第95話
「えっと……ナンパなら他でしてもらえませんか?」
あまりゴタゴタを起こしたくないのだが、困ったものだ。
しかも市場だと言うのに誰も見て見ぬ振りをしていて男達と俺を中心にぽっかりと空白地帯が出来上がってしまっている。
内心、溜息をつきながらどうしていいか考える。
この場で男達を叩き伏せてしまってもいいのだが、それはそれでこの国の事情をまったく知らない事もあり得策であるとは言えない。
それに何かあれば、エメラスが俺を助けにくるだろう。ああ見えて総督府の娘らしいからな。
「力づくでもいいんだぜ?なあ?」
さらに周囲から男達が出てくる。人数は10人、いや15人か?……。
そう考えてる内にカチッと首に何かをつけられた。
途端に意識が遠のいていく。
「おい、起きろ!」
体に激痛が走る。
眼を開けていくと30人近い男達が立っていた。
「おいおい、こいつ本当に上級魔法師なのかよ?」とか「あねごには手をつけるなとは言われてたけどさ」とか聞こえてくる。
両手は後方の壁に鎖で繋がれおり足に枷と重りがつけられている。
そして暗闇に慣れてきた目で周囲の光景が分かると俺の頭は一気に冷えた。
いくつもの小さな格子状の鉄の箱に詰め込まれた女性や子供に男達、そして女性を犯す男達が目に飛び込んできたのだ。
あたりには苦痛と嬌声と嗚咽が入り混じっており普通の人間からしたら悪夢にしか見えないだろう。
さて、どうするかな……。
「ここはどこでしょうか?」
俺の言葉に男達は呆けていたが笑い始めた。
「お前はバカなのか?こんな状況を見てここがどこか分からないのか?」
分かってはいるが情報がほしい。
それにエメラスが助けに来る可能性もある。
「ここは奴隷の調教場だよ、すぐに使えるようにここで調整してるんだよ」
ああ、そういう事か。
なるほどようやく理解した。市場を見ても反抗的な奴隷がいなかったのはそのように調教されたからなのか、まったくこの屑どもが……。
「そうですか、ですが一つ気になったのですがどこからこれだけの奴隷を?」
彼らは俺が冷静に話してる事に少しづつ違和感を抱き始めたようだ。
まぁ俺ならこんな容姿をしてる少女が冷静に話してたら恐怖を感じる。
彼らの感じる違和感もそこから来てるのだろう。
男達の後ろからも、奴隷の首輪と手足に枷をつけたんだから大丈夫だとか話が聞こえてくるし……。
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