第65話
「気のせいだ」
「……そう……なのかな?」
フィーナが疑いの眼差しで見てきたが、俺は彼女の視線から目を逸らした。
3人に案内されて村の中を一通り見回った俺は川原の岩場の上で一人座っていた。
転生してから、川原の岩場が俺の定位置になっている気がする。
俺は懐から羊皮紙と黒炭を取り出す。
「まずは情報整理からだな……」
村を見て回って分かったことは、シューバッハ騎士爵が治めているハルス村の人口は242人。
思ったよりも、人口が多い。
産業は、小麦や野菜の栽培。
タンパク質/蛋白質などは、川で魚を捕り山でイノシシや熊や鹿を狩っている。
もちろん、全て日本語で書く。
どこで情報が洩れるか分からないからな。
「しかし、フレベルト王国はローレンシア大陸南西に位置するとは、アレスの知識から知っていたが……」
隣国3国の情報については初めて知ることが出来たのが大きい。
東にヘルベルト国、南にアルゴ公国、そして西には商業国メイビスが存在している。
「一応、シューバッハ騎士爵は、フレベルト王国から騎士爵の爵位を貰っているからな……。他国に亡命するときに王政の国家であるアルゴ公国とヘルベルト国に向かうのは、あまり良くないよな……。そうすると、商業国メイビスが良い感じか?」
商業国メイビスは、シューバッハ騎士爵領から西に向かい国境を隔てている山脈を越えれば入国することが出来る。
問題は、その山脈の高さが2000メートルほどあることだ。
そして商業国メイビスと、シューバッハ騎士爵の間に存在するカタート山脈には、高さだけではなく魔物も巣食っているという話もあった。
おかげで、道がまったく整備されていない。
「こまったな……」
それに問題は他にもある。
馬がシューバッハ騎士爵領には居ないのだ。
大量の金銀財宝があっても商業国メイビスに持ち運び入れることが出来なければどうにもならない。
「アイテムボックスみたいな魔法があればいいんがな……」
そんな都合よく行くわけもないよな……。
「アルスくん!」
「……ん? どうして、ここにフィーナがいるんだ?」
岩場から下を見ると、フィーナが下から俺を見上げるようにして「アルスくんに、話をしたいことがあって……」と語りかけてきた。
俺は黒檀を羊皮紙の懐にしまうと岩場から降りていき、フィーナに近づくと「どうしたんだ?」と話かけた。
「――あ、あの……」
「――ん?」
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