第302話
「あ……ああ、そういう事だったんですね!それでは、最初から依頼は受けていなかったという事にしましょう。聖女様も勇者様もここに居なかった!それでいいですよね?」
受付嬢は独り言を呟きながら、ウリボウ討伐の書類を破棄して金貨100枚の入った袋をレオナに差し出した。レオナは頷きそれを手にとると自身のアイテムボックスに入れてしまった。
とりあえずこれで無事安全に、俺以外の人は丸く収まるようだ。
「え?それで私たちはいったい?」
バズーやバルス一家は急展開の状況についてこれず混乱していたが、受付嬢の方が一家の長であるバルスに近づくと家の抵当権と鉱山採掘権を返していた。
「聖女様の行動の一貫として、貴方達を救済したようですので今回の依頼は無効扱いにされます。その為、冒険者ギルドに依頼した際の手数料も全て払い戻しになります」
受付嬢のその言葉を聞いてようやく理解したのかバズーや家族達は感謝の言葉を俺に向けてきていた。
ただ、レオナだけは激怒な表情をしていた。
きっと今日は眠れないんだろうな、説教的な意味で……。
冒険者ギルドで一悶着起こして、レオナに夕方から夜まで正座させられた翌日……。
市場で俺はウロウロしていた。
一応お咎めなしになったが、聖女として見られてしまい副業禁止なので、ここの町の冒険者ギルドはもう使えないのだ。
何故、ここの町の冒険者ギルドだけかと言うと、この世界の冒険者ギルドと言うのは基本原則として国を跨ぐような巨大な組織ではない。
独立採算制をとっている組織でありギルドマスターの上には、必ず国王や貴族がいる。彼らの出資でギルドが回っている。
つまり冒険者ギルドの名前を掲げてはいるが立派とした国営の派遣会社なのだ。
色々な物語で存在してるような都合のいい国家間を超える通信など気軽に使えない事も、国家間を越える超組織を作る妨げだと思う。
ちなみにここの人口2万人を超える城塞都市ハントは、2国間を跨ってる影響からか総督府ではなく領主が存在している。この領主はヘルバルド国とエルベスカ王国に税金を納める事で自治を許されている。
つまり衛星都市や城塞都市と呼ばれてはいるが、独自の法や自治を任されてる点からここは独自の小国扱いに近い。
そいうこともありここの領主の権限はとても強く、冒険者ギルドの職員も独立採算制の点から見てかなり成績を競い合わされていて大変らしい。
なので金貨1400枚の依頼を俺が成功させた時に、あの女性ギルド職員は飛び跳ねる程喜んだらしい。何せ俺一人の成功で3ヶ月分のノルマを達成してしまったからだ。それを俺の一存で無かった事にされれば怒るのは当然だろう。
考えながら歩いていると、きゅるるるるると俺のお腹が鳴った。
実は、俺が借りてる高級ホテルは金貨3枚なのだが食事をつけると手持ちが足りなかったので俺だけ食事無しプランでホテルを借りていたのだ。だからこうして市場に来て安い屋台を探してたりする。
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