第114話
そもそも、この世界には魔法という超常現象が存在する。
そして魔法を使えば広範囲に均一とまでいかないまでも粉塵爆発の元と成りうる可燃性の粉を散布することができるのだ。
もし戦争になった場合に、粉塵爆発を意図的に起こせるなら、その被害は下手をしなくても甚大な死者数を出す可能性だってある。
そう考えると、全てをそのまま理解できるように説明するのは控えたほうがいい。
「まず説明しますのは、昨日起きたのは粉塵爆発といいます」
「ほう? そのような言葉、聞いたことがないが……アリサはどう思うかな?」
「はい、私も初めて聞く言葉です」
アルセス辺境伯の言葉に、アリサは首を振っていたが、その視線は俺をまっすぐに射抜くように固定されている。
睨まれるようなことをした覚えはないんだが……まさか、回復魔法を使わせてやがって! とか怒っていたり――それは、ないな。
「アルスよ、粉塵爆発と言うのは一体何なのだ?」
「はい、高山などで錫などを採掘しているときに、時折、洞窟内で爆発による崩落事故が起きることがあると思います」
「ふむ……、続けろ」
「その現象を意図的に起こしたのです」
「意図的か……、それは建物の中に小麦を撒いた後に、火を点ければ起こせるということか?」
「はい! そうです」
「なるほど……、つまり戦場では難しいのか……」
「密閉された空間という条件がありますので……」
俺の言葉にアルセス辺境伯は、落胆の表情を見せていたがアリサに至ってはホッとした表情を見せていた。
そこでようやく分かった。
あれだけの破壊を魔法に頼らずに自由自在に起こせるなら、それは魔法師としての存在意義を奪ってしまうことになりかねないことを。
「そうか……、ちなみに、その知識は誰に習った?」
「よく覚えていません。何度も同じときを繰り返しているときに、何となく覚えていただけですので、ですから知識が完全とも言えません」
「ふむ……、分かった。お前は小麦を用意してほしいと言ったときに重さを言ってきたな? なら、どのくらいの建物で、どのくらいの量の小麦が必要か分かっていたということだ。お前には、魔王城を攻撃する際に、どのくらいの量の小麦が必要なのか考えてもらいたい。今日、一日あれば足りるな?」
アルセス辺境伯の言葉に俺は思わず「――え?」と、言葉を返していた。
パソコンや電卓がある現代日本なら、アルセス辺境伯の命令は問題なかった。
ただ、それら人類の英知たる電子機器がない世界において必要な小麦の量を計算しろとか無茶振りもいいところだ。
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