第86話

数時間後、俺を載せた船は甲板が大破するという非常に不幸な事故があったにも関わらず無事に港に到着した。

船から降りる際にも、平衡感覚がくるっていた事もあり倒れそうになりエメラスに支えてもらい海の男達からは、海神様!大丈夫ですか?と聞かれた。俺は大丈夫だと言うと桟橋から降りた。

船から降りて港方面へ歩いていくと港はまだ暗く、男達に聞く限りだと日が開けるまでまだ時間があるそうな。

俺は港に隣接してる宿を、頼んで借りてもらった。

宿に入ると若い男性が出てきて対応してくれたが船酔いの後遺症もありすぐに部屋に案内してもらう。部屋の中はベッドとテーブルに椅子だけという簡素な物だったが荷物が無い俺はそのままベッドの上に横になった。


横になった事で疲れが出たのだろう。魔法を初めて行使した影響もありうまく考えがまとまらない。


「明日からどうするか……」


考える事は明日からの事。

当面の目標としては仕事を見つけておいしい物を食べて暮らす事だが、手持ちの服も大気圏の摩擦で燃え消滅していた。


お金は元々持っていなかったが持っていないと生活が出来ない。

仕事は何が出来るかと言えばコネもない現状だと就活するのは厳しいだろう。

体を売るという線もあるが男とあんな事やこんな事をすると想像しただけで寒気が走る。


そうすると海神クサナギ設定を押し出して商売をするか?という話になるがそれもまた面倒事を巻き起こしそうな気がする。

きっとあれだろ?大邪神がいるんだから魔王とか四天王とかいたりするんだろう?

そんな奴らがきたら面倒すぎて困る。


明日は、その辺りも含めてエメラスにはきちんとお話をしないといけないか。


とりあえずは国って事らしいからまずは冒険者になろう、そうすればお金が稼げるはずだ。よし、そうしよう。


方針は決めた、あとは冒険者としての技量が必要になる。


ベッドの上に座り込んで、ユークリッドに貰った魔法書の内容を思い出す。

購入してきて貰った魔法書は、《身体強化魔法》《生活魔法》《防御魔法》《回復魔法》の4種類。

身体強化魔法は、ある程度使えるようになったが、それ以外の3つはまだ実践していない。


防御魔法は、魔法攻撃から身を守る者。

生活魔法は、火種と水を作り出す事と微風を生む。

回復魔法は、体の切傷を塞ぐモノ。


どれをとっても旅をする上で使い勝手のいい魔法になるはずだが自分の力の制御が大雑把しか出来ない俺だと魔法を行使した際にどういう状況になるか予想もつかない。実際、最初に身体強化魔法を使った時に大気圏まで出かけたし要注意だ。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る