第217話
「すでにこちらの前に集めております」
俺は両手で口元を覆い驚く仕草を演出しながらかなり信頼されたなと口元で微笑む。
「申し訳ありません、私の力が至らないばかりに……」
「いえいえ、そんなことありません。戦闘を行う者だけではなく住民も無償で診てくれていては仕方ありませんよ」
俺は椅子から立ち上がるとテントの外へ出る。そこには1000人近い兵士が居るようだが戦況維持は大丈夫なのだろうか?横目でチラッと座天使サマエルの方へ視線を向けて鑑定をするとダメージはほぼ無いようだ。ただ攻めあぐねている姿が見える。ふむ……人間相手じゃない場合は力を発揮しない?でも耐久は健在のようだし今一わからないな。
「聖女様?」
「いえ、何でもありませんわ」
「それでは、参ります!リメイラール様の御名の下に戦う勇敢な勇者達へ加護を!パワーオブディフェンス!」
魔力量がごっそりと減る。いまの魔法発動で1000万は持っていかれたか?消費魔力は一人1万という所だな。そういえば前にアリーシャが中級魔術であるパワーオブディフェンスは他人に掛ける事が出来るが効率が非常に悪くMP消費も通常の身体強化魔術が5としたら20は使うから使い勝手が悪いと言っていたな。
つまり1万の魔力を消費するってことはステータス上昇率が通常のパワーオブディフェンスの50倍増えたとしても魔力消費量が500倍になるからひどいコスト増になる。
だが絶対魔力量が多い俺にはあまり問題ないし逆に神秘性を上げてしまえるからかなり使い勝手のいい魔法だな。それに普通の魔法師ではこんな芸当は出来ないだろうしと出来たらこの世界の基準値の人間やめてるしな。
「これは、力が湧き上がってくる」
「これが聖女様の力なのか?」
「今ならあの技が使えそうだ」
「指揮しかしない聖女とは一体……」
「だよな!聖女って言うんだからこのくらいは出来ないとな……」
アルゴ公国の騎士達が何か言ってるが聞こえないフリをしておこう。
「皆さん、まだ動かれないでくださいね、かなりお疲れのようですからヒールを致しますので終わりました方から戦列に戻ってくださってくださいね」
「ヒール」
「ありがとうございます。聖女様、それでは!」
ヒールを受けた騎士は戦列に走って戻っていく。それから30分後、全員にヒールをした俺は最初に呼びにきた騎士に感謝された。どうやら彼はアルゴ公国の騎士団長だったようだ。
やれやれ……表面を取り繕うのは疲れるな。
「クサナギ殿、用意ができました」
どうやらレオナが篝火を設置してくれたようだ。俺はそのままテントの中に入っていく。そしてレオナが手配してくれたのだろう、ベットをアイテムボックスへしまう。ここにベットがあったら頑張ってると言う印象を与えないじゃないか。
「クサナギ殿、少しは体を休ませませんと……」
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