第181話
「私は、アルスと婚約して シューバッハ騎士爵のアドリアン様とライラ様から許可を得たところまで覚えているわ」
アリサの言葉に――、俺は俯いていた顏を上げる。
「アルス君。私は、アルス君に告白したところが見えたよ」
二人の言葉に俺は愕然とする。
「なんで……、なんで……」
どうして、そんな……、俺にとって都合のいい記憶だけが二人に見えたんだ?
「アルス、大丈夫なの?」
理解が追い付かず――、立ち眩みし……、よろめいた俺を後ろからアリサが抱き止めてくる。
「アルス君?」
二人に名前を呼ばれる――。
だが、自分にあまりにも都合のいい展開に、俺は言葉が出てこない。
「何でもない」
額に手を当てながら……、そう――、答えるのが精いっぱい。
「アルス君……」
フィーナが、俺の顔を覗き込むようにして話しかけてくる。
「フィーナ、何でもない。少し立ち眩みしただけだ」
「本当に? 無理してないの?」
「ああ、本当だ」
自分の心の動揺を悟られないように――、平静に保つことを最優先にし何度も深呼吸を繰り返す。
とりあえず優先すべきことを考えないといけない。
まずは魔王を討伐すること。
次に魔法王ラルググラストの討伐だ。
最後に、フィーナとアリサには本当の事を告げる。
そう――、二人に本当の事を告げるのは最後でいい。
いまは決戦の前なのだ。
余計な問題は起こすべきではないだろう。
「――アリサ殿、いまは魔王討伐を最優先にするべきではありませんか?」
「それは、そうだけど……」
「アリサ殿は、魔法師団長です。いまは、ここで時間を費やしている余裕はあるのですか?」
「……それは……」
アリサには魔法師団長としての公務がある。
――なら、それを理由に彼女と話す機会を減らす方向に動いた方がいい。
変なところでボロが出て討伐が失敗したら目も当てられないからだ。
「フィーナは、アリサ殿の手伝いをしているんじゃなかったのか?」
「……う、うん。そうだけど! アルス君に、どうしても言いたいことがあって!」
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