第288話

「教会に払うから心配しなくていいと言う事です」

 ……いあいあ、俺……教会から給料もらってないんだけど?教会にお金払われたら俺ただ働き決定なんだけどどうなってんの?ブラックなの?教会はブラック企業なの?中抜き100%企業なの?まて、まだ慌てる段階じゃない。


「レオナさん?少しその方とお話がしたいんですけどよろしいですか?」


「いえ、向こうが聖女様と直接話すなんて恐れ多いと……無理だと思いますよ?教会じゃなくて私に払ってとか言ったらクサナギ様の聖女イメージとかガタ落ちだと思いますが?」


「―――え……ええ!?」

 なら俺は聖女としてのヒールを止めるぞ!


「レオナさん、私は思ったのです。冒険者のお仕事とかでヒールとか治療で稼げばいいんじゃないかなって……」

 だって聖女で仕事をすると自動的にお金を教会が徴収するんだよな?なら冒険者として仕事請ければいいじゃん!


「そうでした。元聖女アリア様からこんな紙を預かっていました」

 俺は、レオナから差し出された紙を受け取り目を通していく。

 紙に書かれていた内容は以下の通り


月給:金貨30枚 日本円30万円

※慈愛と人の幸せを願う聖女の給料は高いとだめです。人の幸福こそが貴女の幸せです!

ボーナス:年2回、4か月分

年収:金貨480枚 日本円換算480万円(一般職は年収金貨700枚)

仕事内容:冠婚葬祭、治療関係、住民の悩み相談を聞いて改善しましょう

就業時間:24時間365日休み無し(困ってる方はどこにでもいます。慈愛です!)

禁止条例:結婚禁止、婚約禁止、副業禁止、冒険者家業禁止、暴力禁止

引退方法:結婚する時、聖女を10年以上務めて昇進して枢機卿か法皇になる時のみ


機密事項

雇用内容を第三者に明かしたらいけません。

聖女には神秘性が求められます。

漏洩した場合、大陸中の教会関係者が無い事無い事言いふらします。気をつけましょう

聖女認定証を使えば教会の賄いを無料で食べられますし寝床も無料で用意してくれます。

聖女になる場合には本人と法皇の了承が必要です。

※クサナギ様は自分ですでに名乗ってましたから了承されてると教会側で受け取りました。



「……」

 無言で紙を握りつぶした。

 とても不平等な契約内容を一方的に終結させるとか絶対、アルゴ公国でやられた仕返しだろ。

 しかも副業禁止とか……どうなってるんだよ?公務員かよ!

 それに聖女って教会だと一人しかいないはずなのにそれでこの年収って……。

 そりゃ聖女の雇用実態明かすなって言うよな……。


「仕方ないですね、クサナギ殿がご自身でリメイラール正統派聖女クサナギとか自分で名乗ったんですから……」

 レオナがヤレヤレと仕草を見せていた。


「なんとひどい……」

 俺は、異世界にきてまでとんでもないブラック会社に就職してしまった。

 そして聖女だったアリアが短気だった理由が少し分かった気がした。



後日談


「そういえば、クサナギ殿。法皇のアリア様から聞いた話によりますと、法皇の年収は金貨1万枚だそうです。それとクサナギ殿に聖女代わってくれてありがとうと感謝してました」

 そういう死体に鞭打つような事は、本当やめてください。


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