第316話
行く先々でユウティーシアは町を国を救っていた。誰もが彼女を聖女だと崇めていたが俺は不安で堪らなくなっていった。
どうしてかは分からないが、何か大変な事が起きる前触れが少しづつ近づいてくる感じがした。
そして……城塞都市ハントで、不思議な現象が起きた。
ほかの誰にも感じられない奇妙な現象、まるで体中から汗が噴出す感触。
嫌な予感が脳裏を駆けた。
今までは、クサナギと言う偽名でユウティーシアは聖女として活動していた。それが今回だけは、ユウティーシアとして聖女として活動してると言うのだ。
俺は、ユウティーシアが治療を行ってると言う市場広場へ足を踏み入れた。
そして見てしまう。
ユウティーシアの胸元から血が流れおちて地面に吸い込まれていく様子を見てしまう。
「ユウティーシア!」
俺は愛する彼女の傍に近づくと抱きかかえる、最高位の回復魔術をかけるが発動はしてもユウティーシアの傷が止まる事がない。
「お兄ちゃん!これお姉ちゃんが使ってた杖」
足元を見ると少女が俺に白い杖を差し出してきていた。少女の名前はシータと言うらしく、いつも白い杖を持ってユウティーシアは治療を人々に施していたらしい。
少女から白い杖を受け取ると、杖は白い光を放つ。光は俺の体を経由してユウティーシアの体を治療していった。
「お兄ちゃん、お姉ちゃんは助かるよね?」
その時、ようやく回りを見る余裕が俺の中で生まれた。多くの人がユウティーシアの容態を心配して集まってきている。遠くからは兵士が掛けてくる姿も見える。
「失礼ですが、貴方は?」
近づいてきた女性が俺に話しかけてくる。
「俺の名前はクラウス・ド・リースノット。リースノット王国次期国王だ、ユウティーシアは次期王妃だが聖女をしているというのは本当だったのだな」
俺の言葉に誰もが驚きの表情を浮かべるが、俺が一番驚くところだ。王妃になれば聖女なぞしなくてもいいのに何がそこまで気にいらないのだろうか?それよりも……。
「聖女には必ず、護衛がついてるはずだが勇者はどこにいるのだ?レオナと言うのが護衛なのだろう?」
俺の言葉にイスカと言う女性は、鉱山に行ったきり戻ってこないと言ってきた。
「そうか……」
俺の大事なユウティーシアを置いて何をしているんだ。怒りでどうにかなってしまいそうだ。
「そいつが来たら、リースノット王国のクラウスがユウティーシアを連れて行ったと伝えてくれ。それと治療はもう終わっているのか?」
ユウティーシアが治療の途中で倒れたなら少しは引き継いでもいいだろう。
「はい、幸いにも全て聖女様が見られました。」
「そうか、何人ほど治療を施したんだ?」
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