第48話 捜索
アイネ様から優先順位を示された俺達三人はソフィアの感知した魔力の元を捜索していた。
森の浅場から鬱蒼とした森の奥へと進んで行く。
だが、倒木や下草が行く手を邪魔して中々すんなりとはいかない。
魔力の反応からするとオーク―の集落とは反対側のようだが。
「エディオン様、もう少し先のようですが右の方から回り込んだ方が良いみたいです」
ソフィアが的確に方向を示してくれる。
いま、俺の役割はオークの集落への監視である。
ヘザーさんには、近くに寄って来るその他の魔物の間引きをして貰っている。
役割分担をハッキリとさせて置くことは非常に重要だ。
「もう直ぐ、到着します」
すると、樹々が横倒しになった異様な光景が目に飛び込んできた。
そして、その中央付近には6mほどの白い毛に覆われた何かが丸くなっていた。
俺達三人は、その丸い物にゆっくりとした足取りで近づいていった。
「息は有るようだね」
「はい、でも魔力の方は底を尽きかけています」
「エディオン、アイネ様は何と言っているの」
そう言えば、聞いてないや。
「エディオン、ごめんなさいね」
急にアイネ様が意識の中に語り掛けてきた。
が、何か食べていたのかゴニョゴニョと口を動かしているようだ。
「エディオン、失礼な事は考えないように」
図星だったらしい。
「まぁ、いいわ。エディオン、ヘザーの時のように両手で身体に触れて目を閉じて、良いわね」
アイネ様が俺を通して、あの時のように神気を流して行く。
すると、白い毛の丸い物が黄金色に輝き始める。
そして、10分ほど時間が過ぎた頃、スーと元の白い毛の丸い物へと戻った。
「エディオン、後はよろしくね!」
俺の返事は聞かずに、アイネ様の気配は無くなった。
◇◇◇◇◇
あの後、直ぐに目を覚ました白い毛の正体は神獣のフェンリルで...
しかも、倒れた樹々で囲うようにして守っていたのが怪我をして衰弱しているBランクの冒険者パーティーの5人だった。
フェンリルが神気を使い生命維持をしていたようだ。
そこで俺は聖魔法を使い、急いで彼らに治療と回復を行った。
目が覚めれば、歩くこと位は出来るだろう。
そこで俺は彼らが目覚めるまでの間に、フェンリルと意思の疎通を図っておくことにした。
口での会話は出来ないが、念話での会話は可能なようで、助けた経緯とこれからの事を話しておいた。
そして、フェンリルはいま俺の横でハスキー犬の成体ほどの大きさで佇んでいる。
「エディオン様。そろそろ、彼らが目覚めそうですよ」
「分かった。少し離れて見ておこう」
最初にガタイの良い男が目を覚ましてようだ。
「気が付いたか」
俺は少し離れたところから声を掛ける。
「あ~、ありがとう」
「まだ、無理はするな。治療はしてあるが、動くにはもう少し掛かる筈だから」
「分かった」
男の言葉を切っ掛けに、15分程で全員が意識を取り戻した。
そこで取り敢えず、俺は説明をして置く事にした。
「俺達はギルド長のフランクさんに頼まれて捜索に来た、Aランクの冒険者のパーティーで、俺はエディオンだ。そして、ソフィアとヘザーだ」
「俺達は、Bランクの冒険者パーティーの『疾風の風』だ。
俺がリーダーのガーザ、そして、ベイツ、ナッシュ、ララ、ルルだ。
来てくれてありがとう」
自己紹介と挨拶が終わり、その後少し当時の状況を教えて貰った。
そうしている内に、メンバー全員の意識もハッキリとして来て、歩くことが可能になったようなので、幌馬車の所まで戻る事にした。
その間も、オークの集落は魔力感知で監視をして置いたが、今のところ動き始める様子は見られなかった。
「さぁ、馬車に乗ってくれ。
ここから離れた場所で一旦野営をしてから、朝一で街へ向かうから」
一晩、野営をした後。
丸二日掛けて、ランドリンの街へと帰還した。
ギルドに到着後、Bランクの冒険者パーティーはギルド長に軽く報告をして休息をとる為に自分達の家へと戻って行った。
俺達三人+一匹は、ギルド長室でフランクと報告を兼ねた話し合いを始めた。
「そうか、それであいつ等は助かったのか」
「俺からは、運が良かったとしか言えませんが」
何とも言えない表情でギルド長が俺の顔を見ていた。
「そうだな。それでオークの集落はどうなんだ」
「今はまだ動きは無いですが、数でいうと100体に迫るかと」
「そうか」
討伐するには、場所と数の兼ね合いが難しい選択だ。
「あの森の奥での討伐は、リスクが高すぎてお薦め出来ませんね」
「そうなると、手前の林辺りまで出て来ないとダメという事か」
「そうなりますね」
話し合いの結界、林の先辺りに斥候を置いておく事に決まった。
「今回は、ありがとう。報酬は受付で貰ってくれ」
「分かりました。失礼します」
俺達三人+一匹は、ギルド長に挨拶をすると部屋を出た。
エディオン達が部屋を出た後......。
「マリカ、何か良い案は無いか」
「オークが100体は何とかなるでしょうが、上位種がいた場合が問題ですよね」
「この街でA・Bランクの冒険者が何人集まるかだな」
俺とマリカは暫くの間、眉間に皺を寄せながら対策を練るのであった。
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