第44話 倉庫の先
倉庫の地下通路の突き当りは、奥行きが5、60メートルくらいあるかなり大きな部屋で、みんな逃げだした後なのか誰もいない。部屋の内部の1段下がったところは大きなプールになっていた。一体何なんだ? ここはまるで秘密基地だ。
プールしかないんじゃ引き返すしかないか。
いったいどこに逃げたのかわからないが、どこに逃げようとどうにでもなる。先ほどの騒ぎの中、小型蜘蛛型特殊作戦用ゴーレム2型、ちょっと豪華版の蜘蛛をドジョウ髭のおっさんに付けてやった。
こいつは、音声だけでなく周囲の情景を精細に余すことなく俺に伝えてくれる。俺がまだ行ったことのない場所でも、こいつの精細な情報があれば転移で飛んでいける。しかも、ある程度の攻撃能力まである優れものだ。
蜘蛛を確認してみたところ、何だか機械に囲まれた狭い部屋にドジョウ髭が一人でいるようだ。位置はどうなっている? このあたりの地理に詳しくないので良くはわからないが、どうも今いる場所から東へ2百メートルくらいのところにいて今もゆっくり遠ざかっている。ここから東というと海じゃなかったか? どうなってるんだ。知らぬ間に船に乗って逃げられてしまったか?
とりあえず、ドジョウ髭のことはおいて、上にあった包みを先に調べてみるか。お宝だったらありがたいが、あれほどの量だと望み薄か?
階段を上って1階に戻る。やはりここは普通の倉庫の中だ。
ここに積み上げられた包みはいったい何だろうな?
調べてみるとその包みはさらに小さな包みが中に20個ほど入ってまとめられたものだった。取り出したスティンガーで積み上げられた包みの1つを突いて穴を開けたところ、その穴から半透明の白い粉がこぼれ出て来た。
ひょっとして、こりゃあ覚せい剤じゃないか? フォークリフト用のパレットの上の包みは、ざっと見で5×5×4で100、そのパレットが1、2、3、4、5個
全部で500ということか。1つの包みが20キロとすると、ざっと10トン。とんでもない量が有るじゃないか。1グラム1000円とすると、1キロ100万。1トンで10億、全部で100億か。いくら高額商品といえども、こんなものを拾う訳にはいかない。
警察に通報するか? いや、ここで燃やしてしまおう。火を点けたら消防と警察が来るからちょうどいい。
それじゃあ、さっき頂いたロケット弾を撃ち込んでやるとしよう。ちゃんと火が点けばいいんだがな。
180度方向を変えたロケット弾がアイテムボックスから出たとたん、積みあがった荷物に向かって飛んで行った。
ズッドーン!
倉庫といっても部屋の中だ。爆発の轟音が耳に響き、爆風が辺りを
地下でロケット弾が爆発してたら、戦闘員たちも無事じゃ済まなかったぞ。爆発はしたが残念ながら火は点かなかった。ちゃんと火を点けないと燃えないようだ。
『ファイアー』
火は点いたが、今度はもくもくとえらい勢いで煙が出始めた。そういえば、覚せい剤やら麻薬やらは火であぶって吸う奴もいると聞いたことが有る。これはアカン煙だぞ。早めに消火した方がよさそうだ。
消火するのに酸素を絶つか、急冷か?
『フリーズ』
冷やしたら、すぐに火は消えて煙も収まった。
フワー、フワーン。フワー、フワーン。
ウーーン、ファーーン、ウーーン、ファーーン。
パトカーだか消防車だか知らないが、サイレンが遠くの方で鳴っている。反応が早い。さすがは、日本の警察と消防。
ところで、実際ドジョウ髭のおっさんはどこにいるんだ? 蜘蛛から送られてきた映像を見ると、今いるのは船の上なのか? 船から陸地が映っている。どうやって逃げおおせたのかは途中を見ていなかったからわからないが、これはこれで都合がいい。
フフ、フフフフ。さーて、どこに逃げるのかな。大陸にある本拠地に戻ってくれよ。
俺もそろそろお暇するか。それでは、大陸の人、
『
そういえば、壁の外で固めてしまったあの大男は今の爆発で転んだかな。どうでもいいや。
収納してしまったロケット弾があと2発ある。俺は何ともないが、なんかの加減でアイテムボックスから出してしまったらえらいことになるから、どっかに捨てに行こう。ちょうど、すぐそこは海だ。海に向かって捨ててしまおう。
倉庫から出て岸壁の上に立ち海の方向を眺めると、300メートルほど向こうにゆっくり沖に向かっている船が1隻見える。双胴船とは珍しい。その双胴船以外には、近くには港に停泊中の船しかいない。ここなら大丈夫だろう。
船にぶつけたらしゃれにならないので残った2発のロケット弾をアイテムボックスから注意して排出して海の方にぶっ放してやった。2発とも250メートルほど飛んで海に落っこちて爆発した。もうちょっと飛んでいたらその先の双胴船を沈めてしまうところだった。危ない危ない。
ドーン。ドーン。ザザザー。
大きく立ち上がった水柱が崩れる。
あれ、ドジョウ髭に取りつけた蜘蛛から聞こえる音が今の爆発音に重なった?
蜘蛛の視界を確認すると、揺れる視界の中で水柱が崩れるのが見える。あれ、そこの双胴船の上にいるんじゃないか。あんな変な形の船が岸壁に横付けされていたとは思えないがどうしたんだろうな?
視覚を強化して双胴船の甲板を見るとドジョウ髭がいる。
まてよ、さっきの大きな部屋の中のプールは潜水艦の出入り口に繋がってたんじゃないか? えらいもん造るな。やっぱりあそこは秘密基地だったようだ。俺も欲しいくらいだ。
一稼ぎすると言って中川と別れたのだが、今回は何も実入りがなかった。こういう時もある。まいた種が大陸で大きくなることを期待しつつ戻るとするか。
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