第353話
「ルグニカ流剣術に教会の司祭が習う護身術である体捌き、そしてリースノット王家のみに伝わる剣術の本流が君から見える。よほどの修練を積んだのか?それとも……」
今度は、同時に10本近いナイフが放たれ私に迫ってくる。
瞬時に理解する。避ける事は不可能……なら……。
私はそのまま突っ込み、杖を彼に振り下ろすとロウトゥは信じられないモノを見るように目を見開きながら私の杖をロングソードで受け止めていた。
「ばかな?避ける素振りも見せないだと!?」
彼は動揺しながらも私の杖を弾くと距離をとって私を注視してきた。
10本のナイフは私の右腕、両腿に右目や頬や心臓に突き刺さっている。
私は右目と心臓と頬に刺さっていたナイフを抜く。
抜かれた後の傷口から血が流れる事はない。
そしてすぐに杖の効果で傷口がふさがっていく。
「なるほど、そういう事か。これはとんだ勘違いをしていたな」
ロウトゥは私を見ながらその表情を曇らせていく。
「死人だと理解してるからこそ、ユウティーシア嬢……あなたは人間を辞めたんですね」
彼はそう私に告げてきたが私は頭を振った。
「私は人間をやめたつもりはありません。ただ、これが一番効率がいいからです」
「人間を辞めたつもりがない?自らの体が傷つく事を恐れず自分を大事にしないのに?面白い冗談ですね。なら貴女は何のためにそれだけの力を手に入れたのですか?」
そんなのは決まってる。
私が守りたい世界のため、大切な人を守るための力。
そのために私は力を振るうし使う。
「決まっています。私を愛してくれた人の為、大切な誰かを守る為、そして私が生まれて育った世界を守る為です」
「自らの命を捨ててまでですか?」
ロウトゥの言葉に私は頷く。
「最初は違ったかも知れない、でも多くの人と出会い分かれて気がついたのです。私が本当に成すべき事をそれは……」
「……世界と大切な人を守る為だと?自身を犠牲にしてか?」
私の言葉を続けるようにロウトゥは、言葉を紡いで来た。
私は彼の言葉を聴いて頷くが、彼の表情には失望の色が浮かんでいた。
「とんだ偽善だ、自分よりも他人が大事だと?貴様は何を言っているんだ?以前のお前の方がずっとマシだった。どんな時でも活路を見出し生きようとしてた貴様の方がずっとマトモだった。
貴様にも親がいるだろう?その親に貴様は私はもう死んでるので心配しないでくださいとでも言うつもりか?それとも言わずに朽ちていくのか?
偽善も大概にしろ!お前は自分の行為に酔ってるだけの愚か者だ」
彼はそう言うと、一瞬で私の間合いに入り込んでロングソードで右足を切り腹を蹴りつけてくる。
私はむき出しの地面の上に転がりながらすぐに立ち上がる。怪我をした足もすでに修復されていて行動には支障はでない。
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