第367話

「「切裂くは天輪!断つ物は天宝!全てを切り裂きし断罪せよ!神滅(ラグナロク)の剣戟(ブレイカー)!」」

 振り下ろされた刀身は、巨大な紫電を打ち出し光龍エンハスの体を呑み込み破壊していく。


―――おのれおのれおのれおのれ、神に向かって刃向うとは愚か者どもが!!


 エンハスの体が爆散したと同時にその中から、3メートルほどの光龍が姿を現す。


「「まずい!?」」

 全ての力を使った事で私とレオナの神衣が強制解除されると同時に私の体が宙を舞い壁にめりこむ。

 

「……ぐっ」

 ふらつきながら立ち上がり、先ほどまで私が立っていた場所へ視線を向ける。

そこにはエンハスが私を蹴り飛ばしたままの姿で立っていた。


 ―――やってくれたな!草薙……いやユウティーシア!貴様だけは逆らった事を後悔させながら殺す。そして力を取り戻した暁にはこの世界も消滅させてやろう。


 エンハスの話を聞きながら先ほどまで感じていたエンハスの神気がほぼ感じられない事に私は気がついた。

 ただ、こちらも神衣契約者が全員、動けない状態でエンハスを倒せるかどうか分からない。

 私の視界からエンハスの姿が消える。


「まずい!?」

 杖を前にかざし防御態勢を取ると同時に体全体に圧力を感じた瞬間、後方へ吹き飛ばされる。後方の壁を破壊し私は部屋の中に転がり込む。


「カイジン・クサナギ!?」

 声がした方へ視線を向けると何人もの男達とエメラスがそこには居た。


「エメラス、すぐに全員を連れて逃げなさい」

 私は、ループオブロッドの力で修復されていく体に力を入れて立ち上がる。


 ―――まだ生きてるとは、驚嘆に値するぞ?人間!


 頭の中に振ってくる声を聞きながら私は杖を両手で握り締める。

 全ての力を膂力に変えたエンハスはその場から姿を消す。

 やはり相手の移動が見えない。

 これでは防御すらむずかしい。

 私は、自身の唇を噛みしめ攻撃されるのを待つが……。 


「……え?……あ、あれ?」

 まったく見当違いな方より戸惑いを孕んだ掠れた声が聞こえてきた。 

 視線を向けるとそこには床に倒れ、胸から血を流しているエメラスの姿が見えた。 

 

「……え?どうして?」

 私は、思わず呟くがそこでエンハスの言葉を思いだす。後悔させながら殺すと奴は私に告げてきた。つまり、エンハスの目的は……。


―――さあ、どうする?貴様のせいで人が死んだぞ?貴様が守りたいと言ったモノを守りきれるか?


 頭の中に降るエンハスの声には、愉悦に歪んだ狂気を内包していた。

 



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