第63話

「お前、年は何歳だ?」

「俺は……7歳だ!」

「ふむ……、ちなみにアレクサンダーは?」

「あいつは10歳だけど、何か関係あるのか?」

「いや――」


 ジャイガルドの言葉に俺は肩を竦める。


「ちなみに俺は5歳だ!」

「そんなのは知っている!」

「なるほど、つまり……お前は、俺が年下だからという理由で偉そうにしていたという訳か?」

「――そ、そうだ!」


 ジャイガルドの言葉に、俺は両手を組む。

 小さい頃だと子供同士の関係は、年功序列が基本だ。

 何せ、体格差も含めて多くの遊び方や、それに伴う広い友好関係もあるからな。そういう魅力があるからこそ、小さい子供の世界では年功序列というある意味、日本風な子供社会形勢が成り立っている。


 まぁ、上に立つ奴が有能なら、それで問題ないんだろうが――。

 その上に立つ人間が無能で悪質な自分の事しか考えてない奴だと、年功序列というのは悪にしかならない。

 何故なら、子供たちの間にあるのは下の子分を助けるという暗黙の了解があるからだ。

 それが虐げる対象になれば、それは非常に危険な物になる。 


「そうか……。すまなかったな」

「――へっ?」


 ここは威圧的に接するよりかは、目の前の男を煽てて使ったほうがいい。

 本来であるなら、アレクサンダーを立てるべきだが相手の強さで価値観をころころ変えるような奴は信頼できないからな。


「じつは、高熱で倒れてからというものハルス村で起きた出来事をまったく覚えていないんだ。アレクサンダーが言っていた。ジャイガルドは、男気に溢れる下っぱを気に掛ける男の中の男だと!」

「……そ、そう……なのか?」

「ああ、アレクサンダーも普段は、ゴミのような性格な奴だが根は正直な奴だ。だから、本人の前では褒めることはできないんだろうよ」

「そ、そうだったのか……俺は、てっきり強い奴に尻尾を振る奴だとばかりに……」


 ジャイガルドは思ったよりも頭の切れる奴のようだな。

 アレクサンダーの特徴をよく掴んでいる。


「あれだ、好きな奴の前では素直になれないだろ? それと同じだ!」

「――! アレクサンダーが俺のことを好き?」

「ああ、間違いないな……」


 おっと、ちょっと勢いに流されて適当なことを言ってしまった。


「ジャイガルド、勘違いするなよ? 好きと言っても友達としてだからな?」

「わ、わわ、分かっている!」

「分かっているならいいが……、それで、今から村の中を回ろうと思うんだが、仲直りのついでに一緒に遊ばないか?」


 俺は、握手のつもりで右手を差し出す。

 すると、一瞬考えたあとジャイガルドは、俺の右手を握ってきた。 

 

 さて、まずは子供同士のネットワーク構築への第一歩だな。

 魔王復活まで、あと20日。

 それまでに村を脱出できるか?



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