第119話
父親は、俺の顔を見てニヤリと笑ってきた。
「いえいえ、さすがに200人の領民の生活を僕が背負うなど無理です」
「……そうか? アルスは、もともと兵士であった俺よりもずっと領主に向いているように見えるがな? それに、誰もしらない知識も持っているようだし」
「いえいえ。持っているだけで、有効的に使えるかどうかは別物ですから」
俺は、この世界の文明度が今一、把握しきれていない。
移動中に何十トンにも及ぶ石炭をどうやって移動するのかと思っていたら【浮遊】と言う、魔法で石炭を載せたソリのようなものを空中に浮かせて馬で運んでいた。
それを見たときは、リニアか!? と突っ込みをいれそうになったが、そんなモノは存在していない世界だ。
つくづく、この世界は分からなくなってくる。
将来、領地を管理することになったら、一度はフレベルト王国の王都で見聞を広げたほうがいいかもしれない。
その方が領地経営に役立つことだろう。
「アルス、家が見えてきたぞ」
父親の言葉を聞いて、視線を細めて前方を見る。
川まで距離が200メートル以上あるから自宅に辿りつくまで数分かかるだろう。
ただ、短い時間とは言え住んでいた家には、何となく愛着のようなものが感じられた。
「あと少しで到着できそうですね」
「そうだな、ライラにこれで会え……「シューバッハ騎士爵様、アルセス辺境伯が陣地設置について話をしたいとのことです!」……そ、そうか……」
父親が途中まで語りかけてたところで、アルセス辺境伯軍――伝令の兵士が、父親に言葉を遮ってアルセス辺境伯の言葉を告げてきた。
さすがに、その言葉を無視する訳にもいかない父親としては、肩を落とすことしかできないようだ。
おそらく、俺の母親とハグしたいと思うが……。
「お父さん、僕がお母さんにお父さんが帰ってきたと伝えておきますから仕事を頑張ってきてください!」
「…………はぁ。わかった……、ライラには軍議が終わったら、すぐに戻ることを伝えてくれ」
「わかりました!」
俺は父親に馬から降ろしてもらうと走って川へ向かう。
そして川を渡るときに、魔王城が存在する山の中腹へと視線を向ける。
まだ、魔王城の結界は機能しているようだ。
「さて、あと4日……、時間との勝負だな」
俺は川を渡りながら一人呟く。
魔王を倒す算段はいくつか用意しておいた。
問題は、あと4日で全ての用意ができるかどうかだ!
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