第149話

少しイラッと来た事もあり険のある声になってしまう。


「これだから貴族様は常識がないんだよ。いいかい、冒険者同士は過度な接触は基本しないほうがいいんだよ。それに簡単に手の内を晒すなんて冒険者として活動するなら普通はしないもんなんだよ。それにダンジョンで死んだら自己責任だしもし怪我を治してあげる時もお金をとるし回復ポーションだって無料じゃやらない。次にまた無料で直してもらえると思ったら気が緩むだろう?」


「ですが、命の危機に値段交渉などするなどあっては行けないと思いますが?」


「そう考えてるなら冒険者なんてやるんじゃないよ、貴族のお嬢様なんだか知らないけどさアンタが無料で回復するって事は誰かの仕事を奪ってることになるんだよ」


「奪うって……」


ヒールごときでと言う言葉を俺は口にすることが出来なかった。パステルの顔は俺の反論を許さないと言う内容だったからだ。もしかしたらレオナやアリーシャがさっき俺の事を困ったような顔で見たのはパステルと同じ考えだったと言う事だろうか?


「アリーシャもレオナも同じ考えですか?」


「はい、クサナギ様は無差別に困った人に手を差し伸べすぎです。もう少し自粛しないといつか竹箆返しを受けます」


「クサナギ殿、偽善だけでは誰も救えないのです。対価はきちんと貰わねばその人の為にも他の人の為にもなりませぬ」


「そうですか……」


良かれと思ってしたことがこんなに反論を買うとは……。

ああ、そう言えば相手の仕事を手伝って上司に怒られた時期もあったな。

どうしたらいいんだろうな?


俺は、気持ちの整理がつかないまま階段を降りていく。初めてダンジョンに足を踏み入れる高揚感がさっきの話で一気に冷めてしまった。

やっぱり一人で行動する方が気楽でいいのかも知れない。

どうせ、他人を関わりになってもロクな事が無いんだし……。


考えながら階段を降りていくと突然、明るい通路に踏み出た。目の前には数匹の中型犬が2本足で立っていて腕には鉄で作られた爪を両手に装備していた。

たぶんコボルトと言うやつなのだろう。


「なんでここにコボルトが?」


後ろで誰がの話し声が聞こえたが俺は言語解析魔術を使用する。


「あの、このダンジョンの方ですか?」


「人間がしゃべったワン!」


「どうなってるワン?」


「くぅーんくぅーん」


どうやら言語解析魔術はきちんと発動したようだ。


「実は魔法の練習に来たのですが、広い場所などありませんか?」


「どうするワン?」

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