第151話

パステルが俺が素手でブロードソードの刃の部分を防いだ事に驚き、俺が来たほうへ視線を向ける。そこにはアリーシャとレオナが床に倒れていた。

おれは右手でブロードソードを受け止めたまま左手で拳を作りパステルの腹目掛けてゴッドブローを打ち付けた。


「えーと、よかったのですか?仲間を?」


コボルトの一人が心配して話しかけてきてくれるが、俺は苦笑いしか出来ない。それに仲間と言われたが俺にとって彼女らは仲間と言うほど親しい間柄でもないし正直うっとおしくも思っていた。


「ヒール」「ヒール」「ヒール」


3回ヒールを使い、俺の護衛は目を覚まして周囲を見渡していたが俺と視線が合うと目を逸らした。


「モンスターと話できるのは本当だったのですね」


アリーシャは俺の傍にいるコボルト3匹を見て諦めたようにため息をついていた。


「ええ、ですから無闇に暴力に訴えて欲しくなかったのです」


そう、言葉が通じて相手が理解してくれれば無闇に武力に訴える必要なんてないのだ。

でもパステルとレオナは納得いかなさそうな顔をしている。


「えっとですね、今回は迷宮攻略より魔法の練習がメインで来ていますのでそこまで気を張らなくていいんです。コボルトさん達も長老さんと合わせてくれるみたいなので「ふざけんな!」」


話の途中でパステルが立ち上がり俺に対して怒鳴った。


「いい加減にしろよな!貴族様だがお嬢様だが知らないが冒険者として来てるなら冒険者としてダンジョンで活動しろよ!言葉が通じるからいい?騙されたらどうするんだよ!安易にモンスターを信じるなんて冒険者失格だろ!しかも仲間と戦うなんてアンタ頭おかしいんじゃないのか?」


「えっとですね、私は言葉が通じたので問題ないと言いましたよね?それにですね、私の長い人生経験から言わせて貰えば人間ほど狡猾で残虐で狂って壊れてる生き物など見た事がないです。それに仲間と言いましたが、申し訳ありませんが、たった数日だけしか一緒に行動してないのに仲間扱いされても困ります。たしかに冒険者としての立場や行き方についてはパステルさんの方が一日の長があるのでしょう。ですが、あまり無理に自分の考えを押し付けてくるのは私は好みません」


そこまで言って言い過ぎたと後悔したが、まあ別にいいだろう。

あまり干渉されるのは俺の好みじゃないし、これで彼女らが俺と一緒に居たくないと言ってくれるならそれはそれで魔法の練習が出来るってものだ。


「わかりました。クサナギ様の近くには控えていますが口は出さない事にします。パステルもクサナギ様に2度負けてるのですから冒険者らしく強い者の意見を聞いてください」


アリーシャが俺の方を睨み付けながら言ってきた。

レオナもパステルも俺への視線がかなりきつい。


「大丈夫か?お譲ちゃん」


心配してくれるコボルトに俺は癒されると同時に人間同士はどうしてこんなにメンドクサイんだろうと内心、ため息をついた。

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