第332話
「ユウティーシア、この平べったいのがアガルタなのか?」
コルクが近づいてきて私に問いかけてくる。
「コルクには、そう見えますか?」
私の問いかけにコルクは頷くことで答えてくれる。
つまり神衣をした者には、本来の世界の情景が見えるようになる?そして神衣を行っていない者にはどんなに魔力量が多くても見る事ができない?
そこで、古代遺跡で過去に戻った際に受けたリメイラールの歴史講座を思い出す。
神代時代の文明は、地球の文明を遥かに凌駕するほど進んでいた。
物理、宇宙、天文学どれをとっても地球より進んでいたのに、世界の真実の姿を見る事が出来たのは草薙雄哉ただ一人。
そして、私や神衣した者にも草薙雄哉と同じ星の光景が見えてるとしたらそれは……。
異なる世界から来たという事?この星の生命体にかけられてる認識阻害的な物を私や草薙が受けてないから?
「ユウティーシア、コルク一体何の話をしている?」
一人だけ蚊帳の外に置かれていたクラウス殿下が、少し苛立った声色で話してくる。
「クラウス殿下、詳細は後でお話します」
まだ仮説の域に留まるけど、もしそれが本当ならもしかしたら本当の黒幕は……でも、それが真実なら……。
「ユウティーシア様、こちらに居られたのですね」
考え事をしていた私に話しかけてきのは教皇アリアだった。傍らにはエメラスも居り私を睨めつけてきている。
「エメラスさん?」
「は、はい……。クサナギ!今回だけは教皇アリア様の顔を立てて、アンタを連れていくから感謝しろよ!」
最初にあったお淑やかさは何処に消えたのか……まるで海賊の御頭のような口調で私に話しかけてくる。
「はい、わかっています」
ただ私も彼女に好かれるとは思っていない。だから連れていってもらうだけでいい。
私の言葉に一瞬エメラスは呆気に取られていたような表情を見せる。
きっと昔の私なら、多少なりと皮肉を混ぜた言葉を返していただろう。
でもそれをする必要はもう無いのだから……。
私の返答を聞いたエメラスは舌打ちすると、離れていきブリッジの中央部分の席に座ると端末に手を当てていた。
「これより、魔法帝国ジール王都ジルニスカに向かう。内容は以下の通りだ!」
エメラスは、私が見てる中で間を一瞬置き言葉を紡ぐ。
「リメイラール教会教皇アリア・スタンフォールと神殿騎士長コルク・ザルドは魔法帝国ジールを攻めてきている神兵と戦う為にこれより救援に向かう。それと聖女ユウティーシア・フォン・シュトロハイムも駆けつけると打電を打つように!」
「これで宜しいのですね?教皇アリア様」
「はい、教会だけではなく聖女ユウティーシアも動くとなれば各国も支援を行ってくれるかもしれませんから」
アリアは何か確信めいたように言葉を紡いでいる。
そう簡単に国が動くとは思えないけど……。
私が考えていると、そこでエメラスが端末に触れながら動けと呟いてるのが聞こえてくる。
すると……。
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