第12話 入学2日目1


 拠点に1度戻って、アガタリア王国の王城を破壊しつくして更地にしてやった翌朝。



 母さんの作ってくれた朝食をとり学校に向かった。


 昨日きのうアガタリアに報復攻撃を加えたのがウソのようだ。ああ、日本は平和だ。日本晴れだ。実に素晴らしい。



 俺は8時過ぎに教室に入ったのだが、教室の中には、いまのところ半数ぐらいの生徒しか登校していないようだ。


「おはよー!」


 挨拶あいさつは大事だ。何人かの生徒がちゃんと挨拶を返してくれる。そういった生徒はちゃんと親御さんに教育されているはずだ。 関心関心。


 これが、あっちの世界だったらと思うとね。


 トンデモ国家を逃げ出してしばらくしたころ、手持ちの金が心もとなくなったので日銭を稼ごうと、朝はやくから冒険者ギルドに登録に行ったんだが、ギルドの入り口を入って「おはよー!」と大きな声で挨拶したところ、いかつい顔のおっさんたちが何も言わずに俺をにらみつけて来たからな。それでも俺の教育の賜物で、1週間も経たないうちに、俺がギルドに顔を出すと、みんな「アニキ!ご苦労様です!」と元気に答えてくれるようになったけどな。教育は大事だ。つくづく実感した。



 朝の挨拶をしながら教室に入ってきた生徒に挨拶を返しながらホームルームの始まるのをゆっくり自席で待っていると、隣の席の女生徒中川春菜が挨拶もせず教室に入って来た。自席にやって来た中川に隣の席のよしみで、


「おはよう」


 と、朝の挨拶をしたら横目でちらっと俺の方を見ただけで、無言でそのまま席に着いてしまった。要するに俺は無視された。入学早々そんなんでこいつこれからやっていけるのか?



 それからすぐに始業のチャイムが鳴って、担任の山田先生が教室に入って来た。


「みんな、おはよう。見渡したところ欠席はないようね。昨日の今日なので特に連絡事項はないわ。

 今日は午前中だけで、健康診断と身体測定だから、みんなこのカードを持って手際よく回るように。道順は廊下に張り出してあるから間違えないようにね。視力検査は時間がかかるから早めに済ませた方が良いわよ」


 教卓の上に置かれたカードを持って、ぞろぞろと教室を出ていくみんなについて俺も教室を出ようと出入口に向かったところ、村田がそこで俺を待っていてくれた。


「霧谷くん、昨日はありがとう。一緒に回ろうよ」


「ああ、それじゃ一緒に回ろう」


 ……



 今は、校舎の裏庭に停まったレントゲン車の後ろでレントゲンの順番待ちしている。順番が来て、村田と一緒にレントゲン車の中に入ると下着のシャツを脱ぐよう張り紙が張ってあった。下着のシャツは着ていてもいいはずだが。はて?


 俺が愚考するに、ここのレントゲン技師は、女子生徒の胸を見たいがために、われわれ男子生徒も下着のシャツを脱ぐように張り紙を張っているに違いない。「全員脱ぐ=女子生徒も脱ぐ」が違和感なくまかり通るからな。


「霧谷くん、その体は何だ? リアル6パック初めて見たよ。胸の筋肉や、背中もすごいな」


 俺がシャツを脱いで上半身裸になったところ、村田が俺の体をじろじろ見ている。


「じろじろ見るなよ。俺には男に見られて喜ぶ趣味はないぞ。それにしても村田、お前は、少し体を鍛えた方がいいんじゃないか。ここんとことか」 


 ズボンのベルトの上にはみ出した腹の脂肪をつまんで言ってやった。


「ひゃっひゃっひゃ。脇腹のそこ感じるんだよ。僕もそうは思っているんだけどね。つらいのは勘弁かんべん


「まあ、強要するようなもんじゃないからな」



「次の人、クラスと出席番号と名前を言ってくださーい」


 20代と思える女性が脇の方から顔を出して俺たちに声をかけたきた。見た目は眼鏡をかけているが結構美人である。てっきりレントゲン技師はみんな男の人だと思っていたのだが違ったようだ。この人がさっきの張り紙を書いたとすると、さてはこの人、男子高校生狙いなのか?


「1年2組、出席番号7番、霧谷誠一郎きりやせいいちろう。独身です」


「霧谷くん、独身はいらないでしょ。ちなみにわたしも独身よ」


 レントゲン技師のお姉さんも乗りの良いことで。




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