第94話
「お父様ったら酷いですよね!クサナギ様にお金を請求するなんて不敬です」
今、俺はエメラスと共に総督府を出たあと市場を見て回っていた。
総督府から出る際に、エメラスはイデル海爵と何やら話をしていたのだが恐らくお金を神様に請求したらダメですよ!とかは絶対言っていないだろう。
エメラスも遠回しで船壊したんだから責任取れとか言ってた訳だし……。
それにしても市場の男達の俺達を見る目がやけに鋭い気がする。
そう言えばさっき市場に行くと言った時にエメラスはあまり乗り気じゃなかった気がする。
それでも市場を見て回ってるのはその国の事情が市場などには色濃く反映されるからだ。
それにしても先ほどから奴隷は見るのだが、このくらいの規模の都市になると必ずと言って良いほど見かける物乞いの姿がまったく見受けられない。
市場は活気があり奴隷と思われる人達も無理やり働かされてるようには見えないんだよな。
さて、どういう事なのか?
一緒にエメラスと言う美女が横にいる状態であまり露骨な情報収集をする訳にもいかないし困ったな。でもこいつなら問題ないか?奴隷を物扱いしてたしな……。
「エメラスさん、奴隷の方々はどのように皆さん手に入れてるのですか?」
「えっと……そうですね。奴隷は奴隷商人から買って使う事が多いです。あと殆どが借金の肩に売られてきた人達ですね。それと奴隷は財産として考えられています。国には、奴隷一人につき年間金貨10枚を国に払う事が義務付られています」
金貨10枚か……金貨1枚1万円と聞いていた事から考えられると維持コストは奴隷一人頭10万円か。
食費、住居などを考えても安いな。
「奴隷の方が病気された場合はどうされているのですか?」
「え?病気ですか?」
俺の見てる前で、エメラスは話と止めると唇に指を当てて微笑んだ。
「不良品は処分するに決まっています」
「そうですか、分かりました。」
うーむ。現代社会で生きてきた俺としてはその考えには賛同できないが大航海時代にヨーロッパ人が先住民を大量虐殺して国を建てた後に、奴隷を使ってたのもこんな感じだったのだろうと思うとあまりいい気持ちは湧かない。
考え込んでいた俺とエメラスの前に複数人の男達が道を塞ぐようにして立ちふさがった。
「偉い別嬪さんだな、少し付き合ってくれないか?」
ひどいナンパの仕方だ。
もう少しやりようと言ったものがあるだろう。まあ仕方ない、とりあえずここはエメラスを逃がして……っていない!?どこにいったんだ?まさか……考え込んでいる間に、はぐれたのだろうか?
そんな俺の考えを無視するかのように男の手が俺の肩の上に置かれた。
服はドレス状だった事と羽織ってるストールの生地が薄いことも合わさり直に男の手を温度を感じてしまった。
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