第307話

 毎度ながら本家本元リメイラール教会クサナギ診療所大盛況であった。俺が助けた10人の女性がせっせと接客してくれるおかげで市場近くに立てたとは思えないほど、順番待ちの人は大人しくまっており治療は順調に進んでいる。


「次の方、お願いできますか?」

 俺が外にいる女性に声をかけるとすぐに別の患者さんがテントに入ってくる。それにしても先程からこられる方の殆どが体の一部、もしくは全体が不自然に充血していて張っている人ばかりだ。中には壊死している人だって多い。


「えっとお住まいは東西南北どちらの門の近くになられますか?」


「北門になります。おお、聖女様ありがとうございます」

 男性に話を聞きながらこの町の縮小図にチェックを入れておく。骨折や風邪の症状の人は、この縮小図からは除外してある。今回は、疫病の原因を調べたいからだ。


「ユウティーシアさん、リッツホテルにレオナさんは居ませんでした」

 治療が一段落ついたあたりで、バズーがテントの中に入ってきてレオナが居なかったと言ってきた。今日は、一日ホテルにいると言っていたがどうかしたのだろうか?うーん……まあレオナについては問題ないと思うがどこに行ったのかは気になるな。


「そうですか、ありがとうございます。バズーさんにはお願いがあるのですがいいですか?」

 俺の言葉にバズーが頷いてくれる。


「領主館と教会と冒険者ギルドの様子を見て来て頂けますか?」

 本当はレオナにお願いしようとしたのだが、見つからないなら仕方ない。敵情視察をお願いするとしよう。


「遠くから見てくるだけでいいので無理はしないでくださいね」


「分かった!任せてください」

 頭を下げてバズーはテントから出ていった。しばらくして一人の女性兵士がテントの中に入ってきた。

 彼女は頭を下げると


「2日ぶりですね。城塞都市ハントの領主ズール様の部下イスカです。このたびは住民を助けるために、お力添えを頂きましてありがとうございました」

 兵士が来る事は予想していた。

 かってに診療所を立てて住民を混乱させるなと言う領主のお達しを破っていたからだ。

 捕まるかも知れないと覚悟していただけに少し拍子抜けだった。


「ふふっ、驚いてるようですね。ですが私達兵士が聖女様と事を構える事はありません。代々の聖女様と違ってクサナギ様は戦えるのでしょう?それもウリボウのような巨大な魔物すら消し飛ばせる力を持っていると聞いております。そのような大魔法師と矛を交わしたいなど思う者がいるはずもありません」


「そうですか、それは助かります。あと出来れば身動きの取れない方や重病で動けない方もいらっしゃると思うので調べて教えて頂けますか?この場所まで来れない方も多いと思いますので」


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