第64話
「ア、アルス」
「――ん? どうしたんだ?」
フィーナとアレキサンダーの元へ戻ろうとするとジャイガルドが話かけてきた。
振り返ると、神妙そうな顔つきをしている。
「お前、本当に……アルスだよな?」
「何を言っているんだ? 俺はアルスだ。それ以外の何に見えるんだ?」
肩を竦めながらジャイガルドの問いかけに、間を置かずに俺は答える。
相手は子供なのだ。
適当にあしらっておけば問題ないだろう。
それよりも、今の俺に必要なのは村を構成している人員と、村人がどのような職についているのか、それと外部への連絡手段と移動手段だ。
「まぁ、俺は普段は、あまり家から出ないからな」
「……」
「とりあえず、そんなことはどうでもいいだろう? アレクサンダーとフィーナを待たせているんだから行こうぜ」
俺は、ジャイガルドの手を取り歩きだす。
こんなところで時間を費やしている余裕はない。
二人の元に戻ると、フィーナもアレクサンダーも驚いた表情をしていた。
まぁ、アルスの癖に生意気だと暴力を振るってきた人間と、すぐに仲良くなって戻ってきたのだ。
拳で語り会えば仲間になるというのが子供だったはずだが、あまりにも仲直りが早すぎるからな。
まぁ、このへんは喧嘩で勝った方が折り合いをつけて相手を持ち上げれば案外簡単に仲直りできるものだ。
ただ、本当にアルスだよな? と問いかけられた時には驚いたが……。
「ジャ、ジャイガルド……」
「なんだよ」
「アルスの旦那とは仲直りしたので?」
「おう、コイツも今度から俺達の仲間になることになったんだ」
「アルスの旦那は、それでいいんで?」
アレクサンダーがジャイガルドに語り掛けたあと、俺に話題を振ってきた。
俺としても子供同士の狭い世界で天狗になるつもりもガキ大将になるつもりもない。
そもそも、こちらとしてはタイムリミットは魔王復活までの3週間――。
いや、魔王の力がどのくらいなのか想像もできない。
下手をしたら一国が一瞬で焦土になるかもしれないし……。
そうすると2週間くらいで村を捨てて王都に逃げたほうが……。
まてよ?
それなら別の国に逃げたほうがいいのでは……。
やっぱり情報は必要だな。
「俺が一番、年下だからな。年長者を敬うのは当然だろ?」
「「「……」」」
3人が無言で俺を見てくる。
何かおかしなことを言ったか?
「なんだか……アルスって雰囲気がすごく大人っぽい……」
フィーナが首を傾げながら俺に語りかけてくる。
やはり、中身が47歳の中年だからなのか、あふれ出すカリスマ性は隠しきれないか……。
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