
異世界で魔王と呼ばれた男が帰って来た! 山口遊子 @wahaha7
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